香港を“脱出” 幼い子を連れ日本へ移住したある家族 中国の統制強化に“恐怖と怒り”
Nippon News Network(NNN)
香港に生まれ育ったある家族が、先月、幼い子を連れて日本へと移り住んだ。中国の統制が強まる香港では、将来への不安から外国に移住する人が急増している。
■香港から日本へ
移住を決断 香港在住の祁(き)さん(35)は子どもの頃から日本アニメが好きで、大学では日本語を勉強。娘のエブリンちゃん(4)にも日本語を教えている。祁さんと夫はエブリンちゃんを連れて日本に移住することを決断。香港と娘の将来を考えた結果だという。 移住決断のきっかけとなったのは、2年前に地元のショッピングセンターで目にしたデモ鎮圧の光景。若者たちが統制を強める中国や香港政府に対して抗議活動を行なっていたところ、武装した警官隊が突入。拘束者も出た。 さらに去年、デモなどを禁止する「香港国家安全維持法」が施行されると、当局は周庭氏などの民主活動家を次々と逮捕。買い物中にデモに出くわしただけの12歳の少女を「不審な動きをした」という理由で押し倒すなど取り締まりはエスカレートしていった。 1997年にイギリスから返還されて以来、「一国二制度」によって保障されてきた香港の「自由」は急速に失われていった。 「悲しい。これはもう香港ではない。自由が制限される可能性が高い」と祁さんは語る。 祁さん夫妻は変質する香港社会に恐怖と怒りを感じ、娘のために、自由がある日本で暮らすことに決めたのだった。 夫は去年11月に単身日本に渡り就職。祁さんとエブリンちゃんはコロナ禍で渡航が延期となっていたが9月に日本のビザが発給され、10月にようやく合流し日本での生活を開始した。 香港では将来への不安から外国に移住する人が急増していて、去年「国家安全維持法」が施行されてからの1年間に流出した人は約9万人にのぼっている。
■香港と中国本土
進む経済的一体化 一方で中国本土に移住する香港市民もいる。香港に隣接する深センでは、市が香港から移住して働く人に家賃を補助したり、最大で1億7000万円の運営資金を給付したりするなど、圧倒的な経済的メリットを示し香港市民の心をつかもうとしている。 香港と深センの境界では香港側に深センのビル群が迫り、香港を飲み込んでしまうかのような光景が広がっている。中国政府は、香港、深セン、マカオ、広州を含むベイエリアを「大湾区」と名付け経済面で一体化させる構想を進めている。 香港が中国本土に飲み込まれてゆく大きなうねりの中、そこに住む香港市民の生活が翻弄されている。
※詳しくは動画をご覧ください。(2021年11月29日放送「news every.」より