ロシア人の妊婦5000人以上がアルゼンチンへ 子どもの市民権取得が目的か
ロシア人の妊婦5000人以上がアルゼンチンへ 子どもの市民権取得が目的か
ローラ・ゴジー、BBCニュース ここ数カ月でロシア人の妊婦5000人以上が、アルゼンチンに入国している。当局によると、1つの航空機で妊婦33人が一度に入国したケースもあったという。 アルゼンチンの移民当局によると、最近入国した女性たちは全員、妊娠後期だった。 アルゼンチンで出産し、同国の市民権を得るのが入国の目的とみられるという。 こうしたロシア人女性は増加している。現地メディアは、ウクライナでの戦争の影響だと指摘している。
■親の市民権取得にも有用か
アルゼンチンの移民当局のトップ、フロレンシア・カリニャーノ氏が現地紙ラ・ナシオンに語ったところでは、今月9日には1つの便で妊婦33人が首都ブエノスアイレスに到着した。うち3人は「書類上の問題」で拘束された。その前日にも妊婦3人が同様に拘束されたという。 それらのロシア人女性は当初、観光でアルゼンチンを訪れていると主張していたという。9日に拘束された3人は、その後解放されたという。 カリニャーノ氏は、「彼女たちは観光で来たのではないことが分かった。彼女たち自身が認めた」と話した。 同氏はまた、ロシア人女性たちについて、子どもにアルゼンチンの市民権をもたせたいと願っているとした。ロシアのパスポートより自由度が大きいからだという。 「問題は、彼女たちがアルゼンチンに来て、子どもをアルゼンチン人として登録し、去っていくことだ。私たちの国のパスポートは世界中どこでも通用する。171カ国にビザなしで入国できる」 ロシアのパスポートでビザなしで渡航できるのは、現在87カ国に限られている。 アルゼンチン国籍の子どもをもつことは、両親にとっても市民権取得の手続きを早めることになる。
■「出産ツーリズム」として確立
現地紙ラ・ナシオンは、ロシア人の入国が劇的に増えたのは、ウクライナでの戦争が原因だとしている。 同紙はロシア人妊婦の行動について、「戦争や自国の医療から逃れていることに加え、アルゼンチンにはビザなしで入れることと、質の高い医療や病院の多様性に魅力を感じていることが背景にある」と指摘している。 ロシア人を対象としたアルゼンチンへの「出産ツーリズム」は、もうけの大きい確立されたビジネスになっているようだ。 BBCが確認したロシア語のウェブサイトでは、アルゼンチンでの出産を希望する妊婦のためにさまざまなパッケージが用意されている。費用は約5000~1万5000ドル(約66万円~198万円)と幅広い。 同サイトによると、この企業は「100%アルゼンチン人によるもの」で、創業者は2015年から出産ツーリズムを提供しているという。 ラ・ナシオンは11日、ロシアの妊婦とそのパートナーに偽造書類を提供したとされる「100万ドルのビジネスと不正ネットワーク」に関する捜査の一環として、アルゼンチン警察が家宅捜索を実施したと報じた。偽造書類はアルゼンチン定住を可能にするため、記録的な速さで発行されていたという。 警察によると、関係グループはサービスの提供に際し最大3万5000ドルを請求していたという。 逮捕者は出ていないが、警察はノートパソコンやタブレット、出入国書類や大量の現金を押収したとされる。
(英語記事 Thousands of pregnant Russians seek Argentine passports)
(c) BBC News
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