東急「東横線」vs「田園都市線」、マンションを買うならどっち? 新築マンションの「儲かる確率」を比較してみた

東洋経済オンライン

高いブランド力を持つ東急(写真:you/PIXTA)

 

 

 

 

 

 東急沿線は居住地としてブランド力がある。鉄道事業に加えて、沿線周辺の都市開発を進め、高級住宅地も点在する。地下鉄などとの相互乗り入れを推進し、通勤利便性も向上した。  

 

そんな東急沿線の中でも渋谷駅を起点とする東横線と田園都市線のどちらに住むべきかは、つねに話題を振りまいてきた。

 

今回、マンションを購入した際にどちらがお得かという観点で検証してみた。  

 

 

まず、この2路線を比較する際に、

前提条件を同じにする必要がある。

 

2路線とも多摩川を渡れば神奈川県川崎市になる。

その意味で、都区部の駅での比較から始める。

 

 

 

 

 東横線では

代官山駅から多摩川駅まで、

 

 

田園都市線では

池尻大橋駅から二子玉川駅までである。

 

 

つまり、

代官山、中目黒、祐天寺、学芸大学、都立大学、自由が丘、田園調布、多摩川の

8駅と、

 

 

池尻大橋、三軒茶屋、駒沢大学、桜新町、用賀、二子玉川の

6駅との

 

 

比較である。 

 

 

 

■過去の物件供給データから「儲かる確率」を算出 

 

 比較するものは、この駅で新築供給されたマンションが含み益を生み出す確率だ。筆者の運営する「住まいサーフィン」では、それを「儲かる確率」と呼び、過去に供給された物件のデータから、新築マンションの儲かる確率を計算している。

 

 

 なお、含み益とは新築で購入したマンションを売却した際に手元現金が増えることを指す。

 

例えば、

 

新築購入時に5000万円、

中古売却時に4000万円、

この間の元本返済が1200万円なら、

1000万円値下がりしたが、

1200万円元本返済しているので、

売却時に200万円現金が増えることになる。

これを含み益としている。

 

 

 

 

  あるエリアの100物件のうち60物件が含み益を出していれば、

含み益を生み出した確率は60%となり、

これが高いほうがお得な駅・沿線ということになる。

 

ちなみに、相場変動はない想定になるように補正を行っているので、最近の価格高騰でどこでも儲かるというようにはなっていない

 

 

 

 

結果は、

 

東横線74.3%、

 

田園都市線65.9%で、

 

東横線のほうが含み益は出やすい。

 

 

ちなみに新築・中古の取引価格から想定される現入居者の平均年収は、

 

東横線1388万円、

 

田園都市線1119万円で、

 

これも東横線のほうが高い。  

 

 

物件価格(購入者年収)が高いほうが値下がり率は一般的に小さくなる。

 

これは都心の物件は価格がほとんど下がらないが、郊外の物件は大きく値下がりすることから想像にかたくないだろう。

 

 

  ちなみに、国勢調査にある最終学歴を駅・沿線単位で集計すると、

 

大卒以上比率は

東横線33.5%、

 

田園都市線30.5%となる。

 

高学歴は高年収になりやすく、想定される結果である。

 

 

 

 

 

 

■代官山の儲かる確率は89%、中目黒は88%

 

  駅単位で見ると、

 

田園都市線の駅で儲かる確率が70%を超えるのは、

池尻大橋、三軒茶屋の2つだけだが、

 

 

東横線では代官山、中目黒、祐天寺、学芸大学、都立大学、自由が丘の6つある。

 

 

とくに、

 

代官山89%、

 

中目黒88%が高く、

 

沿線の数字を牽引している。

 

 

  この結果を生み出す理由はいくつか考えられる。

1つ目は都市計画の違いだ。

 

端的に、建物の高さの違いと言ってもいい。

主に世田谷区を通る田園都市線は区の高さ規制があり、戸建中心の街並みになっている。

 

 

 

 

 一方、

東横線は目黒区が主たるエリアで駅前を中心に高さ規制は世田谷区ほど厳しくない。

 

 

マンションの資産性は高い建物(例えば、タワーマンション)のほうが高く、

低層しか建てられない戸建立地では低くなりやすいものだ。  

 

 

 

次に、終着駅の影響は大きいと思われる。

 

終着駅が

 

横浜駅の東横線と

 

中央林間駅の田園都市線では、

 

ブランド力に差が出る。

 

 

実際にこの2路線の神奈川県での儲かる確率は 

 

東横線62.6%に対して、

 

田園都市線は45.6%と

 

東京都内よりも差が開く。

 

 

 

 また、相互乗り入れする主要路線では明暗がくっきりする。

 

田園都市線では半蔵門線と乗り入れ運転をかなり前から行っていたが、東武スカイツリーライン(東武伊勢崎線)まで接続し、遅延が増えた感は否めない。 

 

 

 その一方で、

 

東横線は2004年にみなとみらい線に接続したが、

この路線は儲かる確率69.4%と神奈川県で随一の高さを誇る。

  東横線で横浜方面に出かける人は多いだろうが、田園都市線で下りに乗って出かける人はそう多くないように思う。

 

 

そして、東横線は2013年には儲かる確率66.7%の副都心線に接続した。

この接続によって乗り入れ面でも田園都市線に見劣りすることがなくなった感がある

 

 

 

 

 

乗り入れによる利便性が高いことは、

同じ渋谷駅に乗り入れる京王井の頭線と比較するとわかりやすい。

 

 

この線は、渋谷駅と吉祥寺駅を結ぶが相互乗り入れはなく、

都心へは乗り換えを必要とする。

このため、物件価格は田園都市線と同水準で、

東急2路線よりも高学歴比率が高いにもかかわらず、儲かる確率は55.4%にとどまる。

相互乗り入れがさかんな首都圏の路線網の中では、取り残された感が否めない。 

 

 

 

 

■乗り入れメリットを享受する目黒線

 

 この逆もある。東急沿線の中で乗り入れのメリットを享受しているのが目黒線だ。

 

南北線と都営三田線の2路線に接続する目黒線では、

物件価格は渋谷接続の2路線よりも安いが、

儲かる確率は73.7%になる。  

 

 

目黒線はもともと目蒲線(路線再編で消滅)の一部であり、

 

目蒲線は目黒駅と蒲田駅を結ぶ3~4両編成だった乗客数の少ない路線だった。

 

 

 

  それが、乗り入れ対応として6~8両編成に順次拡大し、

不動前駅などの高架化、

田園調布駅や目黒駅の地下化、

複々線化など多大な投資が行われた。

 

そして目蒲線のうち多摩川駅と蒲田駅との間は多摩川線として切り離され、

 

東横線側に乗り入れて武蔵小杉駅・日吉駅まで続くようにした。

 

 武蔵小杉駅では2010年に横須賀線の駅が開業し、

湘南新宿ラインや成田エクスプレスが利用可能となる。

 

日吉駅では横浜市営地下鉄グリーンラインが2008年から乗り入れ、

神奈川県内でも儲かる確率が高い港北ニュータウンの駅(センター北駅・センター南駅)との接続をよくした。  

 

これに加えて、

新幹線停車駅の新横浜駅を結ぶ東急新横浜線も2023年開業予定でさらに利便性が向上する。  

 

 

このように、見てくると東急という会社の戦略性の強さと投資判断の大胆さが

際立つ。

 

 

儲かる確率は、新駅や駅前の新興住宅地で高くなる傾向が顕著にある。

 

そうした駅が以前は居住地としては特筆することのない駅も多かった。

 

 駅前は大きな工場ばかりだった武蔵小杉駅はその代表例だろう。今は大規模な駅前用地が再開発され、タワーマンションが林立する先進的な街へと生まれ変わっている。 

 

 

 

■都市計画や再開発は予見できる

 

  同様に大規模な駅前開発で大化けした街は、大崎駅や豊洲駅など枚挙にいとまがない。こうした沿線開発による流入住民を取り込んでいくことに先行投資をしたと考えられる。  ただし、今回の結果も今後儲かる確率は変わる可能性がある。その際に注目すべきことは、行政の都市計画(とくに高さ規制)や駅前の大規模な再開発、鉄道の相互乗り入れによる利便性の向上や新駅の開業などだ。

 そうした立地は各種計画から予見することができるし、化ける前に自宅として仕込んでおくと資産価値が上昇し、多額の含み益を得ることができるので、注目しておいてもらいたい。

沖 有人 :不動産コンサルタント

 

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