2022年、世界の危機を展望すると、日本以外全部沈没なのか?
世界情勢をまとめてみると
これまで、今年1月6日公開「ドイツは3度目の『敗戦』? メルケル16年の莫大な負の遺産」、昨年12月30日公開「韓国は日本を追い抜く前に朝鮮半島ごと沈没してしまいませんか?」、同11月6日公開「食糧危機は中国から始まる――14億人の民を誰が養えるのか」、同10月9日公開「バイデン政権では中国発の経済混乱を防げないと思えるこれだけの不安」など多数の記事で、世界の主要国の暗い将来について述べてきた。
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このような事実を眼前にすると、昨年12月17日公開「実は『世界経済破滅』へのカウントダウンが始まっているのではないか?」という懸念が現実味を帯びてくる。 実際、昨年11月30日公開「習近平ですら吹っ飛ぶインフレの脅威…
2022年、世界『大乱』に立ち向かう7つのポイント」で述べたように、今年は「大乱」の年になると考えている。
それでは、我々にとってもっとも関心がある日本はどうなるのであろうか? それについては、昨年5月9日公開「日本の『お家芸』製造業、じつはここへきて『圧倒的な世界1位』になっていた…!」、同11月1日公開「日本の『製造業』、じつはこれから『黄金時代』がやってくる…!」、2020年4月14日公開「コロナ危機で、じつは日本が『世界で一人勝ち』する時代がきそうなワケ」などで述べてきた。 もちろん、世界が大乱に見舞われる中で日本だけが「無傷」でいられるということでは無い。それなりの打撃をうけるであろうが、「比較優位」であることは間違いない。
また、戦後日本は、冷戦が本格的に始まった1950年からバブルが崩壊した1990年頃までの約40年間、奇跡の経済成長を続けた。
そして、奇しくも1990年をはさんでベルリンの壁とソ連邦が崩壊し冷戦が終了した。 ちなみに、共産主義中国も1978年12月(中国共産党第十一期中央委員会第三回全体会議)からおおよそ40年間快進撃を続けた後「危機」に見舞われている。
日本はバブル崩壊で経済的大打撃を受けたものの「国家存亡の危機」には至らなかった。しかし、中国の場合はどうであろうか。 また、1990年以降の日本を象徴するのが「失われた
●十年」という言葉である
。1990年代以降、米国、中国、新興国を始めとする国々が繁栄する中で日本は「1人負け」であったと言ってもよい
1人負け」が「1人勝ち」に
だが、その「1人負け」が「1人勝ち」になると私は見ている。前記「韓国は日本を追い抜く前に朝鮮半島ごと沈没してしまいませんか?」の2ページ目「『転換点』が大事」で机上のクウロニスト(机上の空論を述べる人)は、過去の延長が未来につながる時には調子が良くても、「転換点」で大きく予想が外れる事情について述べたが、今まさにそれが起こっているのである。 なぜ「日本以外全部沈没」になるのかは、昨年2月28日公開「1400年の歴史、世界最古の会社が日本に存在している…!」が端的に示している。 日本はローマ帝国や米国のように世界の覇者になったことはないが、どのような国も達成できない1400年の歴史を持っている。 巷で「中国4000年の歴史」というが、これはプロパガンダと言ってよい。例えば、元時代の中国はモンゴルの植民地の一つであったし、清朝など大多数を占める漢民族ではない「異民族」に長年支配されてきたのが中国の歴史である。それぞれの王朝(政権)同士のつながりはほぼ無い。特に、中国共産党政権は過去の歴史を全否定して成立したから、まったくの「新参帝国」である。 例えば、ファラオが支配していた古代エジプトと現在のイスラム国家を結び付ける人々は少ないと思うが、現在のエジプト人は古代エジプト人の末裔である。中国大陸についても同じことが言えるのだ。
日本の独自性が優位に働く
オールドメディアなどは、日本の独自性を「ガラパゴス」などと揶揄する。しかし、そのガラパゴスと揶揄される日本の独自性こそが、日本の1400年の歴史を紡いできたのだ。 島国ということもあるが、独自の高度文化を暗黙知で継承してきたことが日本の強みである。 日本の文化は「暗黙知」が基本だから、「暗黙知」が理解できない人々には「何が何だかさっぱりわからない」ということになる。だから彼らは批判ばかりする。 特に、日本をガラパゴスと揶揄する人々は、暗黙知が理解できないだけではなく、「海外のことを知らない田舎者」である場合が非常に多い。彼らこそが「ガラパゴス」なのだ。 例えば、北朝鮮に招待されて平壌の街並みを歩いたとしよう。張りぼてだが立派な外見を観て、「北朝鮮は素晴らしい近代国家だ!」とほめそやしたら笑いものになるだろう。 同じように、オールドメディアの常套句である「『諸外国』に比べて日本は……」の「諸外国」は、張りぼての平壌の街並みと同じである。彼らは海外の本当の姿を知らない(あるいは意図的に隠ぺいしている)から、ビルの裏側から写真は撮らずに、真正面のベストアングルのショットを撮影し、それと比べて「『諸外国』に比べて日本は……」という記事を書くわけである。 もちろん、日本は「反省し過ぎ」と思うくらい自分に厳しく切磋琢磨するから1400年も続いてきたのだが、オールドメディアのプロパガンダ(無知)に騙されて、誤った方向に向かうのは避けるべきである。 オールドメディアなどがガラパゴスと揶揄するものこそ、日本の「独自性」であり、これからの時代に「1人勝ち」していくための最大の武器なのだ
日本沈没」は「日本が沈没しない証」
これまで述べたように、「日本がダメで海外がすごいという人は、井の中の蛙のガラパゴス脳」である。 もちろん、バブル時代のように「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と叫んで浮かれろというわけではない。日本にも改善すべき点は多数ある。だが、やたらに卑下する必要は無い。日本の素晴らしさは1400年の歴史が証明している。 オールドメディアに限らないが、「日本がダメで海外がすごいという人」のほとんどは、海外のことを知らない超ドメ(スティック)人間だ。彼らが知っている海外というのは、美しく演出された風景写真にしか過ぎない。 例えば、海外赴任、海外駐在を経験した人々も、大概の場合日本人社会で暮らしていて、現地の実態には疎い。つまり彼らは「よそ行きの恰好をした」現地の人々だけを見ていて「パジャマ姿で寝転んで鼻の穴をほじくっている」彼らを見たことがないのだ。 要するに、ゴミだめでも、一流の写真家が撮れば美しい風景に見えるということである。 さて、1973年に刊行された小松左京氏の小説「日本沈没」を知らない読者はいないだろう。もはや「神話」と呼んでもかまわない領域に入りつつある。 確かに、日本は火山国であるというリアリティの影響はある。だが日本人は「日本が沈没したらどうしよう」と常に考える民族なのだ。だから、「日本沈没に対する備え」に抜かりが無い。したがって、日本は結果として沈没せずに1400年も続いたのだ。 この特質が「逆境に強い日本」を作り上げ、欧米の植民地にされる脅威の中で明治維新を成し遂げ、第2次世界大戦の「無条件降伏」から不死鳥のようによみがえったのである。 それに対して、「諸外国」では自国が沈没することなど心配しないから、結果として「沈没」するというわけだ。 つまり、日本人は「日本沈没」のことをいつも考えているから危機に強いのだ。もっとも、少々心配し過ぎだが…
日本以外全部沈没」
筒井康隆氏の短編小説「日本以外全部沈没」は、「日本沈没」に対するパロディだ。 この小説では、日本に殺到した人々が大人しく日本人の言うことを聞くが、実際にはそのようなことはあり得ないだろう。 海外勢のうちもっとも野蛮な人々が、武力・暴力で日本を乗っ取るであろうことは歴史を振り返ればすぐにわかることだ。 「日本以外すべて沈没」すれば、「黄金の国ジパング」の争奪戦が始まるかもしれない。事実、幕末に日本は欧米の植民地にされる寸前であったのだ。軍隊を持たない(自衛隊はある)のに豊かな日本は、海外の沈没しつつある国々の餌食になりかねない。 また、武力だけではない。IT覇権問題、外国人参政権などの形で、目に見えない浸食も始まっている。
日本の株式は割安?
12月26日に、日本経済新聞は「世界1000社の時価総額、米は初の5割超 日本は5%未満」と報道した。この記事の趣旨は「米国はすごい! 日本は駄目だ……」というものだと思われる。 しかし、このデータをそのように解釈すべきではないと考える。この記事の中で、「中国企業は当局の規制強化を背景に低迷した」とある。しかし、「韓国は日本を追い抜く前に朝鮮半島ごと沈没してしまいませんか?」の冒頭ページで、日本経済新聞社系の日本経済研究センターが2020年12月に「中国GDP、28年にも米超え 日経センター予測」として登場したにも関わらず、昨年12月には「米中GDP、逆転は2033年に後ずれ 中国の民間統制で(日経センター予測)」と、たった1年で大幅に後退している事実に触れた。 まさに、これまで述べてきた「転換点」を見誤った典型例だと考えられる。私の目から見れば、米国企業が時価総額上位1000社のうち、合計金額で5割を超えたことがバブルのピークの証明であり、明らかな「転換点」である。 また、日本企業が5%を割り込んだことは逆の意味で「転換点」であり、(比較において)割安に放置されていた日本企業が再評価されるのは間違いがないであろう。 もちろん、世界の「大乱」の中で日本だけが無傷ということはありえない。昨年11月17日公開「『GAFA没落』の可能性のウラで、日本の『製造業』に超期待できるワケ」2ページ目「バブルの終焉は突然やってくる」で、バフェット(バークシャー)が現金比率を高めていることについて触れたが、同様に私もかつてないほど現金比率が高い状態だ。 結局、日本の株式市場でも「大乱」に伴って乱高下は避けられないはずだが、超長期的展望において私の中にあるイメージは「日本以外全部沈没」である。
大原 浩(国際投資アナリスト
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