プーチン氏“逆上”皆殺しの危機 米CIA、ウクライナ侵攻激化の警告 「『人道回廊』設置で『戦術核』使用の可能性」世良光弘氏
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が激高している。ウクライナ侵攻が想定通りに進んでいないうえ、欧米諸国による経済制裁を受けて「国家破綻」の可能性も指摘されているのだ。ロシア軍はこれまでも、病院や学校、原子力発電所などに無差別攻撃を続けてきたが、米CIA(中央情報局)は、プーチン氏が市民の犠牲を顧みずに攻勢を強める恐れがあると警告した。民間人を避難させる「人道回廊」設置も、総攻撃に向けた準備の一環とみられている。ロシアが「戦術核兵器」を使用する危険性とは。こうしたなか、中国の習近平国家主席は、人民解放軍に「戦争準備」を指示した。これ以上、ロシアを暴走させていいのか。 ◇ 「(ロシアによるウクライナ侵攻は)甚大な苦しみと無用な犠牲者を生んでいる」「都市、民間の学校、病院、集合住宅を標的にしてきた」「欧州最大級の原発を攻撃し、メルトダウン(炉心溶融)を誘発する可能性を無視した」「プーチン氏はいかなる代償も顧みず〝殺戮(さつりく)の道〟を歩み続ける決意を固めたようだ」 ジョー・バイデン米大統領は8日、ホワイトハウスでの演説でこう語り、世界中の即時停戦・軍撤退を求める呼び掛けを無視したプーチン氏に強い懸念を示した。 そのうえで、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領率いるウクライナについて、「勇気や愛国心、自由に生きるという反骨精神」を称賛し、「プーチン氏は都市を奪うことはできても、国を取ることはできない」と強調した。 この「侵攻失敗」については、ロシアも理解しているとの報道がある。 英紙タイムズは7日付で、ロシア情報機関「連邦保安局(FSB)」の内部文書とみられる報告書の内容を報じた。これによると、ロシア軍の死者がすでに1万人規模に上っている恐れがあるとし、「ロシアは追い詰められている。勝利の選択肢はなく、敗北のみだ」と指摘した。 ロシア軍の死者について、同国国防省は今月2日、498人と発表。ウクライナ外務省は8日、最大1万2000人としている。 前出の文書は「主要部隊と連絡が取れていない」として、ロシアのプーチン政権内で正確な死者数を把握できていないとの見方も示した。 さらに、欧米諸国による制裁の影響で、ロシア経済が破綻する恐れもあり、文書は6月が侵攻の「暫定的な最終期限」だとも指摘した。 ただ、独裁者であるプーチン氏は冷静な判断ができないようだ。 CIAのウィリアム・バーンズ長官は8日、下院情報特別委員会の公聴会で証言し、ロシアの想定通りにウクライナ侵攻が進んでいないとの見方を示し、「プーチン氏は憤り、いら立っている」と述べた。ロシア軍が今後、市民の巻き添えを顧みずに攻勢を強める恐れがあると警告した。 ロシア国防省は8日、首都キエフや、キエフ北方のチェルニヒウ、東部ハリコフ、東部スムイ、南東部マリウポリの5カ所からの「人道回廊」を設置したと一方的に発表した。ただ、退避先の大半はロシアやベラルーシとしており、ウクライナ側は反発している。 欧米諸国は、ロシアによる「人道回廊」の設置が、「一般市民は避難していなくなったはずだ」という口実に利用され、その後の無差別的な総攻撃につながることを強く警戒している。 国際社会から孤立 島田洋一氏 国際政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「CIAのバーンズ長官は『ロシアとウクライナが折り合うことがない』とみている。戦況次第だが、西側諸国はこれまで以上に制裁を強めて、ロシアを国際社会から孤立させるのだろう。米国も『最悪の場合、プーチン氏が核兵器を使用する可能性がある』とみている」と指摘した。 「核兵器使用」を懸念する声は他にもある。 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「プーチン氏は追い込まれており、このまま戦況を長引かせてもメリットがない。『人道回廊』の設置で、大都市への総攻撃を掛けやすい状況になる。『戦術核兵器の使用』まであり得るのではないか。1962年のキューバ危機以上に危険な状況かもしれない」と指摘した
プーチン氏“逆上”皆殺しの危機 米CIA、ウクライナ侵攻激化の警告 「『人道回廊』設置で『戦術核』使用の可能性」世良光弘氏(夕刊フジ) - Yahoo!ニュース