得意分野を制した事務所に軍配、宿泊・福祉施設の落ち込み続く
木村 駿日経クロステック/日経アーキテクチュア
星野 拓美日経クロステック/日経アーキテクチュア
設計事務所の2021年度決算(単体)では、得意分野で増収を果たした企業が全体の売上高も伸ばした。事務所や住宅など計12の建物用途について上位10社のランキングを作成し、上位企業の業績を分析した。
多くの設計事務所はいくつかの得意分野で売上高の大半を稼ぐ。つまり、いかに得意分野で売り上げを伸ばすかが、業績を大きく左右する。
2021年度決算における設計・監理業務売上高を建物用途別に分析すると、得意分野でうまく売り上げを伸ばした企業が、全体の売上高でも増収を果たしていることが分かる。
代表的なのは、全体の売上高で前期比13.9%増の約480億円をたたき出した日建設計。得意の事務所で前期比28.1%増の約220億円を稼いで首位を維持した〔図1〕。事務所の売上高は全体の約46%に当たり、同社の成長をけん引し続けている。
〔図1〕設計事務所の建物用途別売上高トップ10
※各用途の2021年度設計・監理業務売上高に基づいて集計。 調査概要
※「─」は集計不能もしくは無回答。表中の矢印は22年度の見通しで、⬆は増加、➡は横ばい、⬇は減少
山下設計は岡山市新庁舎などが売り上げに寄与。大建設計が45%増で4位に(計104社)
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日建設計は3年連続首位。三菱地所設計は「常盤橋タワー」などが寄与(計105社)
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三菱地所設計と梓設計が20%を超える減収で順位を落とした(計104社)
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日建設計が533.9%の増収で首位に。22年度も横ばいの予想(計103社)
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山下設計は「名古屋市立大学病院救急・災害医療センター」が寄与して92.1%増(計103社)
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日企設計が2位に、松下設計が4位に食い込むなど、順位が大幅に入れ替わった(計103社)
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久米設計が57.8%減、日本設計が58.3%減になるなど、減収が目立った(計103社)
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前期に売り上げを大幅に伸ばした日本設計が反動減で4位に後退(計105社)
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9社が2ケタの増加率で好調。類設計室が首位を奪還した(計105社)
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調査に初回答のジェイアール東海コンサルタンツが2位にランクインした(計105社)
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コロナ禍でも好調を維持してきた倉庫・物流施設だが、回答企業全体では減収に(計102社)
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松田平田設計と大建設計が大幅増でランクインした(計105社)
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庁舎、事務所、商業施設、スポーツ施設、医療施設、福祉施設、宿泊施設、文化施設、教育・研究施設、生産施設、倉庫・物流施設、住宅に分けて集計した(資料:日経アーキテクチュア)
2020年度決算で1位だった企業が今回も首位を守ったのは、主要12用途のうち9用途だった
教育・研究施設で前期比11.6%増の約30億円を売り上げて1位に返り咲いた類設計室も増収だった。同社の売上高に占める教育・研究施設の売り上げは6割弱にもなる〔図2〕。同じく教育・研究施設が主力の石本建築事務所と東畑建築事務所も、同分野で20%超も売り上げを伸ばし、全体でも増収だった。
〔図2〕中堅設計事務所の得意分野は?
庁:庁舎 事:事務所 商:商業施設 宿:宿泊施設 文:文化施設 教:教育・研究施設 ス:スポーツ施設 医:医療施設 福:福祉施設 生:生産施設 倉:倉庫・物流施設 住:住宅
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日建設計や三菱地所設計、日本設計などの大手・準大手設計事務所については得意分野が広く知られている一方、中堅以下の事務所についてはあまり分析がない。そこで、2021年度決算の設計・監理業務売上高が50億円以上100億円未満の中堅設計事務所を対象に、建物用途別の売上高をレーダーチャート形式で示して各社の特徴を比較した。円の外側ほど売上高が高くなる(資料:日経アーキテクチュア)
多くの設計事務所がいくつかの得意分野で売上高の大半を稼ぎ出しているんだね
住宅で首位だった日企設計は、売上高の約47%を同分野が占める。同社はこの10年程度で業績を大きく伸ばした企業だ。住宅などで増収を重ね、11年度に約41億円だった全体の売上高を、21年度には約71億円まで成長させた。
逆に、得意分野で売り上げを落とした結果、全体でも減収となった企業は少なくない。
生産施設が主力のNTTファシリティーズやJR東日本建築設計、庁舎に強みを持つ山下設計や佐藤総合計画がこれに当たる
得意分野を制した事務所に軍配、宿泊・福祉施設の落ち込み続く | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)