民主主義サミット」9日開幕 バイデン政権が汚職対策戦略発表

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毎日新聞

バイデン米大統領

 

 

 バイデン米大統領は9、10両日、世界約110の国・地域の指導者らを招いた初の「民主主義サミット」をオンライン形式で開催する。これに先だち米政府は6日、サミットの主要テーマの一つである「汚職との闘い」に関する戦略を発表。米政府高官は近く、汚職や組織犯罪、人権侵害など「民主主義をむしばむ行為」に関与した外国政府高官らを制裁対象に指定する方針も明らかにした。

 

  【民主主義サミットに対する米中台の主な発言】  

 

米政府が汚職対策の戦略をとりまとめるのは初めて。

 

戦略や制裁をサミットの参加国・地域と共有し、

同調を促すことで国境を越えた犯罪に効果的に対処する。

 

 

専制主義的な国に汚職がはびこるケースが多いことから、透明性の高い仕組みを構築して汚職を防止し、民主主義の優位性を確保する狙いもある。  

 

汚職対策の戦略では、

同盟国やパートナー国と連携し、

米国や国際的な金融システムを悪用した資産の隠蔽(いんぺい)、資金洗浄への対応を厳格化する。

 

不動産取引の透明性を高めたり、

 

国際機関を通じて汚職防止体制の基準を強化して

 

各国に実施するよう促したりする。

 

 

米政府による専門家の他国への派遣や、

調査報道に携わるジャーナリストの支援もする。

 

  サミットでは「専制主義に対する防衛」や

「人権尊重の促進」も主要なテーマとして掲げられている。

 

日本や欧州主要国が招待されている一方で、

 

バイデン政権が専制主義と批判する中国やロシアは招かれていない。

 

民主的な理念を共有する国・地域を結集し、中露に対抗する思惑もある。

 

  特に中国が領土とみなしている台湾が招待されたことに注目が集まっている。

 

バイデン政権は、新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込んだ台湾を「民主主義のサクセスストーリー」(ブリンケン米国務長官)として重視しており、台湾支援を明確化し国際機関の活動などへの参加を後押しする意向だ。 

 

 一方で、米政府による招待の基準は明確ではない。

 

強権的な政治手法で批判されることもあるフィリピンやインドは招かれたが、

米国と同じく北大西洋条約機構(NATO)の加盟国のトルコやハンガリーは招待されなかった。

 

 

  サミットには市民団体や慈善団体、民間企業も参加する。

 

1年後をめどに2回目が対面方式で開催される予定になっている。

 

【ワシントン鈴木一生】  

 

◇中国、米国の民主主義を批判

  中国は、台湾が米国主導の「民主主義サミット」に招かれたことに「断固として反対する」と強く反発。サミットを前に周辺国との会談で米国の民主主義を批判し、対抗姿勢を示している。また「中国式の民主主義」が発展していると独自の主張を展開する。  中国外務省は4日、王毅外相とカンボジアのプラク・ソコン副首相が会談し「単独主義や覇権の道に反対する」ことで一致したと発表した。カンボジアは民主主義サミットに招かれておらず、中国側がさらなる関係強化のため近づいた形だ。  サミットに招待された国々にも積極的に接触を重ねる。王氏は3日、パキスタンのクレシ外相との電話協議で、サミットについて「民主主義の価値を乱用する行為であり、世界を分断させる。民主主義を議論するなら国連の場で行うべきだ」と訴えた。5日にはインドネシアのルフット海事・投資担当調整相と会談。中国側は「欧米の(民主主義の)基準を無理に押しつけるのではなく、各国の状況に応じて推進すべきだとの考えで一致した」と発表した。  中国はサミットを前に、米国の民主主義への批判も強めている。中国外務省は5日、「米国の民主状況」と題する文章を発表。米国の民主主義は「金権政治」に陥り、「1人1票」を唱えながらも実際は「少数のエリート層による統治」となっていると指摘した。今年1月の米連邦議会乱入事件や、昨年5月に黒人男性が白人警官に暴行を受けて死亡した事件などを例に挙げながら、「米国は民主主義の優等生ではない」と批判した。  これに先立ち、4日には「中国の民主」と題する2万字超の白書を公表した。「ある国が民主的であるかどうかは、その国の人民が判断するものであり、外部が評価することではない」と米国を非難。人民代表大会や政治協商会議といった組織を有する中国の政治制度の有効性や、党の指導下で追求してきたとする中国独自の民主主義などを説明し「中国では民主主義の概念が人々の日常や生産活動に深く根付いており、社会が活気づいている」と強調した。  一方で白書は、強権的な政治体制を意味する「専政」にも言及し、「民主と専政は矛盾しない。少数をたたくのは大多数を守るためであり、専政を実践することは民主主義を実現するためだ」と指摘した。中国政府が主張する「民主」は、あくまで中国共産党による一党体制を前提としている。【北京・岡崎英遠】  

 

 

◇蔡総統は出席見送り

 中国に配慮か  台湾の蔡英文総統は民主主義サミットへの出席を見送り、側近の蕭美琴(しょうびきん)駐米代表(駐米大使に相当)とデジタル担当相の唐鳳(オードリー・タン)氏を出席させる。中国を過度に刺激することを避けたとみられる。  台湾ではかつて、現在の野党・国民党が独裁体制を敷いたが、1996年に初めて民主的な総統選を実現した。民主化運動の一翼を担った活動家らが結党したのが今の与党・民進党だ。その後は国民党との間で政権交代を繰り返し、民主主義が定着している。  中国から強い圧力を受け、国際社会から孤立しがちな台湾にとって「民主主義カード」は中国に対抗する強力な武器だ。  サミットでは民間枠で香港出身の民主活動家、羅冠聡氏(28)=英国在住=も講演する見通し。香港の民主化運動は中国の統制強化によって抑え込まれた。台湾では「中国に統一されれば香港のようになる」との危機感が募る。蔡政権はサミットで「民主主義のとりで」としての台湾の価値をアピールする構えだ。

 

【台北・岡村崇

 

 

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