重松象平氏デザインの「原宿クエスト」、表参道と奥原宿の二面性を建築で表現

川又 英紀

 

日経クロステック

 

 

 

東京・原宿の人の流れが大きく変わりそうだ。NTT都市開発は2022年10月26日、JR原宿駅近くの商業施設「原宿クエスト」の建て替え工事に着手したと発表した。

 25年春に竣工を予定している新しい原宿クエストのデザインアーキテクトには、世界的に有名な建築設計事務所OMAの米ニューヨークオフィスで代表を務める重松象平氏を起用。設計はNTTファシリティーズ、施工は熊谷組が手掛ける。旧原宿クエストは21年10月に閉館している。

表参道側から見た新生「原宿クエスト」の外観イメージ(出所:NTT都市開発)

表参道側から見た新生「原宿クエスト」の外観イメージ(出所:NTT都市開発)

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 新しい原宿クエストは地下2階・地上6階建てで、低層棟と高層棟で構成する。敷地面積は約1960m2、延べ面積は約7800m2。構造は鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造だ。

 両棟の間にパサージュ(敷地内通路)を設け、表参道と奥原宿をつなぐ道のような施設にする。パサージュ沿いには原宿らしい個性的な店舗を配置し、奥原宿まで来場者をいざなう。

表参道と奥原宿をつなぐパサージュ。個性的な路面店を集める(出所:NTT都市開発)

表参道と奥原宿をつなぐパサージュ。個性的な路面店を集める(出所:NTT都市開発)

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原宿クエストの位置。「WITH HARAJUKU(ウィズ原宿)」のすぐそば(出所:NTT都市開発)

原宿クエストの位置。「WITH HARAJUKU(ウィズ原宿)」のすぐそば(出所:NTT都市開発)

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 奥原宿とは、表参道や竹下通りから内側の路地に入ったエリアを指している。個性的な小規模店舗が軒を連ねる地域だ。一方、表参道は世界中の高級ブランドショップが立ち並ぶ都内有数の買い物スポットである。原宿クエストも表参道側には、有名ブランドの旗艦店などを誘致する考えだ。表参道と奥原宿という対照的な2つのエリアを結ぶ空間を原宿クエストが提供し、街全体の回遊性を高める。

 デザインアーキテクトの重松氏は、フラッグシップ店が並ぶ表参道と個性的な店舗が点在する奥原宿の境界に位置する原宿クエストの「二面性」に注目。それを建築デザインに落とし込むという。

原宿クエストのコンセプトダイアグラム。表参道側と奥原宿側で建物の表情が異なる(出所:NTT都市開発)

原宿クエストのコンセプトダイアグラム。表参道側と奥原宿側で建物の表情が異なる(出所:NTT都市開発)

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 表参道側は垂直性と透明性を意識した外観とし、パサージュを抜けた先には奥原宿のスケールに合わせた小さな店舗や広場などを配置して、二面性を持つ施設を構築する。

代々木公園を望む表参道側の高層階テラス(出所:NTT都市開発)

代々木公園を望む表参道側の高層階テラス(出所:NTT都市開発)

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奥原宿がある北西側の外観イメージ。広場などの屋外空間を設ける(出所:NTT都市開発)

奥原宿がある北西側の外観イメージ。広場などの屋外空間を設ける(出所:NTT都市開発)

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 重松氏は「原宿クエストは表参道と奧原宿をつなげて一体化する初めての建築になる。真っすぐな並木道が続く表参道沿いには大型店が多く、奥原宿は細いストリート沿いに個性的な小型店がひしめき合う。この原宿の二面性を『等価』に捉えて接続し、街全体の発展に寄与したい」とコメントしている

 

 

 

ウィズ原宿と同じ「道のような施設」

 NTT都市開発は20年に、原宿駅前と竹下通りを結ぶ道のような施設「WITH HARAJUKU(ウィズ原宿)」を開業している。そのすぐそばに原宿クエストができる。

 原宿周辺の幹線道路側から街の内側に人を呼び込み、原宿全体を活性化する狙いは共通している。道のような施設は文字通り、人の流れを変えることを意味する

 

 

 

 

 

 道のような施設に欠かせないランドスケープデザインは、ランドスケープ・プラス(東京・新宿)の平賀達也氏が手掛ける。近くに明治神宮の杜(もり)が広がるエリアでもあり、明治神宮の植生を反映させながら植栽計画を考案していく。

明治神宮の杜との連続性を感じられる緑豊かな空間を用意(出所:NTT都市開発)

明治神宮の杜との連続性を感じられる緑豊かな空間を用意(出所:NTT都市開発)

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建築概要(出所:NTT都市開発)

建築概要(出所:NTT都市開発

 

 

 

重松象平氏デザインの「原宿クエスト」、表参道と奥原宿の二面性を建築で表現(2ページ目) | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

 

 

 

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原宿の新名所「ウィズ原宿」が開業、伊東豊雄氏などが設計

中森 葉月

 

ライター

 

 

原宿の新名所「ウィズ原宿」が開業、伊東豊雄氏などが設計 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

 

 

 

 JR原宿駅前で2020年6月5日、複合施設「WITH HARAJUKU(ウィズ原宿)」(東京・渋谷)がオープンした。商業部分には、家具販売大手のイケア・ジャパン(千葉・船橋)が国内で初めて出す都市型店舗「IKEA原宿」や、大型店舗の「ユニクロ原宿店」などが入居。施設は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、6月25日まで順次開業する予定だ。3月にはJR原宿駅舎もリニューアルしたばかり。同施設が原宿の新たな目玉となるか注目だ。

JR原宿駅前の交差点から見た「WITH HARAJUKU(ウィズ原宿)」。6月5日~25日で順次オープンする(写真:安川 千秋)

JR原宿駅前の交差点から見た「WITH HARAJUKU(ウィズ原宿)」。6月5日~25日で順次オープンする(写真:安川 千秋)

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地下1階と地上1階のメゾネットで展開する「ユニクロ原宿店」(写真:安川 千秋)

地下1階と地上1階のメゾネットで展開する「ユニクロ原宿店」(写真:安川 千秋)

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 駅から出て、明治神宮を背に横断歩道を渡った先にウィズ原宿は建つ。もともと「原宿アパートメンツ」(1959年竣工)などが建っていた複数の敷地を集約し、一体的に再開発した。完成した建物は、間口約70mの低層部をガラスで覆い、大きな1枚の面とせず雁行させたことで、各店舗が独立した路面店であるように見せている。

低層部のガラスファサード(写真:安川 千秋)

低層部のガラスファサード(写真:安川 千秋)

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「ラフォーレ原宿」や「表参道ヒルズ」など商業施設のひしめくエリアの中でも、ウィズ原宿は最大規模だ(資料:NTT都市開発)

「ラフォーレ原宿」や「表参道ヒルズ」など商業施設のひしめくエリアの中でも、ウィズ原宿は最大規模だ(資料:NTT都市開発)

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 店舗のウィンドウ沿いに進むと、木製のメインゲートで縁取ったエントランスが現れる。人を建物内部へと誘引する、鳥居を彷彿(ほうふつ)とさせる意匠だ。

JR原宿駅に面したメインエントランス。杉を使った木のゲートは、鳥居を思わせる。パサージュの間柱及び天井には多摩産のスギ材を使用した(写真:安川 千秋)

JR原宿駅に面したメインエントランス。杉を使った木のゲートは、鳥居を思わせる。パサージュの間柱及び天井には多摩産のスギ材を使用した(写真:安川 千秋)

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 NTT都市開発がコンセプトを立案したのは2016年。17年11月に着工し、足かけ約6年でオープンまでこぎ着けた。開発コンサルタントとしてアール・アイ・エー(東京・港)が参加。設計は竹中工務店と伊東豊雄建築設計事務所(東京・渋谷)、施工は竹中工務店が担当した。

 延べ面積約2万6000m2と原宿エリアでは最大規模となる同施設だが、建物のボリュームを分節することで圧迫感を感じさせない工夫がなされている。建物は建築基準法上2棟で、エキスパンションジョイントでつないだ。

南敷地側の建物3階のテラスから、北側敷地を見る(写真:安川 千秋)

南敷地側の建物3階のテラスから、北側敷地を見る(写真:安川 千秋)

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 施設の中心となるのが、駅に近い建物(南敷地)。地下3階・地上10階建てで、高さは39.02m。地下2階から地上3、8階の低層部を約1万300m2の商業エリア、4階以上の高層部を賃貸レジデンス「WITH HARAJUKU RESIDENCE(ウィズ原宿レジデンス)」の居住エリアとした。地上3階には、300人規模のイベントを開催できる「WITH HARAJUKU HALL(ウィズ原宿ホール)」や、NTT都市開発が展開するシェアスペース「LIFORK原宿(リフォーク原宿)」も入る。

 一方、竹下通りや住宅街に近い建物(北敷地)は、地下1階・地上2階建てで、高さは13.47m。それぞれの店舗面積は大きくせず、路地裏を介して入るようなつくりとした。

「丘」を想起させる段状の緑化屋根

 特徴は、建物を通貫する半屋外のパサージュだ。パサージュをたどると、駅前から静かな住宅街へ、雰囲気の異なる2つのエリアがつながる感覚を得られる。

パサージュ。駅側のエントランスから入ると、上階からの光が差し込み、視界が空に抜けるようなつくりになっている(写真:安川 千秋)

パサージュ。駅側のエントランスから入ると、上階からの光が差し込み、視界が空に抜けるようなつくりになっている(写真:安川 千秋)

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 NTT都市開発商業事業本部商業・ホテル開発部の杉木利弘担当課長は、「これまで有名ブランドが連なる表参道と、若者カルチャーを発信する竹下通りは、人の行き来があまりなかった。ウィズ原宿ができたことで、両エリアをつなぐ新たな人の動線を生み出せた」と語る。

 敷地の辺りはかつて「源氏山」という地名がついた丘陵地だったという。JR原宿駅側と竹下通り側で比較すると、およそ8mの高低差がある。パサージュの駅側は地上1階だが、竹下通り側は地下1階に当たる。

 竹下通り側から建物を見上げると、植物が植わった屋根が何層にもレイヤーになって重なるさまが目に入る。植栽のほとんどを関東に自生する在来種から選んだという。その風景は、まさに「丘」と呼べるだろう。

竹下通り側からウィズ原宿のパサージュへと続く小道。パサージュは午前7時半から午後11時半まで通行できる(写真:安川 千秋)

竹下通り側からウィズ原宿のパサージュへと続く小道。パサージュは午前7時半から午後11時半まで通行できる(写真:安川 千秋)

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 「フロアごとに屋根の形状が変わっていくのは、デザインのためと思われるかもしれないが、日影基準をクリアするために計算された結果を反映している」と杉木担当課長は説明する。

 日影規制や圧迫感に配慮した1つの要因が、2つの用途地域だ。駅側は商業地域だが、竹下通り側は第二種中高層住居専用地域となる。周囲は住宅や細い路地が入り組む