ウクライナ「夢」に前進、汚職対策に課題 神戸学院大・岡部芳彦教授
ウクライナにとり欧州連合(EU)加盟は念願である一方、EU基準に程遠い制度や体質が改善されず実現は夢のまた夢だった。候補国として一歩を踏み出せた意義は大きい。ロシアの侵略に対する欧米の「支援疲れ」も叫ばれる中、勇気づけられたことだろう。 ロシアとの関係を断ち切りたいウクライナにとって、EU加盟で域内諸国との人、物、金の移動が自由になればメリットは大きい。各国との通商がより活発になり、企業誘致やEUからの助成金も見込める。外交上もロシアに対抗する後ろ盾ができ、国力の底上げにつながる。 ただ、今回の動きがロシアの侵略で大勢の命が失われた結果であることも忘れてはならない。EU加盟には法の支配や人権など多くの項目でEU基準をクリアする必要がある。ウクライナは加盟に向けて国内法や規制を変更してきたが、それでも候補国になれていなかったのが実情だ。
新興財閥(オリガルヒ)が政権と癒着する、裁判官や検察官の試験に賄賂で合格する、大学教授が授業の単位を金で売るなど、ウクライナは有数の汚職国家といわれてきた。親露派政権が倒れてクリミア半島が占領された2014年以降、国家汚職対策局を設置するなど汚職排除に努めたが、いまだになくならない。基準があいまいな汚職対策をEUがどう評価するかが、加盟に向けたポイントになる。 EU加盟は社会が変わるということだ。「ぬるま湯」のような制度や体質が浸透しているウクライナは、急激な変化が生む負の側面も想定しておかなくてはならない。 通常、加盟手続きには10年前後かかる。EUも1カ国を特別扱いするわけにいかず、他の候補国よりも先に加盟することはないだろう。道のりは長いが、西側諸国の全面的支援もある。焦らずに課題を着実に解決すれば加盟が早まる可能性もゼロではない。(聞き手 桑村朋
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