コロナよりインフルエンザ患者が圧倒的に多いNY。変異ウイルスBQ.1を医師が解説
いま、アメリカではコロナ感染者は減少傾向にあり、インフルエンザの感染者数が増えているといいます。新しい変異ウイルスに置き換わったというコロナ感染は、当初予想されていたほど流行していないようです。コロナとインフルエンザの最新情報について、山田悠史医師に聞きました。
教えていただいたのは……
山田 悠史 米国内科・老年医学専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。新型コロナ専門病棟等を経て、現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビライブニュースαレギュラーコメンテーター、NewsPicksの公式コメンテーター(プロピッカー)、コロナワクチンの正しい知識の普及を行うコロワくんサポーターズの代表。カンボジアではNPO法人APSARA総合診療医学会の常務理事として活動。最新刊は、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』(講談社刊)。 Twitter:@YujiY0402 編集:ニューヨークでは、今年はコロナ患者よりもインフルエンザ患者の方が多いそうですね。 山田:絶対数はコロナの方がまだ多いかもしれませんが、コロナはどちらかといえば横ばいから減少傾向にある一方で、インフルエンザの患者さんはここ数週間で急速に増えました。外来のインフルエンザ患者さんだけではなく、入院される方もいます。 編集:日本でも、どちらの対策もしなくてはいけませんね。 山田:そうですね。インフルエンザは特に、小さなお子さん、そして妊婦さんの重症化率が高いことが知られています。こうした方々を守る意味でも、社会全体としてインフルエンザ対策を行うことは、とても大事なことです。ただ、コロナが流行していたここ数年、インフルエンザに対する警戒が薄まっていたので、あらためて思い出さなくてはいけないと思います。 編集:インフルエンザもコロナも、基本の感染対策は変わらないのでしょうか?
インフルエンザとコロナ、感染対策は?
そうですね。基本的には予防接種とマスク、手洗いや手指消毒、換気などが基本になります。特に小さなお子さんをお持ちの方、そして奥様が妊娠されているというご夫婦などは、しっかりと家族全員で予防接種を受けていただくことが大事ですね。 現在はニューヨークでインフルエンザの感染が拡大していますが、感染拡大は、日本でも十分起こり得ることです。 編集:基本の感染対策を徹底したいと思います。最近は、コロナの新たな変異ウイルスの報道もされていますよね。どのようなウイルスなのでしょうか? 山田:そうですね。前回の第7波では、BA.5が有名になりましたが、現在はこのBA.5の子孫にあたるBQ.1、BQ.1.1といったウイルスへ、置き換えが進んでいます。 この新たな変異ウイルスが先行して流行していたのがフランスでした。ですが、すでに減少に転じています。 編集:そうなのですね。 山田:こちらアメリカでも、BA.5の割合は20%まで減少していまして、BQ.1、BQ.1.1への置き換えが進んでいます。 編集:BA.5とBQ.1、BQ.1.1にはどのような違いがあるのでしょうか?
BA.5とBQ.1、BQ.1.1の違いは?
山田:BA.5がさらに変異を獲得することにより、BQ.1、BQ.1.1は免疫から逃れる能力を獲得していきました。さらに、このBQ.1やBQ.1.1に対しては、今までに開発された抗体製剤が、無効になっているのです。また、初期のオリジナルのコロナウイルスに感染して私たちが獲得した抗体、オリジナルのワクチン接種によって得た抗体が、新しい変異ウイルスに対しては働きにくくなる可能性が考えられ、世界的に懸念されてきたのです。 編集:そう聞くと少し怖いですね。 山田:ただ、実際は、フランスでのインパクトは思ったより大きくなかったのです。このことは私たちに少し楽観的な見方をさせてくれると思います。このように今のところ、新しい変異ウイルスのインパクトは大きくなさそうですが、地域差もありますので、日本でこのウイルスがどのような影響をもたらすのかはまだ不透明と考えておいた方が良いでしょう。 編集:日本ではコロナウイルスの感染者が少し増えつつあり、第8波についても懸念されています。それに対して、ニューヨークは比較的落ち着いてきている、ということなのですね。 山田:そうですね。増加も見られていないので、これはよいニュースですね。さらにもっとよいニュースは、このBQ.1に対しても、今私たちが使用しているオミクロン対応ワクチンが、有効だと報告されていることです。この冬を乗り切るためにも、オミクロン対応ワクチンを受けていただくことは、感染予防・重症化予防、様々な側面で有利に働きそうです。よく考えてみれば、BQ.1はBA.5の子孫にあたる変異ウイルスですので、予想の範囲内なのかもしれませんが。 編集:オミクロン対応のワクチン、そしてインフルエンザワクチンは、同時接種も可能なのですよね? 山田:その通りです。そして基本の感染対策はコロナ・インフルエンザ、ともに大きく変わりません。繰り返しになりますが、人混みでのマスク、手指消毒、換気などを続けていただき、ウイルスに対する扉を閉めて、ウイルスの侵入をブロックする、という発想で生活していただければと思います。その上であれば、過度に恐れて過ごす必要はないと思いますね。 編集:新しいコロナの変異ウイルス、インフルエンザの感染流行も心配ですが、基本の対策をあらためて徹底したいと思います。ありがとうございました! 構成/新里百合子
山田 悠史