KEEP GREEN HOUSE(川崎市)

斜面を内包する木造オフィス

単純架構が1.8m間隔で連続するシンプル設計 発注:DAISHIZEN、RGB 設計:SUEP.、DAISHIZEN 施工:青木工務店

川又 英紀

 

日経クロステック

 

 

斜面を内包する木造オフィス | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

 

 

住宅街を見下ろす高台の農場内に、シンプルな架構の木造オフィスが出現した。屋内外を明確に区切らず、内部の床は土舗装して従業員と草木が共存する。

東方向に傾斜する崖の際に、南北に細長い2階建ての木造オフィスを建てた。遮るものがない高台に位置するため、日当たりは抜群だ。外壁の木製ルーバーで日射制御しつつ、太陽光発電で電力を賄う(写真:浅田 美浩)

東方向に傾斜する崖の際に、南北に細長い2階建ての木造オフィスを建てた。遮るものがない高台に位置するため、日当たりは抜群だ。外壁の木製ルーバーで日射制御しつつ、太陽光発電で電力を賄う(写真:浅田 美浩)

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 「SOLSO(ソルソ)」ブランドで造園業を営むDAISHIZEN(東京都港区)が新しい木造オフィス「KEEP GREEN HOUSE(キープグリーンハウス)」を建設し、2022年9月に業務を開始した〔写真1〕。場所は、川崎市にある自社農場兼植物店舗「SOLSO FARM(ソルソファーム)」の一画。東急田園都市線沿いに広がる住宅街を一望できる高台にある。敷地面積は約1470m2、建物の延べ面積は約330m2だ。

〔写真1〕地形をそのまま屋内に取り込む

〔写真1〕地形をそのまま屋内に取り込む

整地してコンクリートで固めるのではなく、土舗装だけの内部空間で従業員は植物と一緒に過ごす。斜面を取り入れた1階には、スキップフロアのように高低差がある。内部は緑色を基調とし、木材や家具などは塗装した(写真:浅田 美浩)

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 オフィスは南北に細長い、地上2階建ての建物である〔写真2〕。門形の木造架構を1.8m間隔で連続させた単純な構造を採用〔写真34〕。長手方向の長さは約30m、カーブする敷地に合わせ、くの字の平面形状とした。

〔写真2〕天井高6~7mの吹き抜け執務空間

〔写真2〕天井高6~7mの吹き抜け執務空間

階段を上った2階から1階を見下ろす。細長いオフィスの約半分は2層吹き抜けで、開放的だ。冬場は日差しが屋内の中央部まで届く(写真:浅田 美浩)

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〔写真3〕西側のルーバーは目隠しに

〔写真3〕西側のルーバーは目隠しに

建物西側の駐車場(写真右側)を介して、自社農場「SOLSO FARM」(写真奥)とつながる。木製ルーバーはオフィスの目隠しにもなる。西側には太陽光発電パネルがない(写真:浅田 美浩)

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〔写真4〕木造の門形架構を連続させた構造

〔写真4〕木造の門形架構を連続させた構造

施工中の木造躯体。建物が敷地に沿ってカーブしているのが分かる。コンクリートの基礎は木造架構の足元だけにとどめ、土工事は最小限にした(写真:SUEP.)

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 架構には仕上げを施さず、木の現しにした。木材はスギ・ベイマツの集成材を使っている。ユニット化した架構は、「吹き抜け型」と「2階建て型」の2種類がある。この建物は北側が吹き抜けユニット、南側が2階建てユニットになっている。

 建物について、DAISHIZENの代表取締役である齊藤太一氏は、「農場内にオフィスを構えるに当たり、自然と共存する農家の暮らしをリサーチした」と語る。同氏は、環境コンサルティングなどを手掛ける子会社RGBのプロデューサーも務める。

 興味を持ったのは、大根櫓(やぐら)という大根を干すための簡素な構造物だ。畑に建てる大根櫓に基礎はなく、土に木材を刺して組み立てる。これが木造架構のヒントになった