丹下建築の照明改修訴訟で設計者勝訴、愛媛県の入札参加資格停止措置を違法と認定
松山地方裁判所が慰謝料など300万円超の支払いを県に命じる
小山 航日経クロステック/日経アーキテクチュア
建築家の丹下健三が設計したことで知られる愛媛県県民文化会館の改修設計を巡り、設計者の内藤建築事務所(京都市)が、業務を発注した愛媛県に2000万円の損害賠償などを請求していた裁判で、設計者が勝訴した。松山地方裁判所は、県が設計の不備を理由に内藤建築事務所へ講じた入札参加資格停止措置が、国家賠償法1条1項に違反しているなどとして、300万円の慰謝料と工事監理料の未払い分42万1811円の支払いを県に命じた。判決は2023年1月25日付。県は2月7日付で高松高等裁判所に控訴した。
愛媛県県民文化会館の外観(写真:愛媛県文化振興財団)
[画像のクリックで拡大表示]
判決文によると、事件の発端は17年に遡る。県は、完成から30年以上が経過し老朽化した同会館について、バリアフリー化や照明のLED化を図る大規模改修を計画。17年7月に内藤建築事務所が約4700万円で設計業務を受託し、18年3月に設計図書を納品した。
県は19年1月に改修工事の入札を公告したが、設計図書に不備があったとして4月に入札を中止。6月に内藤建築事務所の入札参加資格を1年間停止する措置を講じ、その翌月には同事務所との工事監理業務委託契約を解除した。
内藤建築事務所は同年7月、県の措置に納得できないとして、行政不服審査法に基づく不服申し立ての審査請求書を県に提出。執行停止を求めるも、入札参加資格停止の措置は同法1条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」には当たらないという理由で却下された。
これを受け、内藤建築事務所は同年10月、県の措置は違法であり、この措置で名誉を著しく毀損されたとして2000万円の損害賠償を請求する訴訟を松山地裁に提起した。
対する県は、内藤建築事務所の債務不履行により、工事入札の手続きが延期になったと主張。再入札後の契約が年度をまたいだため、消費税率の引き上げに伴って負担が生じたとし、約975万円の支払いを求めて20年1月に反訴した。
愛媛県県民文化会館の改修を巡る紛争の経緯。1年間の入札参加資格停止措置から判決までに、約4年が経過した(出所:取材を基に日経クロステックが作成
丹下建築の照明改修訴訟で設計者勝訴、愛媛県の入札参加資格停止措置を違法と認定 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)