三笘薫の得点無効だけでない…トッテナム戦の“疑惑の判定”を英紙が検証! 専門メディアは誤審連発の原因をどう見ているのか?
判定を巡って今季3度目の謝罪をされたブライトン
三笘へのファウルを見逃すという明らかな誤審により、ブライトンはPKの機会を奪われた。(C) Getty Images
現地時間4月8日に行なわれたプレミアリーグ第30節、ブライトンは1-2でトッテナムに敗れたが、この試合では幾つかのプレーに対する審判の判定の正否をめぐって物議を醸すことになったが、そのひとつに対して審判団体が誤りを認めて謝罪したことが大きな話題となっている。
プレミアリーグなどの審判を統括する組織「PGMOL」が誤審としたのは、71分にブライトンの三笘薫が敵陣ペナルティエリア内で浮き球を捌いた直後、寄せてきたピエール=エミル・ホイビェアに足首あたりを踏みつけられて倒れたが、スチュアート・アトウェル主審がノーファウルと判断した場面。これを「PKと判定すべきだった」として、チーフ・レフェリーオフィサーのハワード・ウェッブから、ブライトンに謝罪があったという。
この場面についてブライトン側は、ロベルト・デ・ゼルビ監督が「明らかなファウル」と語り、この試合でブライトンのゴールを決めたCBのルイス・ダンクが「あのようなあからさまなファウルに対して判定を下させないのなら、フットボールにおけるVARの意味(存在意義)が全く分からない」と不満を露にしていた。 彼らが審判に対して不信感を持つのも無理はない。この「シーガルズ」が判定をめぐってPGMOLから謝罪を受けるのは、これで3度目だからだ。1度目は1月29日に行なわれたFAカップ4回戦のリバプール戦。三笘の終了間際のスーパーゴールで劇的な勝ち上がりを決めた一戦で、エバン・ファーガソンがファビーニョから悪質なタックルを受けたにもかかわらず、デビッド・クート主審とニール・スウォーブリックVAR審判はこのブラジル人MFを退場させなかった。 2つ目は、1-1の引き分けに終わったプレミアリーグ第23節のクリスタル・パレス戦で、ゴールに向けて縦に走り込んだペルビス・エストゥピニャンが、エリア内で左にドリブルしながらボールをキープしたパスカル・グロスのラストパスを受け、技巧的なシュートでゴール右隅に流し込んだが、VARでオフサイド判定を受けて無効に。しかしこのビデオ判定では、確認画面上で誤ったオフサイドラインを引いていたことが明らかになり、エストゥピニャンはオンサイドだったことが判明している
ノーファウル判定以外にも3つの疑惑が残った試合
さらにトッテナム戦では、ノーファウル判定以外にも、3つの疑惑の判定があり(他にも存在するという意見もあるが)、多くの論争を巻き起こすこととなったが、英国の日刊紙『i』は、改めてそれぞれの場面を検証し、独自の見解を示した。 1つ目は17分にアレクシス・マク・アリステルの浮き球パスを三笘がトラップし、ボレーでゴールネットを揺らしたものの、ハンドを疑われてVAR検証に持ち込まれ、無効となった場面。これについて同メディアは、リプレーの画像は決定的なものはなく、胸、肩、もしくは上腕二頭筋の上部にボールが当たっているように見えると指摘した後、以下のように結論づけている。 「今季よりいわゆる『Tシャツライン』はハンドを判定するための要素ではなくなり、ルールブック第12条では、ハンドは『Tシャツ』の袖のラインではなく、わきの下に限定される。そして、決定にあれだけの時間がかかる場合、攻撃者側の利益となる判定が下されなければならず、ゴールは認められるべきだった」 続いての疑惑の判定は、56分にダニー・ウェルベックのシュートがマク・アリステルに当たって軌道が変わり、GKユーゴ・ロリスを破ったが、これもVARでアルゼンチン代表MFの腕に当たったとして判断され、再び無効に。これについて、同メディアは「得点の直前に偶発的なハンドを犯した場合、選手は罰せられる」とのルールに則り、「正しい判定」との審判を下した。 3つ目は、三笘へのホイビェアのファウル疑惑で、これは画面上で明らかであることから、同メディアも「PKが与えられるべきだった」と判断。英国公共放送『BBC』の番組『Match of the Day』でのアラン・シアラーの「酷い判定だ」「誤りであることは明白で、馬鹿げている」とのコメントや、他の事象については言及することに消極的だったデ・ゼルビ監督が、この場面については明確に「明らかなファウル」と主張したことなどを紹介している。 そして4つ目は、終盤にダンクがクレマン・ラングレにエリア内でユニホームを引っ張られて倒された場面で、これもリプレーでは明らかに行為を確認することができるが、同メディアは「シャツを引っ張る行為は、エリアの外ではしばしば行なわれる行為であり、またファウルとして捉えられないケースも多く、一貫した判定が求められる」と主張した上で、こちらも「PKが与えられるべきだった」との結論を下し、「ラングレは信じられないぐらいに幸運だった」と皮肉った
ブライトンは公的な謝罪を受けたものの変わらず不運だ」
この見解に従えば、ブライトンは1点と、加えて2つのPKという絶好の得点機を奪われたことになる。『Evening Standard』紙は「ブライトンははるかに優れたチームでありながら、2つのゴールが除外され、ハリー・ケインに決勝点を奪われる前に名、明確なPKを拒否された」と報じているが、試合内容やスタッツ上でもトッテナムを上回るプレーを見せただけに、ブライトンにとっては悔しさが募る。 さらに単純な見方をすれば、このトッテナム戦で勝点3、前述のクリスタル・パレス戦で勝点2と、計5勝点を本来なら得られたことになる。もし今後、ブライトンが僅差でチャンピオンズ・リーグ(CL)出場権を逃すようなことがあったなら……。「ブライトンは公的な謝罪を受けたものの、変わらず不運であり、不満を抱いている」(『Daily Mail』紙)のは当然と言えよう。 ブライトンのクラブ専門サイト『WE ARE BRIGHTON.COM』も、当然ながらこの事態には大きな不満を抱いており、これほど不利な判定を受ける原因を、「『欧州スーパーリーグ構想』が根強く存在する中、リーグの運営者はビッグ6(アーセナル、チェルシー、マンチェスター・シティ&ユナイテッド、リバプール、トッテナム)を自国リーグに引き留めるため、彼らにCL出場権(リーグ上位)を与え続ける必要がある」と独自の見解を示した。 さらに、「欧州カップ出場権の枠を最大数確保するためにはUEFA国別クラブ係数のランキングを上位に保つ必要があり(つまり各クラブが好成績を挙げる必要がある)、そのためには勝利の可能性が低い、欧州カップ戦出場の経験が少ない中小規模クラブを自国代表として送り出す危険を冒したくない」という運営側の意図があるとも指摘する。 クラブを支持する者からすれば、このような「陰謀論」を訴えたくなる気持ちも理解できるが、果たして運営側が噴出し続ける審判問題に対していかに取り組み、どのような解決策を講じるのか。そして、ブライトンはこのまま誤審によって、不利益を被ってシーズンを終えるのか。今後の動向を引き続き見守りたい。
構成●THE DIGEST編集
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