ブルガリホテルが東京駅前開業、ドーチェスターなど超高級ホテルの頂上対決一覧
川又 英紀
日経クロステック
富裕層向けの超高級ホテルが少ないと言われてきた東京が激変しそうだ。2023年から5年ほどの間に、ラグジュアリーホテルの開業ラッシュが首都・東京で続く見通しである。
大手不動産会社が欧米の有力ホテルチェーンと組み、最上級ブランドを東京に投入する計画が相次いで明らかになっている。東京のあちらこちらで進む大規模再開発プロジェクトの目玉として、超高層ビルの上層階に超高級ホテルが入居するケースが目立つ。大型複合施設のシンボルとなり、施設の「格」を上げる豪華ホテルを再開発の事業者が誘致。東京で競演を果たす。
直近では23年4月4日、イタリアの高級宝飾店「Bulgari(ブルガリ)」がプロデュースするブルガリ ホテルズ&リゾーツの「ブルガリ ホテル 東京」が開業した。日本初進出で、
世界では8カ所目となる。
そのブルガリ ホテル 東京が選んだ場所は、JR東京駅の目の前に完成したばかりの超高層ビル「東京ミッドタウン八重洲」の最高層フロアである。
東京駅の丸の内口側から見た超高層ビル「東京ミッドタウン八重洲」。その最高層にホテルがある(写真:Bulgari Hotels & Resorts)
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地下4階・地上45階建て、高さが約240mの東京ミッドタウン八重洲のタワー棟40~45階に位置する。ホテルからは皇居の緑や東京の街並みを一望できる。東京駅前で、交通の便は抜群だ。都市型の高級リゾートホテルである。
開業日には、
ブルガリ グローバル アンバサダーである米女優のアン・ハサウェイ氏が
駆け付け、
ブルガリグループCEO(最高経営責任者)の
ジャン-クリストフ・ババン氏と共に記者会見に登場した。
他にも国内外から多数の著名なゲストが来場。
ラグジュアリーホテルであることを強烈に印象づける演出のうまさは、高級ブランドならではといえる。
ブルガリ グローバル アンバサダーである米女優のアン・ハサウェイ氏(左)がホテルの開業に合わせて来日。右はブルガリグループCEOのジャン-クリストフ・ババン氏(写真:日経クロステック)
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インテリアデザインは、
イタリアの建築設計事務所であるACPV ARCHITECTS Antonio Citterio Patricia Viel(ACPV アーキテクツ アントニオ・チッテリオ・パトリシア・ヴィール)が
手掛けた。
これまで全てのブルガリ ホテルでインテリアデザインを担当してきた。
左が、インテリアデザインを担当した建築設計事務所ACPV ARCHITECTS Antonio Citterio Patricia Vielのパトリシア・ヴィール氏。
中央は、三井不動産常務執行役員ホテル・リゾート本部長の川村豊氏
(写真:日経クロステック)
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イタリアらしいモダンなデザインに、今回は日本的なモチーフを取り込んでいる。客室や共用部の内装には、随所に木材を使っているのが目に付く。
廊下の壁にブルガリの宝飾品を展示。ホテル内でウインドーショッピングを楽しめる。壁は木板仕上げ(写真:Bulgari Hotels & Resorts)
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内装には木材を数多く使っている。写真はレセプションエリアにあるアーチ型の開口枠で、ニレ材を使用。壁の生地は日本の「孔雀紋」をヒントに特注したもの。イタリアンレストランにも同様な開口枠がある(写真:Bulgari Hotels & Resorts)
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東京ミッドタウン八重洲の最高層という立地をうまく使っていると思わせるのが、半屋外のテラスだろう。バーやレストラン、プールなどが巨大なテラスとつながっている。
半屋外のテラスが様々な場所にある(写真:Bulgari Hotels & Resorts)
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テラス席を数多く設けた(写真:Bulgari Hotels & Resorts)
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客室は全98室と、100室以下に絞った。41~44階の4フロアを使いながら、スモールラグジュアリーに振り切っている。
ブルガリ ホテルの目玉であるスパエリアには、1000m2を割いている。
ホテル自慢の「ブルガリ スパ」(写真:Bulgari Hotels & Resorts)
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部屋の広さは、
最低でも56m2を確保。
ベッドルームの外壁は全面ガラス張りで、
東京のパノラマを望める。
44階の角にある最も広い「ブルガリ スイート」は、416m2の広さがある。
ベッドルームの外壁はガラス張りだ。木板張りも併用(写真:Bulgari Hotels & Resorts)
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400m2を超えるブルガリ スイートは、幾つもの部屋が連続する(写真:Bulgari Hotels & Resorts)
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宿泊料金は1泊25万円から。
スイートルームは1泊400万円以上になる。
一般人の目には相当強気な値付けに見えるが、
高級宝飾品を扱うブルガリのコアな顧客層なら出せない金額ではない
ということなのだろう。
世界にまだ8カ所しかないブルガリ ホテルを
全て回る熱烈なファンもいるに違いない。
高級感や立地、料金などを考えると、
当面の競合相手はホテル「アマン東京」になるのかもしれない
注目はトーチタワーのドーチェスター・コレクション
さて、25~28年にはブルガリ ホテル 東京を追いかけるように、話題の再開発ビルの上層階に進出を決めた超高級ホテルが次々とオープンする。中でも最大の注目は、完成すると日本一の高さになる三菱地所の超高層ビル「Torch Tower(トーチタワー)」の53~58階に入居するホテル「ドーチェスター・コレクション」だろう。
トーチタワーの高層部、地上300mほどの位置に設ける丘のような「SKY HILL(スカイヒル)」。この場所とホテルが融合する(出所:三菱地所設計)
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自ら、ウルトララグジュアリーと称するホテルがどれほどの豪華さになるのか、今から楽しみだ。28年度の開業を予定している。しかも場所はブルガリ ホテル 東京から徒歩圏と近く、同じ東京駅前だ。
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以下に、この記事で取り上げたホテルの一覧を示す。
ホテル名 | 事業者 | 入居する再開発ビル | 場所 | 客室数 | 内装のデザインや設計 | 開業予定 | ホテル運営 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ブルガリ ホテル 東京 | 三井不動産 | 「東京ミッドタウン八重洲」40~45階 | 東京駅前(八重洲) | 98室 | ACPV ARCHITECTS Antonio Citterio Patricia Viel | 23年4月 | 伊ブルガリ ホテルズ&リゾーツ |
JW マリオット・ホテル東京 | JR東日本 | 「高輪ゲートウェイシティ(仮称)」複合棟Ⅰ(South)23~30階 | 高輪 | 約200室 | ヤブ・プッシェルバーグ | 25年春 | 米マリオット・インターナショナル |
フェアモント東京 | 野村不動産、JR東日本 | 「芝浦プロジェクト」S棟上層階 | 芝浦・浜松町 | 219室 | BAR Studio | 25年度 | 仏アコーグループ |
ウォルドーフ・アストリア東京日本橋 | 三井不動産、野村不動産 | 「日本橋1丁目中地区第1種市街地再開発事業」C街区39~47階 | 日本橋 | 197室 | ─ | 26年 | 米ヒルトン |
ドーチェスター・コレクション | 三菱地所、東京センチュリー | 「Torch Tower(トーチタワー)」53~58階 | 東京駅前(大手町、八重洲) | 110室 | ─ | 28年度 | ドーチェスター・コレクション |
ベルスタートウキョウ | 東急、東急レクリエーション | 「東急歌舞伎町タワー」39~47階 | 新宿 | 97室 | ─ | 23年5月 | 東急ホテルズ |
2023年4月時点で判明している、東京における23年以降の外資系超高級ホテルブランドの進出情報を基に、日経クロステックが表にまとめた。今後変更になる可能性がある。比較のため、東急ホテルズが23年5月19日に、新宿の新しい超高層ビル「東急歌舞伎町タワー」の高層階で開業する同社の最高級ホテルブランド「ベルスタートウキョウ」も掲載した(出所:日経クロステック)
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