「ドンキのパクリ」と言われた中国の店、閉店次々 激安人気だったが
「Boom Boom Mart 繁栄集市」の店舗の外観=中国の店舗紹介アプリ「大衆点評」から
中国で「ドンキのパクリ」と言われたディスカウントストアが相次いで閉店している。 日本の「ドン・キホーテ」に似た看板の「BOOM BOOM MART 繁栄集市」は、賞味期限が近い商品を激安価格で売って若者の人気を集めた。 【写真】ユニクロに似ていた中国の名創優品 2020年の創業から約2年で上海などに約20店を出し、1・5億元(約30億円)を売り上げたという。 だが、中国メディアによると、今年3月ごろから卸業者と支払いの不履行などでトラブルになり、少なくとも15件の訴訟を抱えているという。 23日に上海の店舗の電話に出た関係者とみられる男性は「店はすでに封鎖した。少し前に身売りの話もあったが、それもかなわず閉店した」と話した。ほかの店舗もすでに営業していないという。 香港メディアは「『偽物ドンキ』、賞味期限切れ間近の商品を販売 2年で破産へ」などと報じている。
朝日新聞社
「ドンキのパクリ」と言われた中国の店、閉店次々 激安人気だったが(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース
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ユニクロ・無印と激似の中国雑貨メイソウ、パクリ批判と別の理由で炎上の深刻
● 2013年創業、猛烈な勢いで 世界的雑貨チェーンに 数年前、東京の原宿駅を出たら、赤地に白い文字で「MINISO」「メイソウ」と書かれた看板が見えた。嫌な予感がして、わざわざ道路を渡ってこの店を確認しに行った。 予想した通り、「名創優品」という会社だと分かり、わざと店員に「ここは中国の雑貨を販売する中国企業の店ですか」と確かめたら、「いいえ、うちの商品は100%日本製です」という回答が戻ってきた。「パクリと指摘されたことはないのか」と聞いても、店員は「どうして指摘されなければならないのか」と、とぼけているように見える態度だった。 名創優品は2013年に格安の日用雑貨を販売する雑貨店チェーンとして、広東省広州市で創業した会社だ。日本の雑貨業界では、パクリのやり手として知られ、「悪貨が良貨を駆逐する」典型例としても広く語られている。 同社は創業した時点から、ブランディング戦略、商品開発・デザイン、言語の表現手段などにおいて、日本企業と日本ブランドを装い、日本人デザイナーも起用したりして、徹底したパクリ作戦でビジネスを展開してきた。店舗内では、中国の歌を流してはいけないとか、外国のビジネス相手と商談するときは、日の丸と相手の国旗をテーブルに飾ったり、商品には怪しい日本語の商品名やキャッチフレーズをプリントしたりした。さらに存在もしない「東京都渋谷区神社前4-2-8」というニセ住所を使って、日本に本社を設けているイメージを作るなど偽装作戦に心血を注いでいた。
● 世界で大ウケ、驚異的な成長 日本ブランドもかすんだが… その「偽装和風」路線が成功し、わずか3年で店舗は1500店へと飛躍的に拡張、売り上げも100億元(約1998億円)に達した。海外進出にも成功し、米国、タイ、オーストラリア、ロシアなど多くの国に開業した。日本には2014年に進出し、一時、池袋、渋谷、高田馬場、原宿などに出店。全世界の店舗数は2020年6月末時点で4000店を突破した。 ECビジネスが大勢を制するなかで、創業からわずか7年で、実店舗の販売をビジネスモデルにした雑貨店チェーンとしては、世界有数の規模を誇る会社として、成功した。 日経新聞では、名創優品の勢いを見て、「『ユニクロ』などを展開するファーストリテイリングの店舗は約3600店、『無印良品』は約1000店。『ダイソー』を展開する大創産業(広島県東広島市)でも現在の約5700店体制になるには創業から40年超かかった。成長スピードでは完全にお株を奪われた形だ」と嘆いていた。 しかし、こうした嘆きをよそに、創設8年目となる20年10月15日、名創優品は4200店以上の店舗、190億元(約3792億円)にのぼる流通取引総額という神話的実績を引っさげて、ニューヨーク株式市場の門をたたいた。IPO当日、名創優品の時価総額は約60億ドルに達した。米国で初めて上場した中国の実店舗小売ブランドとなり、「世界最大のプライベートブランド総合価値小売業者」と持ち上げられ、社名が世界中にとどろいた。 その後、名創優品はさらに海外への進出スピードを速め、世界100近くの国と地域で5000店舗以上を展開するようになった。これらの実績をもって、22年7月13日に、香港証券取引所で重複上場に成功し、当日の初値は公開価格を4%強下回った13.2香港ドルになってしまったが、それでも約4億7570万香港ドル(約83億円)を調達できた
名創優品の創業者とは何者か 日本人デザイナーの存在も この名創優品を率いる創始者・葉国富氏は1977年、湖北省丹江口市の7人家族の家庭に生まれ、貧しい生活を送っていた。成人してから、家族を養う両親を助けるため、広州市に出稼ぎに行った。だが、学歴も人脈もなく、年齢も若すぎたため、雇ってくれる人はいなかった。 2001年に、葉氏は人生におけるターニングポイントを迎えた。今の妻となる女性に出会ったのだ。化粧品をよく知っている彼女の力を借りて、2人は10万元を投じて化粧品店を開いた。店はとても人気があったので、続けて3店舗まで開いた。純利益は1年間で40万元(約800万円)になった。 04年には、日本の100円ショップに相当する初の10元ショップ(約200円)をオープンした。品ぞろえが豊富で、価格も安いため、大勢の女の子が訪れるようになった。わずか4カ月で4つの店を経営するようになった。その後、広州に進出し、05年には、店舗名を「あやや」に変更した。女性向けの低価格アクセサリーを扱うこの10元ショップは、6年間で約3000店舗を開き、年間10億元(約200億円)の売上高となっている。 13年に、市場視察のために日本を訪れた葉氏は、街角に100円ショップが多く、商品が安くて品質が良いことに気づいた。それに比べ、彼が所有していた10元ショップは店の景観から商品の品質まで日本のそれにははるかに及ばないという現実を目の当たりにした。ショックを覚えた彼は逆に新しいビジネスの可能性も感じた。帰国後、店を全部手放して、同年11月に思い切って3回目の創業の道に踏み切った。 日本人デザイナーの三宅順也氏と手を組んで、名創優品を創設した。 三宅氏とみられるツイッターのアカウントには「『シンプル、ナチュラル、良質』な商品をお届けすることを目指し、『MINISO名創優品メイソウ』を創設」と自己紹介がある。 「エコロジーは現代に生きる者として目を背けてはいけない最も優先すべきテーマですよね。環境を根本から改善するには物事の本質を改めねばなりません。名創はそんな事物の本質を追求し、皆さんと共に環境の改善のお役に立ちたいと考えております」というツイート内容から察するに、三宅氏はしっかりした思想をもって行動するデザイナーだとわかる。 しかし、14年9月24日以降、ツイッターは更新されていない。 葉氏は15年から、海外進出に力を入れ始め、19年までに100カ国に進出し、1万店を出店し、年間売上高を1000億元(約2兆円)とする「100カ国・1000億元・1万店舗」という戦略計画を打ち出した。 葉氏自身も名創優品の創設者として、ハーバード大学などのビジネススクールで、「ほとんどの大きな夢は小さなアイデアから生まれたもので、すべての小売りの重鎮も、小さな雑貨店から成長してきたのだ」とサクセスストーリーを語る存在にまで押し上げられた。 さまざまな疑問をぶつけられたとき、葉氏は「私たちを読めない人は、10年前にアリババを読めなかったのと同じだ」と高飛車な態度で対応した
チャイナドレスを着たフィギュアを 「日本の芸者」と訳して中国で炎上 名創優品の海外進出路線は、順調に進んでいるように見えた。 たとえば、今年5月、名創優品はスペインの美しい古都、サラゴサに「アルフォンソ1世通り歩行者天国店」をオープンしている。これは同社のグローバル化戦略を全面的にレベルアップし、海外におけるビジネスモデルの確立に本腰を入れることを示唆する重要な作戦だ。オープン当日、現地の消費者が殺到し、高い人気を得て、この作戦は成功したかに見えた。 しかし、名創優品は7月25日、インスタグラムにチャイナドレスを身にまとったフィギュアを「日本の芸者」と訳して投稿した。この一見ささやかな過ちは、同社が歩んできた偽装和風路線を消費者に改めて認識させてしまい、中国国内では「日本憎し」の風潮と相まって、同社を批判する猛烈な砲火となった。 ごまかしの対応では逃げ切れないと悟った名創優品は、中国のSNSである微博の公式アカウントを通して謝罪声明を発表。スペインの代理店に同投稿文の削除を要請したほか、現地のソーシャルメディア代理店運営会社に対して直ちに提携関係を終了するなどの処罰措置を講じた。 こうした動きは株式市場にも影を落とし、香港に上場したばかりの名創優品の株価は、一時9%超も下落した。上場からまだ1カ月も経っていないのに、名創優品の香港株の株価はすでに10%以上落ちた。一方、同社の米国株も上場から2年足らずで、75%近く下落している。 20年のニューヨーク証券市場への上場など、一見、順風満帆に見えた海外進出戦略計画も座礁し、思い通りに進むことができなくなった。 「100カ国・1000億元・1万店舗」の目標達成期限は19年から22年に延期して対応している。目下のところ、100カ国の目標はなんとか達成できたが、1万店舗の目標は半分まで進んだところで足踏み状態に陥ってしまった。新型コロナウイルス感染拡大の繰り返しにより、この性急な計画の実現はかなり難しくなっている。 14年に池袋店をトップに日本に進出した同社は、21年12月末をもって全店舗を閉店させ、日本から撤退した。偽装和風路線を支える基礎的なインフラがあっけなく崩壊したわけだ。 8月19日、スペイン・サラゴサの店で売り出されたチャイナドレスのフィギュアが巻き起こした批判の波を抑え込むことができなくなるのを見て、名創優品は、偽装和風路線を歩み続けたことで消費者の感情を害したと謝罪し、23年3月末までに「脱日本化する」とも宣言した。 中国や世界の市場シェアでは、すでに無印良品を追い抜いていた名創優品は迷走状態に陥っている。果たしてうまく脱出できるのか、まだ結論は下せない。 (作家・ジャーナリスト 莫 邦富)
莫 邦富