「抑止効果」に一定評価 「困惑」要件 即効性疑問も 被害者救済法成立
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)のロゴ=東京都渋谷区(三尾郁恵撮影)
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を巡る被害者救済法が10日、国会で成立した。霊感などで不安をあおる悪質な寄付の勧誘行為に対する罰則や取り消し権が盛り込まれ、被害者救済に取り組んできた弁護士からは「被害の未然防止につながる」と評価の声も。一方、寄付者を「困惑」させることを禁止行為の要件としたことで、長期のマインドコントロール下にあった場合、新法の効果は限定的との見方も残る。
「これまでまったく規制がなかった状況。霊感商法の被害の抑止効果はある」。岡山霊感商法被害弁護団の団長も務めた河田英正弁護士は、新法の意義をこう語った。 河田氏が旧統一教会による違法献金を巡って損害賠償を勝ち取った民事訴訟では、当時20代前半の公務員の男性が被害に遭った。 教団側は「文化サークル」と称して男性を勧誘。占い師と引き合わせ、「あなたの家系は途絶えてしまう」「祖先が犯した恨みで堕落する」などと不安をあおった。男性はその数日後に保険を解約するなどして全財産の60万円を献金。結局、給与の大半を教団関係に費やしながら約1年5カ月にわたって信者として活動し、退職する直前に両親に保護され、脱会した。 こうした寄付の勧誘は、新法では「霊感などを用いた告知」の禁止行為に該当するほか、「生活の維持を困難にしないようにする」という配慮義務にも違反すると考えられる。 ただ、河田氏は「旧統一教会によるマインドコントロール期間はもっと長いのが一般的」と指摘。多くの信者は責任感や義務感などから寄付しており、「困惑が要件である限り、即効性のある取り消しは期待できない」と話した。 一方、マインドコントロール防止などを念頭とした配慮義務が、罰則対象から外れたことへの不満も根強い。 全国霊感商法対策弁護士連絡会の久保内浩嗣弁護士は「正体を隠して被害者に近づくのがカルト。自分たちが何者であるかを明らかにせず寄付の使途を誤認させることを、なぜ禁止行為としなかったのか」と疑問を呈する。 寄付が「必要不可欠」と告げることも禁止行為の要件で、被害者救済の上では高いハードルとなる。久保内氏は「勧誘時に非常に強い言葉がないと、取り消し対象にならない。条文として明記されることで、かえってお金を取り戻すことが難しくなる恐れもある」との懸念を示した。 また、高額献金をした信者であっても、子や配偶者が寄付を取り消せる金額は扶養義務などの範囲内にとどまるなど、抜本的な被害者救済にはまだ道半ばだ。 河田氏は「請求権者が限られ、使いどころがない法律」、久保内氏は「全額を取り戻したい宗教2世の希望に沿うのは難しい内容」と指摘し、新法の早期見直しの必要性にも言及した
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救済新法「無いよりまし程度」 弁護士が実効性疑問視 教団被害者、成立評価
被害者救済新法の成立を受け、記者会見する旧統一教会被害者の橋田達夫さん=10日午後、東京都千代田区
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を受けた被害者救済新法が成立した10日、教団の被害者が記者会見し、成立を評価した上で「一人でも多く救ってほしい」と訴えた。 一方、この問題に長年取り組んできた弁護士からは「無いよりまし程度だ」と実効性を疑問視する意見も出た。 元妻が信者の橋田達夫さん(65)は、参院本会議を傍聴して成立を見届けた後、国会内で記者会見した。「これまで被害を訴え続けてきたが、まさかこんな大きな法律ができるとは思わなかった。(被害者にとって)第一歩だ」と評価した。その上で「ここで終わらせるのではなく、次の国会でも審議してもらい、一人でも多く救ってほしい」と訴えた。 全国霊感商法対策弁護士連絡会は都内で開いた記者会見で、新法成立に対する声明を発表した。声明では「禁止行為や取り消し権などの対象となる行為の範囲が狭い。被害防止、被害者救済の観点からあまりに不十分なものとなった」と指摘した。 メンバーの山口広弁護士は「法律ができたことに一定の感慨はあるが、『無いよりまし』程度だ。救済の幅が広がったとは到底言えない」と話した。阿部克臣弁護士は「被害救済の意味では(内容が)乏しい法律で、被害実態と政府の認識にはずれがある」と語気を強めた
救済新法「無いよりまし程度」 弁護士が実効性疑問視 教団被害者、成立評価(時事通信) - Yahoo!ニュース