2022.7.21

 

米紙が斬る「統一教会にとって日本は大事な“金づる”だ」 教団が安倍晋三を重宝した理由

 
 
 
 
 
1982年、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開催された統一教会の合同結婚式   Photo: Getty Images
 
 

 

 

 

1982年、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開催された統一教会の合同結婚式   Photo: Getty Images

 

安倍元首相の殺害事件を受けて旧統一教会に厳しい目が向けられるなか、米紙「ワシントン・ポスト」がその資金源と大物政治家との関係に斬り込んだ。元教会幹部やカルト研究者らに言わせれば、日本はこの世界的教団の富の7割を生み出す「金脈」だという。

 

霊感商法で儲かる世界帝国


悲嘆にくれる高齢者を狙う訪問販売と、著名な政治家との人脈づくり──世界平和統一家庭連合(旧統一教会)はこの両輪により、数十年をかけて日本を最も当てにできる「金脈」として確立してきた。

教祖・文鮮明が築き上げたスピリチュアルで儲かる世界帝国を研究してきた専門家たちはそう指摘する。

そして今、日本の安倍晋三元首相殺害の容疑者が「特定の宗教団体」に恨みを抱いていたと警察に供述し、旧統一教会が容疑者の母親は信者であると認めたことにより、この国で長らく物議を醸してきた同教会に再び厳しい目が向けられている。

日本の報道によれば、山上徹也容疑者は警察の取り調べで、母親が宗教団体に巨額を献金するよう圧力をかけられ破産したと話している。旧統一教会・日本会長の田中富広は7月11日に会見を開き、山上の母親が1998年頃から信者であることを明かしたが、献金額については情報がないとした。

旧統一教会は日本で何十もの教会施設を管理しており、安倍の銃撃現場から数百メートル離れた場所にある奈良支部もその一つだ。

安倍は他の多くの世界的指導者と同様に、旧統一教会関連のイベントに登壇し、講演料を得ていた。直近では2021年9月に開催された行事にビデオメッセージを送っている。

それは、文鮮明の妻で教会内で「真の母」と呼ばれる韓鶴子が主催したイベントだった。文鮮明の死去後に教会トップを務める韓鶴子に対し、安倍は「世界の紛争解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けた、あなたのたゆまぬ努力に深く感謝いたします」と述べた。

このイベントには、ドナルド・トランプ前米大統領もリモート出演し、文鮮明と韓鶴子を称えている。

 

 

 

政治家から「お墨付き」をもらうために…


その歴史を通して、旧統一教会と関連団体は、世界の政治指導者や有名人、他の宗教の著名聖職者を講演に招くために高額を支払ってきた。これは、有名で尊敬される人物と教会を関連付けることによって信用を勝ち取るための長年の戦略である。

「彼らは自分たちに正当性を与えてくれる人なら誰でもカネを出しますよ」

そう語るのは、世界各国における旧統一教会のビジネスと政治的イニシアチブを長く研究してきたラリー・ジリオックスだ。

「そうしたビッグネームで信用が得られると、さらにローカルでも地元の有力者を引きつけることができるようになるわけです」

たとえば1990年代半ばには、元米大統領のジョージ・H・W・ブッシュやジェラルド・フォード、米コメディアンのビル・コスビー、ソ連のミハイル・ゴルバチョフ元書記長が、日本やワシントンで開かれた文鮮明主催の会議で講演を行っている。

ブッシュが東京で講演した頃、日本では献金強要をめぐる集団訴訟などで、統一教会が問題視されていた。訴えによれば、原告らは多額の献金をすれば、亡くなった家族のあの世での幸せが約束されると圧力をかけられたという。

当時、そのように物議を醸す宗教団体の関連イベントにブッシュが登壇したと本紙ワシントン・ポストが報じると、ブッシュは講演料8万ドルを慈善団体に寄付すると表明した。
 

日本からNYへ送られた札束の入った袋


旧統一教会とその分派は過去60年以上にわたり、アメリカを含む世界各地での活動資金を賄うための利益センターとして日本を頼りにしてきた──学者や政府の調査員らによる複数の研究がそう指摘している。

文鮮明がアメリカで創刊した「ワシントン・タイムズ」紙をはじめ世界各国に統一教会系のメディアがあるのは有名だが、これらの事業が損失を出しても、教会は日本での「霊感商法」による強力な収益源を当てにできたのだ。

元信者で破壊的なカルトに関する著書もあるスティーブ・ハッサンは言う。

「日本の信者は、新聞の死亡欄に目を通して遺族の家を訪ね、『あなたの愛する人が私たちに交信してきました』と切り出します。そして『霊界で昇天できるように、銀行に行って統一教会にお金を送ってほしいと言っていますよ』と迫るのです」

旧統一教会のルーツは韓国だが、この団体を研究してきた歴史家たちによれば、伝統的に教会の富の70%を提供してきたのは日本だという。日本のある元教会幹部はかつてワシントン・ポストの取材に対し、1970年代半ばから80年代半ばにかけて日本からアメリカの拠点に8億ドルが流れていたと語っている。

また、統一教会が1976年に購入したニューヨークのビル「マンハッタン・センター」を管理していた元教会幹部のロン・パケットは、「韓国と日本からマンハッタン・センターに現金の入った袋、何百もの札束が入ったデカい袋がいくつも送られてきました」と、1997年に同じく本紙に語っている。

「そのお金はどこから来るのかと尋ねると、答えは決まって『御父様から』というものでした」とパケット。「御父様」とは、信者らが使っていた文鮮明の呼称だ。
 

日本は韓国に従属する国


文鮮明の神学理論では、韓国は世界を支配する運命にある民族の故郷「アダム」の国であり、日本は韓国に従属する「イブ」の国であるという。そして、イブがサタンと性的関係を持ち、人類が堕落したところに、文鮮明が人類救済の任を課されたのだと説いている。

その教祖が2012年に亡くなると、妻の韓鶴子が統一教会総裁の座に就いた。

 

 

 

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