ウクライナはいま“兵器の見本市”に…戦争で“太る”人たち「戦争は軍需産業の在庫一掃セール」か【報道1930】

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6月、アメリカのロッキード・マーチン社の株価が、ウクライナ戦争が始まって以来最高値を記録した。この会社、一般の航空機から宇宙船まで製造するが軍需企業としては世界ランク1位(ストックホルム国際平和研究所発表)を誇る。どこかで戦争があれば、軍需産業が儲かる。当然の理屈ではあり古くは“死の商人”などと呼ばれた。今回は戦争の“市場としての側面”を読み解いた。 

 

 

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ロッキード・マーチンだけでなく、イギリス、フランスの軍需産業も軒並み株価を上げ、兵器市場は今活況を呈している。「ユーロサトリ」という催しが6月、パリで開かれる。 ヨーロッパ最大の防衛装備、安全保障の展示会で、隔年で開かれるが前回がコロナ禍で中止され、4年ぶり。今回はウクライナでの戦争もあって盛況の極み、世界62か国から1720社の企業などが参加した。ここでは政府や軍の関係者によって兵器の商談も行われる。関係者に話を聞いた。 ユーロサトリ 販売マーティング担当 デービッド・ルーコスさん 「スカンジナビア、バルト海の国々の参加が前回に比べ驚くほど増えた。 (中略)ウクライナの代表団の参加も決まっています。非常に喜ばしい。今年のユーロサトリは特別なものになると思います。多くの国はパンデミック後の経済復興のために防衛や安全保障に期待することを決めたからです。 (中略)宇宙やサイバーに傾倒していた中、ウクライナの状況でわかることは古典的な紛争の概念が存在し続けていること・・・」 昔ながらのいわゆる“武器”と“物量”が戦場ではまだまだ需要があるということがウクライナ戦争で証明されたという。一方で軍需産業の活況を懸念する声も聞いた。 イギリス・エセックス大学 ピーター・ブルーム教授 「残念ながらウクライナもまた武器を試す格好の見せ場になっている。さながら世界規模の見本市のようです。軍需産業に特需が起きている。受注が増え需要が高まりそれが以前より正当化されている点も重要だ」 こうしたインタビューを受けて、世界の軍需産業に精通する国際政治学者の佐藤丙午氏は語る。 拓殖大学海外事情研究所 佐藤丙午副所長 「武器というのは、スペック上はどれほどの性能かわかるんですが、実際戦場でどのくらい使えるかは実戦を見ながら判断するしかない。そういう意味でも今回のウクライナ戦争は、新兵器を含め色んな兵器が投入されているので、それがこの後の防衛ビジネスにおいて重要な意味を持つと思います」 各国が、持っているものの使ったことがない兵器の実力や、これからどの武器を買おうか、どの武器が効果的かなど、じっと見ているってことなのだろうか? 拓殖大学海外事情研究所 佐藤丙午 副所長 「そうです。イギリスをはじめ送った兵器がどのくらい性能を発揮するか各国の軍関係者は非常に厳しく見ている。我々もジャベリンもスティンガーも知ってはいたが、それがどれだけの効果を持って戦車を破壊できるかを実地で見たことがなかったわけで、軍事関係者は非常にドラマチックな現実を見ている

 

 

 

 

■「戦争は、軍需産業の在庫一掃セール」

戦争が武器の見本市であり、戦場が性能チェックの場であることは紛れもない現実だ。 しかし、一方で西側からウクライナに大量に供与されている武器は、必ずしも新しいものではない。例えばアメリカは対戦車ミサイル“ジャベリン”を5500基以上ウクライナに供与している。​地対空ミサイル“スティンガー”は1400基以上だ。 だが、元陸上自衛隊の渡部氏はこう話す。 渡部悦和 元陸上自衛隊東部方面総監 「これはいつの戦争もそうなんですが、ジャベリンにしても結構古い兵器なんです。スティンガーなんていうのはもっと古く、何十年も前の兵器。こういった物を各軍需産業は持っているわけです。これを戦争の機会に在庫を一掃する。処分のチャンスと・・・」 対ウクライナにおいては、ジャベリンもスティンガーもアメリカ軍が保有していたものを提供したというが、アメリカ軍の在庫がなくなれば、軍需産業に新たな武器を受注することになるのは自明である。そして今回のアメリカによる多額の軍事援助は、アメリカの圧倒的軍事力を世界に見せつける結果となったことは間違いない。その逆となっているのはロシアの軍需産業だ。

■「ロシアをもの凄く小さな国にしてしまおう」

兵器、防衛装備品等の販売額を見てみると次のようになる。

 

 

(1)    アメリカ 約36兆5000億円 

 

(2)    中国   約8兆5000億円 

 

(3)    イギリス 約4兆8000億円 

 

(4)    ロシア  約3兆4000億円 

 

(5)    フランス 約3兆2000億円 

 

(6)    日本   約1兆3000億円 

 

 

 

 

 

アメリカだけが圧倒的だが、ロシアも4位に名を連ねている。だがその地位が今崩れようとしている。ロシア製の武器の輸出先は現在、インドが28%、中国が21%、エジプトが13%だ。この状況がどう変わろうとしているのか?   拓殖大学海外事情研究所 佐藤丙午 副所長 「活況を見せるNATOの軍需産業の裏返しです。ロシアの兵器システムに対する信頼感が徐々に失われていくと思います。(中略)アメリカの武器の売り方は、“ネットワークで戦争を戦う”という文脈の中で同盟国に武器を売っていくというシステム。ロシアは今回分かったように友達というか友好国がいないわけですから市場が限られる。技術面でも政治面でも軍需産業は苦労するでしょう」 ロシアの事情に詳しい兵頭氏も、ロシアはますます苦しくなるという。 防衛省防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長 「ロシアはエネルギー大国であり、武器輸出大国であり、この二つを輸出することで国家の財政を成してきた。エネルギーでは禁輸が進み、武器ではインドがロシア離れを始めている。理由としては、ロシア製兵器の信頼性の低さが実戦で明らかになった。ミサイルの命中精度が思いのほか低かったとか・・・。 もう一つは、半導体など電子部品の調達が西側の制裁で難しくなって、戦車などの生産も事実上止まっている。すると、インドなどロシア製兵器を買っている側にすれば、今後安定供給が難しいだろうと。ということでなおさらロシア離れが進む」 この事態をアメリカは千載一遇のチャンスとしていると話すのは渡部悦和氏だ。 渡部悦和 元陸上自衛隊東部方面総監 「アメリカが目指しているのは、ロシアを軍需産業も含めて徹底的にダウングレードさせようということ。ロシアが二度と軍事大国にならない、ものすごく小さな国にしてしまおうと・・・。そうなればインドや中国などロシア製の武器を買っている国はさらに大変な思いするでしょう

 

 

 

 

■新型コロナで経済危機のトルコ救った攻撃用ドローン

 兵器によって“株”が上がった国の一つはトルコだ。それに最も貢献したのはバイラクタルTB2という攻撃用ドローンだ。長時間の自律飛行が可能で、AIで敵を見分け正確に攻撃できる。ウクライナに販売され、この3か月だけでロシア軍に750億円の損害を与えたとして注目されたのだ。 トルコの最大手のシンクタンクのアナリストは「誇らしい」といいながらこう説明してくれた。 トルコのシンクタンク「へダム」 シーネ・オズカラシャヒン氏 「トルコの軍需品が大きな国際的役割を担ったこと、TB2が初めてで輸出品としてもほぼはじめての成功と言えます」   トルコは2021年、新型コロナや通貨安で経済的危機に陥っていたが、それを救った大きな要因がこのドローンでもあるというのだ。実際、セルビアやリトアニアなど、地政学的にロシアに近い国から購入の申し込みが相次いでいるという。さらにこのドローンを作っている会社の共同経営者はエルドアン大統領の娘婿なのも大きな要素だという。

■フィンランドやスウェーデンのNATO加盟にドローンが影響?  

 剛腕エルドアン大統領の娘婿が関係するドローン。このドローン効果はトルコの経済やウクライナの戦闘に寄与することだけではない。NATOに加盟申請しているフィンランドとスウェーデンの今後にも関係するかもしれないというのだ。 トルコのシンクタンク「へダム」 シーネ・オズカラシャヒン氏 「ドローンは国際関係のための資産となっていて、同盟国との関係強化のために使われています。例えば最近の例でいうと、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟でトルコとの間で緊張が生まれましたがドローン外交によって2国間の対話が可能になるかもしれません」 現にスウェーデンもバイラクタルの購入を検討していると表明している。近日中にプーチン大統領訪問を受けるというエルドアン大統領。果たしてどんな選択をするのか注目だ。 (BS-TBS 「報道1930」 6月2日放送より)

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