洋上風力に外環道と同じ違和感
谷川 博日経クロステック/日経コンストラクション
再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電の事業者を選定する公募ルールの変更案を見たとき、最初に頭に浮かんだのは、東京外かく環状道路(外環道)の入札だった。洋上風力の公募ルールで新たに導入する落札制限の発想が、外環道の本線シールドトンネル工事の入札で採用した「一抜け方式」と似ていると思ったからだ。
オランダの大規模な洋上風力発電施設「ウィンドファーム」。資源エネルギー庁がホームページで紹介(写真:資源エネルギー庁)
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一抜け方式とは、一定の条件を満たす複数の工事を同時に発注する場合、同じ日に時刻をずらして複数の入札を実施し、先に落札した参加者がその後の案件を受注できないようにする仕組みだ。落札者は次の入札に参加できないため、受注できる案件は1つに限られる。主に、地場の中小建設会社の保護・育成を図る自治体が、発注工事の入札に取り入れている。
一抜け方式は、一種の落札制限といえる。しかし裏を返せば、例えば3件の入札に3者が参加する場合、各参加者はどれか1つを必ず受注できる。「はずれなしの宝くじ」と揶揄(やゆ)されるゆえんだ。地元建設会社の保護・育成を掲げる自治体にとって、多くの企業に仕事を分配できる一抜け方式は魅力的に映る。
翻って、洋上風力で導入する落札制限は、複数の海域で同時に事業者を公募する際、合計出力で参加者の受注件数を制限する。例えば、同時に公募した3海域で、ある参加者が最高点を獲得した場合、2位との点数差が大きい海域から割り当て、合計出力が1GW(100万kW)に達するまで受注を認める。仮に合計出力が2海域で1GWに達したら、受注できる事業は2海域に限られる。合計出力が1GWに達した参加者から“抜ける”仕組みだ。
経済産業省と国土交通省は、こうした洋上風力の落札制限について、多数の事業者に参入機会を与えるためだと説明する。自治体の一抜け方式と同じ発想といえる。ただし、資本力や技術力を要する洋上風力の公募に参加するのは、大半が国内外で事業を展開する大企業やそのグループ会社とみられる。21年12月に事業者を選定した秋田県沖と千葉県沖の計3海域の公募には、三菱商事や住友商事、大林組の他、東京電力や九州電力のグループ会社などが参加した。
経産省と国交省は、公募ルールの変更案で、国内洋上風力産業の黎明(れいめい)期にのみ落札制限を実施する考えを示した。大企業といえども、黎明期ゆえに仕事を分配して保護・育成する必要があるという理屈だろう。しかし、大企業に仕事を分配するという発想には違和感がある。同様の違和感は、外環道の本線シールドトンネル工事の入札にもあった。
洋上風力発電の事業者選定ルールに導入する落札制限のイメージ。赤枠が落札できる海域(出所:経済産業省、国土交通省
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