朝、3分間、長波長の赤い光を目に当てると、加齢で低下した視力が改善する」との研究結果

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ニューズウィーク日本版

──赤い光を2週間にわたって毎朝3分間見つめる実験を行ったところ、コントラスト感度が被験者全体で14%改善した

「低下した視力の改善には、朝の時間帯に光を当てることが重要」

 

 

 

ヒトの網膜の細胞は、40歳くらいから老化しはじめる。その一因として、様々な生命活動で必要なエネルギーの貯蔵・利用にかかわるアデノシン三リン酸(ATP)を合成するミトコンドリアが加齢に伴って減少する点があげられる。網膜の視細胞は多くのエネルギーを必要とし、ミトコンドリアが密集している。そのため、他の器官よりも速く老化し、光受容体機能の低下をもたらす。

 

■ 赤い光を2週間にわたって毎朝3分間見つめると、14%が改善 英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームは、波長650~900ナノメートルの長波長の光によってミトコンドリアのエネルギー産生力が向上する点に着目し、長波長の赤い光を用いた網膜の視細胞の機能改善について研究している。 マウス、マルバナバチ、ミバエの実験では、波長670ナノメートルの赤い光を目に当てると、網膜の視細胞の機能が著しく改善した。また、28~72歳の24人を対象とする実験では、懐中電灯が発する波長670ナノメートルの赤い光を2週間にわたって毎朝3分間見つめさせた結果、コントラスト感度が被験者全体で14%改善し、38歳以上では22%改善した。 

 

 

■「低下した視力の改善には、朝の時間帯に光を当てることが重要」 研究チームはさらに、光を当てる時間帯によって改善効果が異なるのかについても調べ、2021年11月24日、その研究成果を「サイエンティフィック・リポーツ」で発表した。 34~70歳の20人を対象に、朝8~9時の3分間、波長670ナノメートルの赤い光を見つめてもらい、その3時間後にコントラスト感度を検査した。その結果、コントラスト感度が平均17%改善。年齢別でみると、38~49歳では14%、50~59歳では20%、60歳以上では19%改善した。また、そのうち10人を対象に1週間後、再びコントラスト感度を検査したところ、その効果は持続していた。一方、昼12~13時に3分間、波長670ナノメートルの赤い光を見つめた6人では、コントラスト感度に変化がみられなかった。 研究論文の責任著者でユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのグレン・ジェフリー教授は、「低下した視力の改善には、朝の時間帯に光を当てることが重要」とし、「これまでのハエの研究で、ミトコンドリアの活動パターンは変化しており、午後の光に対して同じように反応しないことがわかっている。今回の研究結果でもこの点が裏付けられた」と述べている。

松岡由希子

 

 

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