ヒグマ対策、札幌市全域に拡大 すみ分け掲げ、「基本計画」改定

毎日新聞

河川敷に設置されたセンサーカメラで撮影されたヒグマ=札幌市南区で2022年10月16日、同市提供

 

 

 

 札幌市では近年、個体数の増加や分布の拡大により、住宅のすぐそばにヒグマが現れ、物的・人的被害をもたらすケースが増えている。こうした状況を受け、市は本来のヒグマの生息域と人の生活圏のすみ分けを図るため「さっぽろヒグマ基本計画」を改定する。「人は街で、ヒグマは森で。」をキャッチフレーズにした改定版では、対策範囲を従来の市内6区から全市域に拡大するなどして対策を強化する。

 

 

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市が近く公表する「さっぽろヒグマ基本計画2023」の案によると、2012~16年度に計476件だった市内のヒグマ出没件数は、17年に基本計画をまとめた後の17~21年度には約1・5倍の計721件に増加した。ヒグマの大半は森林の多い南区で出没。17年度以降は市街地やその周辺での出没が約8割に上った。  17年の基本計画では、市内10区のうちヒグマの生息域となる森林と接していない北、東、厚別、白石の4区を対策の範囲外としていた。ただ、21年6月には東区の市街地にヒグマが現れて4人の住民を襲うなど、範囲外の区でもヒグマの出没が増えている。個体数も15年度に確認できた13頭から、20年度には26頭まで増えたことが確認された。  市はこうした状況を踏まえ、人の活動圏へのヒグマの侵入や定着を抑制するための対策範囲を全市に拡大。ヒグマが生息する森林の境界にあたる農地など人が活動する場所や、自然歩道が整備されている三角山(西区)や藻岩山(南、中央両区)とその周辺地域などを「重点エリア」とする。  ◇「草刈りに効果」補助を検討  ただ、侵入を防ぐ方法には限りがあり、ヒグマを引きつける農作物や家庭ごみなどの管理▽侵入経路を減らすための草刈り▽自動撮影カメラによる移動経路の監視――など従来の基本計画の対策も継続する。  ヒグマは身を隠しながら移動する習性があり、21年6月に東区の市街地に出没した際は、人目につかない川や水路を経由してきたとされる。ヒグマが隠れる場所を減らし、人が侵入に気づきやすくするという点から、草刈りには一定の効果が見込まれる。  マンパワーが必要な草刈りは、市が町内会や地域の児童生徒などと協働で実施してきた。19年度に2件だった草刈り活動は、22年度に8件まで増えたものの、今回の対象範囲の拡大で新たに加わる4区では担い手の確保も課題となる。  市は草刈り機の貸し出しや購入補助制度の導入も検討しており、市環境共生担当課の担当者は「ヒグマの侵入を防ぐには市民の協力、理解が不可欠。ぜひ協力をお願いしたい」と呼びかけている。

 

【高橋由衣

 

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