アメリカには、
「専門の、パンダ・エクスプレス」
が、ありますし、
日本には、
「引っ越しのサカイ」さん
が、あります。
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中国渡った「シャンシャン」輸送会社が明かす苦労、返還ラッシュで中国ではパンダ熱が高まる
上野動物園で生まれ2月に中国に返還されたジャイアントパンダの「シャンシャン」は、徐々に新生活に慣れているようだ。
が4月10日、シャンシャンがむしゃむしゃ音を立てながら竹を食べる動画を公開した。
【表と写真】阪急阪神エクスプレスが運んだことのある動物リスト/シャンシャン輸送の様子
食欲旺盛な姿に「元気そうで何より」と安堵するのは、2月21日にシャンシャンを現地に送り届けた日中の物流企業2社だ。繊細な性格(同センター)のシャンシャンを上野動物園のスタッフが近くで見守れるよう、日本での輸送でこれまで使われてきた旅客機に替えて、貨物専用機を利用した。
ただ、航空会社によると日本でパンダ輸送に貨物機を使うのは前例がない。コロナ禍で不確実な要素も多く、シャンシャンが同センターに到着して一段落するまで記者発表も控えるほど重圧があった。
■上野動物園のパンダ輸送を一貫して手がける
シャンシャンの輸送を担当したのは阪急阪神エクスプレス(大阪市)。日本に初めてやってきたジャイアントパンダ「カンカン、ランラン」(1972年)を皮切りに、上野動物園のパンダ輸送を一貫して手がけてきた。
総務課の仲嶋博文さんによると、1950年前後に駐留米軍家族のペットの輸出入手続きを支援したことが、動物輸送に関わるきっかけになった。
上野動物園とは1957年のゴリラの輸入からの付き合いだ。
その後は紹介でほかの動物園や水族館からも声がかかるようになり、これまで輸送した動物は
絶滅危惧種のトキ、
愛子さまの生誕を記念してタイから寄贈されたゾウなど
50種を超える。
1984年10月に日本に初めてコアラが輸入された際も、阪急阪神エクスプレスが輸送を担当した。
仲嶋さんは「当時コアラは生きたぬいぐるみといわれ国賓並みの扱いでした。成田から多摩動物公園への輸送は、パトカー2台を従えての7台編成となりました」とフィーバーぶりを語る。
そんな動物輸送のプロ集団で、
パンダ好きには知られた存在である阪急阪神エクスプレスにとっても、
今回のシャンシャン輸送は大きなプレッシャーを感じる業務だったという。 当初の返還期限はコロナ禍真っただ中の2020年末。その後も感染は収まらず、5回にわたって延期された
返還の動きが具体化し始めた昨年秋時点でも、中国はゼロコロナ政策を続け出入国を厳しく制限しており、中国から専門家が来れる状況ではなかった。日本と中国を結ぶフライトも大幅に減便されていた。 さまざまな制約の下、阪急阪神エクスプレスが選択したのは貨物専用機のチャーターだ。旅客機だとスタッフは客席、シャンシャンは貨物スペースと分かれるため、飛行中にシャンシャンの様子を確認できないが、貨物機なら同じ空間で過ごすことができる。シャンシャンが不安がらないよう近くで見守りたいという動物園側の希望にも沿っていた。
■「返還に関われるのは大きな名誉」
阪急阪神エクスプレスは順豊航空(SF エアラインズ)の貨物機を手配した。
同社は中国最大の宅配グループ「順豊(SF)」の航空貨物部門で、
中国国内でイルカやアザラシを輸送したり、中国―モンゴル間で羊4000頭を輸送した経験はあるものの、
パンダは初めて。
仲嶋さんは「不安はあった」と本音を漏らした。
SFの日本法人「ケリーロジスティクスジャパン」経営企画部の李軍さんは、「国宝に匹敵するシャンシャンの返還に関われるのは大きな名誉」としつつも、
「貨物機でのパンダの輸送は欧米では例があるが、日本ではおそらく初めて。昨年9月に準備が始まってから、中国の本社、政府機関、阪急阪神エクスプレス、日本の関係機関などと
やり取りしたメールは1万通を超える。
大変複雑な業務だった」と明かす。
最も大変だったのは、
上野動物園のスタッフを貨物機に同乗させるための手続きだった。
阪急阪神エクスプレス動物輸送チームの南節さんも、
「特に上野動物園様の飼育係の方が、チャーター手配の貨物専用機に同乗できるか否かに最も労力を費やしました」と述懐しており、
動物園のスタッフも含めて当事者が最も苦労し、気をもんだことだという。
李さんによると、
貨物機に乗る動物園のスタッフは乗務員扱いとなるため、
中国の決まりで空勤登機証を取得しなければならない。
しかし中国の貨物機に外国籍の乗務員が搭乗した前例がなかったため、
航空行政を管轄する中国民用航空局(民航局)も
どういう手続きや書類が必要か、明確に答えられなかった
求められる書類の形式や取得方法もあいまいなことが多く、日本の警察や外務省に相談し、大量の書類をそろえながら、動物園のスタッフに乗務員として必要なトレーニングを行った。
「同乗できる動物園のスタッフは2人でしたが、
新型コロナウイルスに感染したときのことを考え、
計5人を乗務員として登録することにしました。
空勤登機証取得の道筋が誰もわからなかったため、皆不安でした」(李さん) 取得のメドが立ったのは年末。そこから急ピッチで返還スケジュールが固められた。
■着陸もいつもより丁寧に
実際の輸送は、シャンシャンファーストを徹底した。
SFエアラインズの貨物機は通常、中国を朝出発し、昼に日本で貨物を積んで夕方中国に向かう。
だが、シャンシャンの成田空港での待ち時間を最小限にするため、
前日のうちに機体を成田空港に運び、パイロットらは空港周辺に一泊した。不測の事態に備えて搭乗機と同じB767型機2機を予備機として待機させてもいた。
到着地の成都の天気予報が雨だったため、日本を飛び立った後も李さんの緊張は解けなかった。
シャンシャンの移動は中国でネット中継され、
大勢の視聴者が見守っていた。
パイロットは普段よりも
「丁寧に、丁寧に、丁寧に」(李さん)着陸し、
成都の空港の税関・検疫は優先対応してもらったという。
シャンシャンが旅立った翌22日に
和歌山のアドベンチャーワールドから
ジャイアントパンダの永明(えいめい)、桜浜(おうひん)、桃浜(とうひん)が中国に返還された。
アメリカの動物園に貸与されている23歳のパンダの丫丫(ヤーヤー)も
今月7日に返還期限を迎え、
間もなく帰国する。
アメリカでは年内に返還期限を迎えるパンダがほかに3頭おり、
中国ではパンダ熱が急激に高まっている。
■日本に対する賞賛の声
高齢の丫丫(ヤーヤー)が衰弱している動画が拡散し
同情の声が殺到する一方で、
シャンシャンを大事に育て、
万全を尽くして送り届けた日本に対しては賞賛が集まっている。
動物輸送は
部品や衣類のような軽くて小さい物品に比べて手間がかかり、
利益を出しにくい。
仲嶋さんは
「動物は1頭1頭違い、けがをしたり体調を崩すかもしれない。国家間の友好目的で贈られることも多く、リスクは大きい。社会貢献の意識を持たないと手がけにくいかもしれませんね」と話す。
李さんも、
「とても採算は合わず、ビジネスとは考えていない」と言う。
コロナ禍もあり気苦労が絶えなかったが、
両社には熱心なパンダファンから感謝の声が寄せられており、
励みになっているという。
浦上 早苗 :経済ジャーナリスト
中国渡った「シャンシャン」輸送会社が明かす苦労、返還ラッシュで中国ではパンダ熱が高まる(東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース