“プーチンの頭脳” 思想家ドゥーギン氏初めて語る…「ロシアの勝利か人類滅亡かの二択」【報道1930】
「3月までに東部ドンバスの制圧を」とプーチン氏が命じたと報道されているが、その報道を裏付けるように日に日にロシア軍の攻撃は激しくなっている。プーチン大統領は21日に、これまで延期していた年次教書演説を行うというが果たして彼の頭の中はどうなっているのだろうか。
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「報道1930」では“プーチンの頭脳”とも言われる政治学者で極右思想家でもあるアレクサンドル・ドゥーギン氏にロシアによる侵略の意味、そして今のプーチン氏について話を聞いた。少なくともウクライナ侵攻以降日本のメディアに語ったのはこれが初めてだという。 まずは2022年8月に自らの娘を何者かによって爆殺された事件について話を始めた。
■「怒りは全くありません…ウクライナは存在しなくなる」 “プーチンの頭脳” とも言われる思想家 アレクサンドル・ドゥーギン氏 「捜索の結果によると、おそらく私を狙った犯罪でした。」 2022年8月。直前まで自らが乗るはずだった車が何者かに爆破され、娘を失った極右の思想家ドゥーギン氏は淡々と事件を振り返った。 “プーチンの頭脳” とも言われる思想家 アレクサンドル・ドゥーギン氏 「私を殺す理由は、西側が作った私のイメージにあります。プーチンと会ったことのない独立した思想家である私のことを西側は“プーチンのラスプーチン”と呼んでいました。テロは実際にはウクライナのブダノフ情報総局長が関与しましたが、彼の判断ではなかった。アメリカというよりも、これはテロを使って歴史に影響を与えたいと思ったイギリスの判断でした。テロリストたちは私の娘を殺害しましたが、私の中に怒りはまったくありません。報復したい気持ちもないし怒りもありません。ウクライナは存在しなくなります。チャンスはありましたが、そのチャンスを失ってしまったのです。」 ウクライナは存在しなくなると断言をしたドゥーギン氏。だが、去年2月24日の侵攻が始まった時は今のような自信に満ちたものではなかったという
■「ロシアの勝利か人類滅亡かの二択…ロシアが敗けることはない」 “プーチンの頭脳” とも言われる思想家 アレクサンドル・ドゥーギン氏 「この特別軍事作戦は軍事的な側面で見ると、失望に近いものになったと思います。2月24日に我々が行った先制攻撃によって敵は混乱し(負ける)と思っていました。素早く勝利が出来なかったことは社会を失望させたということを強調したいです。」 ドゥーギン氏によれば当初はウクライナとの単なる紛争という位置づけだと国民は思い、すぐに勝利しないことに失望していたが、その状態は秋ごろから徐々に変化していったという。そのきっかけは、9月に踏み切った部分動員。そしてヘルソンからの撤退を発表した11月にプーチン氏が、伝統的な価値の保護に関する第809号の法律に署名したことだと言う。これによってロシア的なものでないことや外国勢力とのつながりを持つことなどが厳しく制限された。 “プーチンの頭脳” とも言われる思想家 アレクサンドル・ドゥーギン氏 「国民はこの対立の規模を理解し始めました。これは限定的な反テロ作戦や領土の統合ではなく、文明の戦いだということを国民が理解し始めたのです。特別軍事作戦の目的を国民も政府も理解している通り、多極世界の構築であり、ロシアは中国やイスラム諸国や南米諸国等と同様に独立した極になります。一極集中の世界と多極世界との戦いである長期的で大変な戦争に準備しなければならないということを理解したのです。」 90年代、経済を優先しロシアを発展させてきたエリート層やオリガルヒと呼ばれる超富裕層は“プーチンの戦争”にこれまで反対を示してきた。ドゥーギン氏はこのような層が、私利私欲に走りロシアをダメにしてきたと非難した上で、そうした人々の声は、今はもうなくなっていると言う。 “プーチンの頭脳” とも言われる思想家 アレクサンドル・ドゥーギン氏 「これは国民戦争です。今この戦争はロシア社会にとって聖なる戦争です。ロシア社会はかろうじて第3次大祖国戦争に適応しようとしています。第1次大祖国戦争は1812年のナポレオンとの戦争で、第2次大祖国戦争は1941年~1945年の戦争です。私たちは欧米との戦争に入ったということを国民が理解し始めました。勝利するまでは欧米との交渉、ましてや操り人形のウクライナとの交渉はありえないということはわかっています」
ロシア国民はこの戦いをナポレオンやナチスと同じように西側を見立て、祖国防衛のための戦争考えるようになったと主張するドゥーギン氏。この戦争にどのような終わり方があるのか尋ねると・・・ “プーチンの頭脳” とも言われる思想家 アレクサンドル・ドゥーギン氏 「ロシアが勝利するか、人類滅亡になるかの2択です。3つ目のシナリオはありません。我々は勝利しなければ止まることがないのでこの戦争はいつまでたっても続く可能性もありますが、人類滅亡であっという間に終わる可能性もあります。西側がロシアかベラルーシに対して戦略核兵器、戦術核兵器を使えば、もうおしまいです。NATO諸国が直接参加すれば状況が緊迫化し終末の日が早まります。ロシアはこの戦争で負けることはないということを理解しないといけません。クリミアや4つの新しい地域だけを失うだけではなく、自分自身を失うからです。ロシアのすべての人がそれを分かっています。ウクライナは既に存在しません。もう終わっています。勝利することはありません。ロシアに負けるか、全人類とともに滅亡するかです」 ■プーチン氏の二面性「西側は見えていない」 ナポレオンやナチスは現在のロシアの領土に攻めて来たのだが、現在ウクライナはロシアを侵略したことはない。西側もそうだ。しかしプーチン氏の頭の中ではその時代と今が結びついているのか…。果たしてプーチン氏とはどういう人物なのかをドゥーギン氏はこう分析している。 “プーチンの頭脳” とも言われる思想家 アレクサンドル・ドゥーギン氏 「プーチンは二面性を持つ政治家であり、正反対のパラダイム(規範)に基づいています。特別軍事作戦を開始し、それに向けて準備を行い、多極世界を守る必要を理解しているのは「太陽のプーチン」です。しかしもう一つのプーチンも存在します。私が「月(陰)のプーチン」と呼んでいるプーチンです。愛国者である私にとってこの(太陽の)プーチンは親しい存在であり、精神的に近い存在でもあります。
ドゥーギン氏によれば「太陽のプーチン」は愛国者で、一極の世界を作ろうとする西側と徹底対決を辞さないプーチン氏。もう一つの「月のプーチン」は経済を優先させていたプーチンだと言います。 “プーチンの頭脳” とも言われる思想家 アレクサンドル・ドゥーギン氏 「オリガルヒに頼るプーチン、欧米の価値を認める、というより、特別軍事作戦開始前に認めていたプーチン、ロシアは欧米社会、欧米の文明の一部であるという論文を書いたプーチン、経済は命(ほど重要)なので貿易はすべての問題を解決してくれるものだと思っているプーチンです」 そしてドゥーギン氏はプーチン氏の中に今も「月のプーチン」がいると指摘しました。 “プーチンの頭脳” とも言われる思想家 アレクサンドル・ドゥーギン氏 「残念ながら特別軍事作戦が行われている今でも(「月のプーチン」は)存在しています。「月のプーチン」は国内の人には見えています。私たちに彼の内面が見えます。彼の迷い、優柔不断、十分でない社会の動員、矛盾した行動や人事が私たちに見えています。」 しかし、西側にはこの月のプーチンが見えていないといいます。 “プーチンの頭脳” とも言われる思想家 アレクサンドル・ドゥーギン氏 「欧米には「太陽のプーチン」しか見えず、欧米はこの太陽のプーチンのことを嫌っています。「月のプーチン」が(和平)交渉を始めたいと思っても、相手は交渉を否定しているので交渉は非現実的です。この1年間は「太陽のプーチン」の構造の中で行われていました。」 こうしたプーチンのシグナルに目を向けず、行われた欧米からのロシアへの経済制裁やウクライナへの武器供与がプーチン氏を頑なにし、愛国的になるプーチンに対し国民が結束したと言うのだ。 “プーチンの頭脳” とも言われる思想家 アレクサンドル・ドゥーギン氏 「プーチンは我々のリーダーであり、「太陽のプーチン」として認識されます。その意味でロシアの社会の中にいかなる疑問や分断はありません。」 ((BS-TBS 『報道1930』 2月10放送「報道1930」より)
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