米共和党「M1エイブラムス戦車を提供すべきだ」…ウクライナ軍事支援でバイデン政権批判

読売新聞オンライン

 【ワシントン=田島大志】ロシアの侵略を受けるウクライナに対し、英国以外の戦車供与が暗礁に乗り上げていることを巡り、米共和党がバイデン政権批判を強めている。共和党の一部からは米製戦車を提供すべきだとの声も出始めた。野党・共和党が下院で多数派を握る「ねじれ」下で、今後のウクライナ支援にどう影響を与えるか注目される。

早期終結

米軍の主力戦車M1エイブラムス(2021年3月)=ロイター

 「重要な兵器の提供をためらうのは弱腰だ。ウクライナ人の命を犠牲にする」

(写真:読売新聞)

 共和党のマイケル・マコール下院外交委員長とマイク・ロジャース下院軍事委員長は18日に連名で声明を出し、独製戦車レオパルトの供与に二の足を踏むドイツと、米軍の主力戦車M1エイブラムスの供与に踏み切らないバイデン政権を批判した。

 共和党のリンゼー・グラハム上院議員は20日、米超党派議員団としてキーウを訪問。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した後、「バイデン政権は米製戦車を送るべきだ。そうすれば他国は追随する」と主張した。

 共和党ではこれまで、「米国第一主義」を掲げたトランプ前大統領に近い議員を中心に、ウクライナ支援の長期化に否定的な意見が目立っていた。昨年11月の中間選挙では「いずれ(ウクライナへの)資金提供を止めなければならない」(J・D・バンス上院議員)との主張もあった。

 ただ、侵略が長期化する中、共和党内では伝統的な保守強硬派を中心に、強力な兵器供与がロシアによるウクライナ侵略の早期終結につながるとの見方が広がりつつある。今後も、より強力なウクライナへの軍事支援を求める可能性がある。

核の脅威

 バイデン政権は19日にウクライナに対する25億ドル(約3200億円)の追加軍事支援を発表したが、ウクライナが求めているM1エイブラムスや300キロ・メートルの長射程を持つ地対地ミサイル「ATACMS」、戦闘機など攻撃力の強い兵器は供与しない方針を貫いている。

 米政府はエイブラムスを供与しない理由として維持・管理の困難さを挙げ、ATACMSは「性能が過剰だ」(国防総省高官)と説明する。オースティン国防長官は20日の記者会見で「我々が考えているのは、信頼できる戦闘能力を提供することだけだ」と強調した

 

 

ただ実際は、米国が戦車や長射程兵器を供与し、ロシア領内の攻撃に使われた場合、米露間の緊張が過度に高まることへの懸念が大きい。米国が恐れるロシアの核兵器使用の脅威が高まりかねないからだ。

 政権内では、昨年12月に成立した450億ドル(約5兆8500億円)のウクライナ支援の予算が夏頃に切れるとの見方が出ている。「ねじれ」の状況で、その後の関連予算には共和党の意向が強く反映されるとみられ、政権側は共和党の今後の出方を見極める構えだ。

 

 

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