南部戦線のウクライナ部隊、冬までにヘルソン到達目指す

AFP=時事

ウクライナ南部ミコライウ州の前線で、重機関銃を構えるウクライナ兵(2022年10月5日撮影)。【翻訳編集】 AFPBB News

 

 

 

 

【AFP=時事】

 

 

ウクライナ軍ロシア軍への反転攻勢を強めているウクライナ南部の前線付近では、破壊されたロシア軍の自走式ロケット砲3基の黒焦げてさびた残骸が放置されていた。 

 

【写真】南部の戦線を巡回するウクライナ兵

 

 

 

 最近ヘルソン(Kherson)州の一部奪還に成功したことに勇気づけられたウクライナ兵たちは、2月24日のロシア軍の侵攻開始直後に陥落した州都ヘルソンに冬までに到達したいと考えている。

 旧ソビエト連邦製のBM27自走式多連装ロケットランチャー「ウラガン(Uragan)」がウクライナの攻撃で破壊されてから1週間近くがたっていたが、現場にはまだ煙の臭いが漂い、8輪で支えられた巨大なロケット砲の中には数発のロケット弾が残っていた。

 あるウクライナ兵はAFPに、「再装填(そうてん)しているところを攻撃した」と語った。少し離れた場所にはトラックも乗り捨てられ、近くの草むらにロシアのナンバープレートが転がっていた。

 トラックには、貴重な積み荷が無傷で残されていた。ウクライナ軍が必要としているウラガンロケット弾12発だ。「間もなく積まれて、われわれの元へ運ばれてくる」と兵士は語った。

 同じくロシア軍から奪った火薬のたるは、すでに近隣のウクライナ部隊に届けられた。地面には、空になった他のたるが散乱していた。

 

 

 

 

■ロシア軍の士気「低い」

 救助隊員の男性は「ロシアは組織的に撤退したと言っているが、そうであれば武器や下着、枕を置いていかないはずだ」と語った。

 別の兵士は、ロシア軍の士気は「低い」とし、「世界で2番目の軍隊が、世界で22番目の軍隊を恐れている」と語った。「減速はせず、速度を上げて、ロシア軍を川の向こうに追いやるべきだ」

 兵士が言及した川はドニプロ(Dnipro)川。ウクライナ軍はここ数週間で川の西側に進軍したが、対岸は今もロシア軍の支配下にある。ロシア軍は新たな防衛線を固めて部隊を再編成しており、援軍として数多くの兵士も加わった

 

 

 

米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」のジョージ・バロス(George Barros)氏によると、ロシア軍は先月上旬、ヘルソン州北部の占領地を失ったが、この地域にはいくつかの村があるだけで、駐留していた兵士は少なかった。だが現在、ロシアの戦線は「より引き締まって」おり、防衛が強化されたことでウクライナの進軍が困難になってきているという。

■冬前の奪還は困難か

 ウクライナ軍は数か月前から、ロシアの弾薬庫や、物資運搬に必要な橋などの施設を攻撃している。クリミア橋(Crimean Bridge)では先週末、大きな爆発が発生。ロシアはウクライナの攻撃だと非難したが、ウクライナ側は攻撃を否定している。

 ウクライナ南部軍司令部のナタリア・グメニュク(Natalia Gumeniuk)報道官によると、同橋はヘルソン州への軍事物資供給の75%を担っていた。

 だが仏パリに拠点を置くロシアの軍事専門家ピエール・グラセール(Pierre Grasser)氏は「ロシアにはまだ供給面での問題はない」と分析。ウクライナにとって戦略的・象徴的に重要な都市であるヘルソンは長期的な目標だが、冬前、さらには冬季中の奪還は不可能かもしれないと指摘した。【翻訳編集】 AFPBB News