Part1 2021年度決算(1) 全体売上高
コロナ禍の2021年度も堅調、日建設計は3年連続の増収
星野 拓美
日経クロステック/日経アーキテクチュア
長期化するコロナ禍や、木材・鋼材などの高騰で、建築需要減退への懸念が強まった2021年度。設計事務所の決算は堅調だった。
20年度に売上高400億円を突破した日建設計はさらに業績を伸ばした。
日経アーキテクチュアの調査に2020年度と21年度の業績(単体)を回答した
設計事務所106社のうち、
21年度の設計・監理業務売上高が20年度から増えたのは61社で、
全体の約58%だった。
回答した106社の、21年度設計・監理業務売上高の合計は約3087億円。
20年度から約1億円減少したものの、この数年は全体的に好決算が続いている〔図1〕。
〔図1〕増収を果たした企業が過半数
(資料:日経アーキテクチュア)
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(資料:日経アーキテクチュア)
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日経アーキテクチュア調査に2020年度と21年度の実績を回答した建築設計事務所106社について集計した。21年度の設計・監理業務売上高の合計は前期とほぼ変わらず3087億円。増収だった企業が過半数を占めた。 調査概要
2020年度決算で増収だった企業の割合は54%、19年度は59%。21年度も例年並みの水準だった
20年度に続いてコロナ禍が社会生活や経済活動を翻弄し、木材価格が高騰する「ウッドショック」や鋼材価格の高騰なども発生。年度の終盤に当たる22年2月にはロシアのウクライナ侵攻による混乱が生じたものの、売上高に目立った影響はない。
個別企業の業績を見ると、
首位を守り続けてきた日建設計が
前期比13.9%増の約480億円を売り上げて、
2位以下を突き放した。
3年連続の増収だ。営業利益は前期比206.6%増の約61億円だった。
売上高が100億円を超える準大手設計事務所については、
6社のうち4社が減収だった。
特に減少幅が大きかったのはNTTファシリティーズで、
前期比14.4%減の約211億円。
17年度に約87億円だった日建設計との売上高の差は、約268億円まで広がった。
JR東日本建築設計も前期比12.7%減の約104億円に。
売上高ランキングで梓設計の後塵を拝する結果となった。
売上高50億~100億円の中堅設計事務所では、
安井建築設計事務所が9年連続の増収で、12年ぶりのトップ10入りとなった〔図2、3〕。
〔図2〕トップ10の顔ぶれはほぼ変わらず
(資料:日経アーキテクチュア)
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日経アーキテクチュアの2021年度決算調査に回答した115社の設計・監理業務売上高トップ10。売上高の右横にあるカッコ内の数字は対前年度増減率(%)。11位以下を含めた
売上高ランキング 参照
売上高300億円以上を大手、
100億円以上300億円未満を準大手、
50億円以上100億円未満を中堅設計事務所と定義した
〔図3〕日建設計が2位以下を大きく突き放す
過去5年間の設計・監理業務売上高が100億円以上だった大手・準大手建築設計事務所7社の売上高の推移。日経アーキテクチュアが過去に実施した決算調査を基に作成した(資料:日経アーキテクチュア)
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日建設計が設計し、2021年9月に開業した姫路市文化コンベンションセンター「アクリエひめじ」。総工費は約256億円(写真:古川 泰造