ロシアによるウクライナ侵攻 「出口なき戦争」の現在地、その被害と損失戦力

NEWSポストセブン

侵攻間もない3月9日、首都キーウでは軍事演習が行なわれていた(写真=Reuters/AFLO)

 

 

 

 2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、3か月を経ても先が見えず泥沼化の様相を呈している。圧倒的な戦力差で襲いかかったロシアは、ウクライナの反抗に苦戦を強いられている。両国の損失戦力とウクライナの被害の全容とは──。 

 

 

【写真・写真付き地図など23枚】キーウから約40km、壁がはがれた10階超の建物もあるボロディアンカ。他、機首を上げた真っ青なSu‐34爆撃機、10基の風車の前を走る「Z」入り地雷撤去車、キーウの焼け焦げた町など

 

 

 

 ロシアによるウクライナ侵攻は、東部を中心に激しい攻防が続いている。ハルキウ州の6つの集落など、ウクライナはこれまで1000以上の集落を奪還。ロシアに対し、大規模な反撃を展開している。 「ロシアの戦力は4分の1以上が失われています。散らばった兵力を再編成していますが、弱体化していることは間違いありません」(軍事評論家・黒井文太郎氏)  軍備で大きく劣るウクライナだが、西側諸国からの兵器供与は拡大している。なかでも米国から5500基以上供与された対戦車ミサイル「ジャベリン」は、ロシアの戦車部隊撃退に大きな威力を発揮している。 「しかし、ロシアを追い出せるほど戦力に差があるわけではありません。プーチンが負けを認めない限り停戦は見込めず、戦いは長期化するでしょう」(黒井氏)  大国ロシアによる侵略戦争は、先の見えない消耗戦となって世界を揺るがす。

ロシアのウクライナの侵略3か月

●3月上旬 ハルキウ州イジューム 集合住宅 44人死亡/砲撃を受けた5階建て集合住宅のがれきの中から民間人44人の遺体が発見された。住民たちは砲撃から逃れるため地下に隠れていたという。 ●3月9日 マリウポリ 小児科・産婦人科の病院 17人負傷/ロシア軍の空爆で少なくとも17人の職員が負傷。ドネツク州知事の発表によれば、子どもの負傷者はなく死者も出ていない。 ●3月16日 マリウポリ劇場「ドネツク・アカデミック・リージョナル・ドラマシアター」 約600人死亡/多数の民間人が避難し、建物の前に大きくロシア語で「子どもたち」と描いていたが、建物が完全に破壊されるほどの攻撃を受けた。 ●4月8日 ドネツク州 クラマトルスクの鉄道駅 52人死亡/女性や子どもなど約4000人の避難民でごった返していた鉄道駅に弾道ミサイルが撃ち込まれ、少なくとも52人が犠牲になったと見られる。 ●4月14日 黒海 ミサイル巡洋艦「モスクワ」沈没 1人死亡、27人行方不明/黒海艦隊旗艦のミサイル巡洋艦「モスクワ」がウクライナの対艦ミサイル2発によって沈没。ロシア側は当初、弾薬の爆発による損傷と発表していた

 

 

 

●4月18日 リビウ軍事施設や自動車整備工場 7人死亡、11人負傷/4発の着弾で7人が死亡。ロシア側によれば、軍事物資の補給輸送センターへの誘導ミサイルの攻撃で、欧米から支援された兵器を大量に破壊した。 ●5月7日 ルガンスク州 ビロホリフカ村 学校 約60人死亡/約90人が避難していた学校が空爆され、約60人が死亡。ゼレンスキー大統領は「ナチスが欧州にもたらした悪の再現」と強く非難した。 ●5月11日 マリウポリ アゾフスタル製鉄所 死傷者数不明/製鉄所に立てこもるウクライナ軍は、5月11日、「過去24時間の間に38回の空爆があった」と発表した6日後に撤退を開始。ロシア軍のマリウポリ制圧が現実味を帯びる。

ロシアとウクライナの通常戦力と損失戦力

●ロシア通常戦力  兵力/85万人、戦車/1万2420両、装甲車両/3万122両、自走砲/6574基、多連装ロケット砲/3391両、戦闘機/772機、攻撃機/739機、ヘリコプター/1543機、攻撃ヘリコプター/544機、航空母艦/1艦、駆逐艦/15艦、フリゲート艦/11艦、コルベット/86艦、潜水艦/70艦、巡視船/59隻(「GLOBAL FIREPOWER 2022」より) ●ロシア損失戦力  戦車/671両、装甲戦闘車両/365両、歩兵戦闘車/721両、装甲兵員輸送車/108両、耐地雷・伏撃防護車両/26両、歩兵機動車/109両(写真【1】)、指揮通信車両 /74両、工兵・支援車両/141両(写真【2】)、自走式対戦車ミサイルシステム/14、重迫撃砲/13基、牽引砲/61基、自走砲/113基、多連装ロケット砲/66基、対空砲/6基、自走対空機関砲/15基、地対空ミサイルシステム/59、レーダー/10、電子妨害・攪乱システム/8、航空機/26機【3】、ヘリコプター/41機、無人航空機/61機、艦艇/9艦、軍用物資補給列車/2両、トラック・ジープ・各種車両/957両(「Oryx」より

 

 

 

 

 

●ウクライナ通常戦力  兵力/20万人、戦車/2596両、装甲車両/1万2303両、自走砲/1067基、多連装ロケット砲/490基、戦闘機/69機、攻撃機/29機、ヘリコプター/112機、攻撃ヘリコプター/34機、フリゲート艦/1艦、コルベット/1艦、巡視船/13隻(「GLOBAL FIREPOWER 2022」より) ●ウクライナ損失戦力  戦車/163両、装甲戦闘車両/80両、歩兵戦闘車/117両、装甲兵員輸送車/67両、歩兵機動車/93両、指揮通信車両/2両、工兵・支援車両/13両、自走式対戦車ミサイルシステム/10、牽引砲/26基、自走砲/31基(写真【4】)、多連装ロケット砲/17基(写真【5】)、対空砲/3基、自走対空機関砲/2基、地対空ミサイルシステム/43、レーダー類/23、航空機/20機(写真【6】)、ヘリコプター/7機、無人航空機/22機、艦艇/17艦、トラック・ジープ・各種車両/290両(「Oryx」より) ●NATO陣営がウクライナに提供した主な兵器 自爆型ドローン「スイッチブレード」700機以上 攻撃型ドローン「フェニックスゴースト」121機 対戦車ミサイル「ジャベリン」 5500基以上 装甲兵員輸送車「M113」200両 155ミリりゅう弾砲 90門(弾薬 約20万5000発) 地対空ミサイル「スティンガー」1400基以上 対戦車ミサイル「NLAW」3615基 取材・文/小野雅彦 ※週刊ポスト2022年6月3日

 

 

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