プーチンの傭兵軍団「ワグネル」がアフリカで虐殺を働き、モスクワへ「仕送り」している

クーリエ・ジャポン

モスクワで共同会見に臨むマリのディオプ外務・国際協力相(左)とロシアのラブロフ外相   Photo: Yuri Kadobnov/Pool via REUTERS

 

 

 

プーチン大統領お抱えの民間軍事会社「ワグネル・グループ」が、西アフリカのマリで民間人の大量虐殺に加担しているという。しかも、マリ政府との契約で得た報酬は、経済制裁にあえぐプーチン政権の懐に……。米紙「ワシントン・ポスト」が知られざる闇取引に迫った。

 

 

  【画像】なぜかアフリカにいるプーチンお抱えのロシア人傭兵

 

 

 

「町じゅうが死体だらけに」

その男性は、イスラム過激派のやり方なら嫌というほど知っていた。過激派の戦闘員らは何年も前から彼の家に突然現れ、金や家畜を要求してきたのだ。 しかし3月末のある朝、彼が暮らす田舎町にやって来たのは、それまで見たことのない「新しい顔」だった。軍服を着た白人の男たちが、初めて聞く言語で叫んでいたのだ。 「奴らは家に押し入って、人々を撃ち始めました。町じゅうが死体だらけになったのです」 襲撃されたのはマリ中部の町モラ。人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によれば、少なくとも300人が殺害されたとされるが、目撃者たちはそれよりはるかに多い住民が犠牲になったと話す。 同様の残虐行為はマリ全域でみられるようになってきている。きっかけは、この冬、イスラム過激派組織と戦うマリ政府が、ロシア人傭兵を政府軍に加えたことだ。 雇われたのは、ロシアの民間軍事会社「ワグネル・グループ」の傭兵たち。同社はプーチン政権の秘密の傭兵組織とみなされており、これまでに中東やアフリカで数々の蛮行を働き、戦争犯罪にあたるとして非難されている。 欧米の情報機関や安全保障の専門家らによれば、このワグネル・グループがアフリカなどで稼いだ利益はモスクワへ送られ、ウクライナ侵攻で経済制裁にあえぐプーチン政権の支えになっているという。

いくらの報酬を得ているのか?

ワグネルの傭兵がリビアで子供のおもちゃに爆発物を仕掛けたこともあったと、米国防総省の高官は言う。中央アフリカ共和国では、ワグネルの傭兵らが若い女性や少女たちに性的暴行を加えたとの報告が人権団体に寄せられている。 そしてマリでは、過激派に占領された土地を奪還するという名目のもと、ロシア人傭兵とみられる男たちが、この数ヵ月で何百人もの民間人を手にかけたと、複数の目撃者が語っている。 アフリカを担当する米軍の当局者らによれば、

 

 

現在マリで活動するロシア人傭兵は800~1000人で、大統領府の警備や過激派の追跡などの任務を担っている。

一方、彼らを雇ったマリ政府が月に支払う報酬は、月に最大1000万ドル(約13億円)だという

 

 

 

迷彩服にワグネルのシンボルマーク

ワグネル・グループの業務は謎に包まれている。公式な記録が残らないように複数のペーパーカンパニーを使って活動内容を隠すのだ。 それでも本紙ワシントン・ポストが入手した文書や衛星画像の分析から、マリでロシアの存在感が高まっていることがわかる。 衛星画像では、マリの首都バマコの空港脇で進む軍事基地の拡張が見えるが、これはワグネルが使っている軍事基地だと欧米の外交官らは指摘する。飛行記録からは、ロシア空軍機がひそかにバマコで離着陸を繰り返していることがわかる。 フランス当局が撮影したドローン動画や偵察画像からは、マリ軍のなかに白人の兵士がいることがわかる。その白人兵らの迷彩服に縫い付けられた白い頭蓋骨のワッペンは、ワグネルのシンボルマークだ。 マリ政府はワグネルの傭兵を雇用してはいないと嫌疑を否定。ロシア軍の軍事指導員からアドバイスをもらっているだけだと主張している。だがロシア当局の公式見解は、マリにいるロシア兵は「民間軍事会社」の傭兵だとの立場で、マリ政府の主張と矛盾する。 詰まるところ、その境界線は曖昧だと、専門家たちは指摘する。ワグネル・グループに所属する傭兵の多くがロシア軍の退役軍人だからだ。

殺された死体には火が放たれた

米NGO「武力紛争地域事件データプロジェクト(ACLED)」によると、1月~4月半ばにマリ軍とそのパートナーであるロシア兵によって殺された民間人は少なくとも456人にのぼる。 なかでも最大の虐殺が起きたのが、冒頭のモラの町だ。4日間にわたる作戦で300人が犠牲になったとされる。目撃者たちによれば、殺された死体には虐殺者らの手によって火が放たれたという。 後日、マリ国防省は「テロリスト203人」を殺しただけだと発表した。

Danielle Paquette, Joyce Sohyun Lee and Jon Swaine

 

 

 

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