淀川に現れた曲面の橋脚梁、万博に向け清水建設JVがユニット型枠で急速施工
佐藤 斗夢日経クロステック/日経コンストラクション
2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の開催に間に合わせるため、阪神高速道路・淀川左岸線(2期)の豊崎インターチェンジ(IC)の工事で数々の工期順守策を実施。曲面を持つ橋脚梁の施工では型枠のユニット化が、作業効率化に大きく貢献した。
(動画:阪神高速道路会社)
交通量の多い国道423号(新御堂筋線)と近接する難条件下で、大阪府内を流れる淀川に台船を浮かべ、下部に丸みを帯びた橋脚梁3本の建設が進む。橋脚の締め切りの鋼管矢板井筒と国道との距離は、最も近い箇所で約650mm。丸みを帯びた独特なデザインも、施工難度を押し上げている。
下部が丸みを帯びている形状の3本の橋脚梁を建設している。手前はユニット型枠の脱型後、奥は脱型中の様子(写真:生田 将人)
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上空から現場を眺める。淀川に立つ3本の橋脚に近接する供用中の道路は、国道423号。写真奥の左岸川の河川敷で工事を進めているのが、淀川左岸線2期だ(写真:生田 将人)
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下から見上げた脱型後の橋脚梁の底部。設計の丸みを帯びたデザインを忠実に再現した(写真:生田 将人)
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大阪市と阪神高速道路会社が共同で整備する淀川左岸線の2期区間は、2025年の大阪・関西万博で会場に向かうシャトルバスの運行ルートとなる。このうち、阪神高速が発注した豊崎IC工区は、新大阪駅方面につながる国道423号に接続する箇所だ。清水建設・東亜建設工業・大豊建設JVが施工を手掛ける。
豊崎IC工区の様子。橋脚以外の工事も進む。万博会場に向かうシャトルバスの運行ルートとして暫定利用する予定(写真:生田 将人)
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同工区で建設中の橋は完成後、国道423号から淀川左岸線の2期区間と同延伸部に合流するオンランプ(入り口)の一部となる。橋脚梁は、関係法令で計画高水位より下側の断面を円形にすることが求められていた。厳しい施工条件のなか、万博を控えて遅延は許されない。
豊崎ICの工事の位置図。河川内橋脚は自動車専用道路へのオンランプの一部に(出所:阪神高速道路会社の資料を基に日経クロステックが作成)
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「複雑な形状を再現しようとすると、工期の順守と精度の確保が難しくなると考え、施工者と協議を重ねた」。阪神高速大阪建設部の坂井康人事業調整担当部長は、こう語る。
揺れる台船上では、精度良く墨出しすることや、曲面を形作る梁底型枠の曲げ加工などが至難の業だ。そこで施工者は型枠について、工場でパーツ化してから現場に持ち込む「ユニット化」を提案した。
ユニット型枠組み立て後の断面図。組み立て時に現場での墨出しが不要(出所:阪神高速道路会社の資料を基に日経クロステックが作成)
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ユニット化の対象は型枠の他、支保工とブラケットだ。各パーツは陸地で大組みした後、台船上のクレーンで橋脚の周囲に搬入した。工場での仮組み立て時に精度を確認しており、現場での墨出し作業が不要だ。複雑な加工も事前に工場 で施せる。
台船上のクレーンを用いて梁底の型枠を設置する様子。ユニット化に伴い、安定した陸地で大組みできた(写真:阪神高速道路会社)
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ユニット化の効果を試算したところ、従来の方法に比べて型枠の組み立てに必要な日数を、橋脚梁1基当たり平均10日間削減。複雑な形状の梁底型枠では特に効果が大きく、必要日数を4分の1にまで減らせることが分かった。
現場代理人を務める清水建設関西支店土木部の山中利明統括所長は、「工期に間に合わせるため、現場で作業する手間を極力減らして、手戻りを少なくする必要があった」と振り返る
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