米FRB、政策金利0.5%引き上げ インフレ抑制効果見極め
米連邦準備制度理事会(FRB)は14日、政策金利を0・5%引き上げると決めた。11月会合まで4会合連続で従来の3倍の0・75%の利上げを続けたが、急ピッチの金融引き締めによるインフレ抑制の効果を見極めるため、利上げペースを減速させた。今回の利上げ局面で、上げ幅を縮小するのは初めて。インフレは鈍化の兆しが出ているものの依然として記録的な高水準にあり、パウエル議長は記者会見で「利上げを続けるのが適切」と述べ、来年も金融引き締めを続ける姿勢を強調した。
金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)で全会一致で決めた。利上げは3月以降、7会合連続。政策金利の誘導目標は4・25~4・5%となった。 11月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比7・1%の上昇となった。依然として高い水準だが、国際的な原油相場の下落などを背景に5カ月連続で伸びは鈍っており、ピークは超えたとの見方が広がっている。 これまでFRBはインフレ抑制を最優先する姿勢を示してきたが、急激な利上げの継続が米経済に過度な悪影響を及ぼす懸念も強まっている。金融引き締めの効果が実体経済に反映されるまで時間差があることも踏まえ、今年3月にゼロ金利を解除して以来、初めて利上げ幅の縮小に踏み切った。 ただ、米国では人手不足を背景にした賃金上昇など労働市場の過熱が続き、強いインフレ圧力となっている。物価上昇の勢いは鈍化しているとはいえ、FRBが掲げる目標(2%)を大きく上回っている。このためFRBは次回1月31日、2月1日に開く会合でも利上げを続ける見通し。上げ幅は12月会合からさらに縮め、従来の「巡航速度」である0・25%に戻すとの見方が出ている。 FRBは14日示した最新の経済見通しで、2023年末の政策金利を5・1%と前回の9月時点の見通し(4・6%)から引き上げた。現在の金利水準を元にすると0・25%の利上げを3回程度実施することになる。 市場では23年中の利下げを期待する声が根強いが、パウエル氏は会見で「インフレ率が持続的に2%に低下すると確信できるまで、利下げを検討することはない」と否定。23年中に利上げを「打ち止め」した後、強い金融引き締め効果のある5%程度の政策金利をしばらく維持し、インフレが収束する見通しがたった時点で利下げを始めるシナリオが有力だ。経済見通しでは、24年末の政策金利を23年末より1ポイント低い4・1%とした。 一方、経済への打撃は避けられそうにない。経済見通しでは、23年10~12月期の経済成長率を前年同期比0・5%とし、9月公表の前回見通し(1・2%)から大幅に引き下げた。失業率も4・6%と前回見通し(4・4%)から悪化している。 パウエル氏は米経済が景気後退(リセッション)に入るとの見方を否定したが、既に金融機関やハイテク企業などで人員解雇の動きが出ており、金融引き締めでインフレを抑制しつつ急激な経済悪化を防ぐという難しいかじ取りを迫られる。
【ワシントン大久保渉
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