野村ケンジ×高橋敦 対談企画
AVIOT「TE-J1」は新解釈の"ジャパンサウンド"だ!音質特化型完全ワイヤレスの魅力を評論家が語る
2023/04/06構成:編集部 伴 修二郎
今や、完全ワイヤレスイヤホンを代表するトップブランドのひとつとなったAVIOTが、“音質特化型” を謳って展開中の完全ワイヤレスイヤホン「TE-J1」。「金属ノズル」や「アドバンスド・ハイブリッドドライバー」など、音質向上を目的とした新技術や仕様が採用されているのが大きな特徴だ。
AVIOTの“音質特化型”完全ワイヤレスイヤホン「TE-J1」
本稿では、そんな「TE-J1」の魅力をさらに深掘りするべく、本機を実際に試聴したオーディオ評論家の野村ケンジ氏と高橋敦氏が対談。AVIOTブランドに対する印象からTE-J1の音質評価、そして特徴的なデザインや機能面等など、「TE-J1」の魅力を存分に語りあってもらった。
オーディオ評論家の高橋 敦氏(写真左)、野村ケンジ氏(写真右)にTE-J1の魅力を語っていただいた
■実用的な完全ワイヤレスの立役者となるAVIOTブランド
─── それでは初めに、お二人のAVIOTブランド自体に対するイメージなどについてお伺いできればと思います。まず、AVIOTブランドが登場した当時の印象はいかがだったでしょうか?
高橋 敦氏(以下、高橋) AVIOTは、初期の実験的だった完全ワイヤレスイヤホンに続く、実用品として使える完全ワイヤレスを早い段階で完成させたメーカーのひとつというイメージがありますね。
野村ケンジ氏(以下、野村) たしかに、一部の人が好んで買う「アーリーアダプター」的なものから、実用品への橋渡し的な存在になった印象はありますね。
高橋 世界初の完全ワイヤレスイヤホンが登場したばかりの当時は、各社とも正直まだ実用性の面では物足りませんでした。その後、左右の音切れの少なさであったり、バッテリー持ちの良さなど、普通に日常使いができる製品へと仕上げてきた、最初のブランドのひとつでしたよね。そのうえ、値段も凄く良心的で。
野村 値段はとにかく安かったですよね。当時いわゆる高級機ではない完全ワイヤレスイヤホンとして、1万円台のものが出てきて。コストパフォーマンスの面でも、当時としては凄く画期的でした。
高橋 今の時代でいえば「5千円ぐらいで良いモデルが出てきたぞ」というのと、同じぐらいのインパクトが当時はあったんですよね。
野村 定番モデルとして出てきた「TE-d01d」シリーズが1万円台くらいで、その後に出てきた「TE-d01g」シリーズでは1万円を切るという画期的なモデルが出てきました。
さらには、ハイブリッド・トリプルドライバー搭載の「TE-BD21」シリーズや、ピエール中野さんモデル(TE-BD21f-pnk)が出てきたぐらいから、AVIOTブランドとしての方向性がだんだん定まってきたと感じてました。
ハイブリッド・トリプルドライバー搭載の「TE-BD21」シリーズ
高橋 BluetoothのSoCであったり、ハイブリッド構成の採用であったり、自分たちが一番先に新しいことをやってやろう、という意思は凄く感じましたよね。
野村 たしかに気概がありましたよね。aptX Adaptive対応機を出すのも国内では最速クラスに早かったし、完全ワイヤレスで3wayのハイブリッド構成の採用も、世界初だったしね。
高橋 チャレンジングな部分が常にあるんですよね。製品数も凄いし、そもそも開発スピードが異常じゃないですか(笑)。そういう挑戦的な製品を異常な開発速度で投入していったかと思いきや、挑戦の成果をまとめ上げた完成度の高いモデルも良きタイミングで出してきたりもするという。
野村 実験的なチャレンジを色々とやっている、一方でハイエンドモデル以外では、お手頃だけど機能は十分という堅実なモデルを出していたり。チャレンジ精神と開発スピードの早さ、それらの経験があった上で、ここぞという時の安定したクオリティ、それらのバランス感覚が凄いですね。
高橋 例えば、人気モデルのいわゆる“Mark2”的なアップデートモデルって、ユーザーの期待値がすごく高いと思うんです。そこでも期待以上のものを、ちゃんと出してきてくれますしね。
ブランド初のアクティブノイズキャンセリング機能を搭載した「TE-D01m」のアップグレードモデル「TE-D01m2」
─── 音へのこだわりでいえば、日本人が最も心地よく感じるサウンド「JAPAN TUNED」をコンセプトに掲げているのも特徴ですよね。AVIOTの音作りの面で、これまで一貫してきている部分や、進化した点はどう感じますか?
野村 音作りの面でいえば、まず「日本人のための日本人が作ったサウンド」というのが、画期的でしたね。日本メーカーだからこそ出来ることなんですが、当時他の日本メーカーは海外ブランドの市場を意識していることが多い印象で、海外ブランドだと特にアメリカが勢いが出てきたタイミングだったりしたんですよね。
そこに一石を投げ打ってきたのが、AVIOTのこのコンセプト。よくよく考えてみてれば凄くシンプルな話ですよね(笑)。自分たちがよく聴く曲を一番よく聴かせるためという、自分たちの身の回りの環境に合わせたチューニングを目指すというのが、とても共感できたし画期的でしたね。
AVIOTでは日本語を聞きなれた人々が最も心地よく感じるサウンド「JAPAN TUNED」をサウンドコンセプトに掲げている
高橋 野村さんがおっしゃったように、日本の音楽に合わせたというのは本当に大きくて。日本人の好みや耳の特性という話でもあるんでしょうけど、それ以上に「日本の音楽に合わせた」というのが大きいと思います。
好み云々じゃなくて、日本の音楽であれば外国の方が聞いた場合でも、「AVIOTの製品で聴いた音のほうが良い!」と感じるんじゃないかと、そう思えるところもあって。あとは、いかに嫌な音を出さないか、ということにも気を使われているなと思いますね。
あと、音質に関する大きなことといえば、それまで完全ワイヤレス否定派だったアーティストのピエール中野さんが、AVIOTの製品を聴いて、このレベルに達したんならピヤホンとしても作りましょうとなった、っていう話しがあったじゃないですか。
野村 そうですね、そういうお話でした。
高橋 ピエール中野さんが、完全ワイヤレスの音がもう一段階上にいったっていうのを感じられた製品が、AVIOTだったっていうのも、傍からみててインパクトのある出来事でしたね。
凛として時雨のピエール中野氏が監修を務めるピヤホンシリーズは、今やブランドを代表する人気シリーズに
新解釈の「JAPAN TUNED」サウンド!著しい音質面の向上
─── では続いて、具体的に今回の “音質特化型” モデル「TE-J1」の魅力についてお伺いできればと思うのですが、まず率直に音質面での印象はいかがでしょうか?
野村 新しい解釈をした「JAPAN TUNED」のサウンドだと感じました。凄くポジティブな意味でこれまでと音の方向性が変わったと思いましたね。
「TE-J1」 21,890円(税込)
─── それは本機で採用された金属ノズル一体型BAドライバーであったり、アドバンスド・ハイブリッドドライバー構成といったところが影響している感じでしょうか?
野村 金属ノズルでいえば、歪み感を減らすための手法のひとつとして使われていて、これは想像ですが、音の歪みに加えて、変化も防ごうという目的に作られたのかなと僕は解釈しています。クオリティ面でアップしていることは間違いなくて、音質がグッと向上していると感じましたね。
金属製ノズルとBAドライバーが一体化することで、ドライバーの不要振動を抑制する構造となっている
高橋 この金属製ノズルにBAドライバーが内蔵されていて、かつダイナミック型とのハイブリッド構成になっていますが、このドライバー構成からイメージされる、期待される音にちゃんとなっているとも思いましたね。上の帯域のカチッとした再現力に加えて、低域の支えもちゃんとある、という。
こういった技術的な内容と、再生される音が一致しているのって、イヤホンを買う方としては凄くありがたいんですよね。このハイブリッド構成で、凄く大人しくまとまったサウンドとなっていても、期待していたのと違う!ってなりがちだと思うので。
野村 たしかにそうですね。
ハイブリッド構成によって高音域の再現力に加えて低域もしっかりしている
高橋 あと、以前のJAPAN TUNEDは耳障りな音を出さない音作りが見事でしたが、このモデルの音作りではどういう音を出すかという、AVIOTとしての提案や主張もより強く感じられます。
野村 やっぱり、色々と製品を出していく上で研究が進んだっていうのはあるんでしょうね。最新の音を作っていくメーカーとして、確固たるものがあるなという気がしますね。
─── 今回、96kHz/24bitでの伝送が可能なコーデックであるLDACに対応しているのも、大きな特徴となっていますね。
高橋 そうですね。音質特化型らしく、ワイヤレスでもハイレゾ級サウンドを楽しめるという点を、しっかり目指した作りになっていると思います。
─── 実際に、TE-J1で聴くのにおすすめな音楽ジャンルだったり、楽曲などがあったりしますでしょうか?
高橋 まずは第一に、エレクトリック系がかなり合いますね。例えば、アタックがパンと立つような、細かい音が色々なところに置いてあるタイプの楽曲などは、相性が良いと思います。具体的に挙げれば、YOASOBIの楽曲などは、大体どれも合う印象です。
クラブミュージック系だと、密室に音を響かせるというより、開放的な空間に音を広く配置する表現の方が得意な印象です。リズム描写では、ハイハットシンバルの刻みとかギターのカッティングとか、縦軸のグリッドをカッチリ立たせてくれますよね。
野村 自分は米津玄師の『KICK BACK』がすごく相性が良いと思いました。あの曲の結構複雑なところ、コンプが強くてすごく圧力のある曲に仕上がっているんだけど、実は細部はつぶれてないとか、意外と音の広がりがあるといったところが、聴いていて全部分かるし、やっぱり日本人のボーカル、歌声がかっこよく聴こえますね。
あと、意外に弦が合うんですよね。低めの弦や木管などとの相性がすごく良くて。
高橋 チェロやオーボエなどですかね?
野村 そうですね。試聴のときにドヴォルザークの新世界第3楽章をよく聴かせてもらうんですが、ちょっと長めの木管も存在感がありながら、ちゃんと聴こえるというか。
高橋 それってボーカル帯域の聴かせ方が巧いということかもしれませんね。チェロなんかは、人の声に近い帯域や音色の楽器とも言われてますから。
野村 ほかにもEarth, Wind & Fireなんかも良いですね。やっぱり広がりであるとか、細かい音とかが印象的な楽曲とは相性良いのかなと。それって、考えてみると、日本人ってそういうところ聴いてるよね!とも思います。
カラーはホワイト/ブラック/ネイビー/カーキの全4色を展開する
使い勝手も最高!ライフスタイルを重視した機能面でのこだわり
─── さて、音質特化を謳いつつ、機能面や装着感、デザインなど、完全ワイヤレスとして細部まで丁寧にこだわって作られているところも、凄くAVIOTらしいと思いますが、お二人はどういう印象でしょうか?
野村 AVIOTって、音質重視やJAPAN TUNEDを掲げてはいますが、実はそれは裏でこだわっている部分であって、元々は、日常の中で使う、いわゆるライフスタイルを重視したオーディオ製品を展開している印象で。このTE-J1が顕著な例ですよね。
この見た目やデザイン、装着感もそうですし、まずライフスタイルの中でフィットする製品であって、そして実は音が本当に良いというのが、AVIOTのひとつの特徴であり、魅力なのかなと思いますね。
高橋 完全ワイヤレスイヤホンとしての機能性や使いやすさが土台にあって、そのうえで音を良くしてきたっていうイメージは確かにありますね。
野村 なので今回のモデルも、色の組み合わせだったり、上質な手触りだったり、わりと大人向けを意識されてるのかなって思います。
後続で発売されたネイビー/カーキモデルのケース表面には、リサイクルナイロンのタフタをベースとした「eVent(イーベント)が使用されている。
高橋 例えば、完全ワイヤレスイヤホンのケースって、本体よりも触れる時間が長かったりするので、ケースの持ち心地や触り心地というのも大事だったりするんですよ。そこが凄く意識されているように感じますね。
ホワイト/ブラックとネイビー/カーキでそれぞれケースの質感が異なるため、好みに合わせて選べる!
このケース、とても使いやすいんですよね。マグネットの強さがしっかりあるので、ケースの蓋がカバンの中とかでちょっと外れてしまっても、中身が落っこちないようになっているし。ケースの開閉も、どこでも指を引っかけてパカッと開けられるのも良い。あと、上面から本体への抑えつけが必要だなっていうのも、ちゃんと配慮されていて。
強力なマグネットの内蔵や上からのしっかりとした密閉感など、細かい配慮や工夫が行き届いている
野村 この取り出しやすさは特に最高ですよね!
高橋 しかもさらに良いのは、イヤホンを取り出して耳に装着する、そしてケースに戻す、この動作の間に、イヤホンの向きを変えるっていうアクションが全くない! だから、ごく自然にケースから着け外しができるんですよね。
パッと見だと、ケースは使い心地よりデザイン性を重視しているように見えるかと思うんですが、実際にはすごく使いやすい。音質特化型といっていますが、それだけじゃない、利便性や使い勝手の高さも評価したいですね。
御二方とも絶賛されていたイヤホンの取り出しやすさ
野村 こういうのが、ブランドとしてのノウハウだと思うんですよね。先程も話した通り、これまで製品を展開していくなかで、常にユーザービリティとかライフスタイルを重視してきた結果なのかなと思いますし、そういうところも、TE-J1の魅力だと思いますね。
─── 装着面でいうと、今回ノズルとイヤーピースが、人間の耳穴の形状に合わせて楕円形なのも特徴のひとつですね。また、マルチポイントやハイブリッド方式ノイズキャンセリングなど、完全ワイヤレスに必要とされる機能はほぼ備わっています。
野村 楕円系ノズルということもあってか、装着感は凄く良いです。本体自体はちょっと長めで、装着すると耳から少し飛び出してはいるんだけれど、ずれたり外れてしまう感じはなくて。楕円形のおかげで密閉感も向上しているので、ノイズキャンセリングの効果向上にも影響してますね。
ノズルとイヤーピースには珍しい楕円型を採用。装着感の向上と相まってノイズキャンセリング効果の向上にも役立っている
装着時イメージ。本体が耳から少し飛び出るがズレたり外れてしまう感じはない
高橋 AVIOTのノイズキャンセリングは、アクティブのノイズキャンセリング性能だけにこだわらず、パッシブでの遮音性と合わせて、総合的にノイズキャンセリング性能を高める方向性で進化してきていますよね。
野村 あと、イヤホン本体のデザイン面でいうと、最近またちょっと盛り上がりつつあるスケルトン仕様が印象的です。普通はフェイスプレート以外の部分をスケルトンにすることが多いかなと思うんですが、この独特なデザインは面白いですよね。ユーザーに向けての遊び心も感じるというか。
高橋 内部からLEDが光るのも良いですよね。不思議なもので、LEDって直で見せられるとデジタル最先端のイメージなんですけど、この半透明シェルというフィルターを通ってLEDの光がぼやけると、一気にレトロ感が出てくるんですよ(笑)。
野村 大人な向けな印象になりますよね。ものづくりとして細部まで徹底的に考えているAVIOTならではというか、ケースの上面にも金属の縁の穴を空けていて、ケースを閉めていてもここからLEDが見えるようになっていますし。
内部からLEDが点灯することで、レトロな大人っぽい雰囲気を醸し出す
高橋 あとは、マイクの音質も着実に良くなっていると感じましたね。
─── 話し声と周囲のノイズを判別、除去するAI技術を活用した、高品質通話用マイクを内蔵しています。
野村 その効果のおかげか、通話性能は今回すごく良いですし、特に問題なくスムーズな会話ができますね。
やはり、さっきの音へのこだわりに加えて、マテリアルとしての良さ、ガジェットとしての良さにおいても、かなり質の高いレベルで保たれているっていう、こういうところが、AVIOTの良さだと思います。
─── ありがとうございます。今回の対談を通して、改めて本機の魅力である音の良さに加えて、ほかの機能も全て平均点以上を確保している、これらを両立させている凄さを実感しましたね。
野村 そうですね。全ての要素へのこだわり、作り込みを感じる製品だし、実際に作り込んだものができているっていうのは、率直にすごく大歓迎です(笑)。結果的に出てくるものは全部尖っているし、本当に面白い製品を作ってくれているなと思いますね。
高橋 完全ワイヤレスイヤホンってピュアオーディオとは違って、音質だけではなく様々な面の魅力が求められるものだと思うんです。音質特化と言いつつも、それだけではないこのモデルがまさにそう。さすがAVIOTと言えるコンセプトであり、仕上がり具合だと感じました。
(協力 : プレシードジャパン
AVIOT「TE-J1」は新解釈の"ジャパンサウンド"だ!音質特化型完全ワイヤレスの魅力を評論家が語る (3/3) - PHILE WEB