名門ハーバード大学の白人生徒の43%が“特別枠”で入学していた
白人生徒の43%が「特別枠」で入学
Photo: Adam Glanzman/Bloomberg via Getty Images
ハーバード大学は「そんなに賢い生徒ばかりの大学ではない」。英紙「ガーディアン」は11月17日、そんなオピニオン記事を掲載した。
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理由は、「ハーバード大学に在籍する白人生徒の、じつに43%が『特別枠』で入学しているから」だ。 この「特別枠」を使った入学方法は大きく4つある。 大学側からスカウトされた「アスリートの枠」、近親者に卒業生がいる「レガシー枠」、学部長の「推薦リスト枠」(主に親がお金持ちか有名人、またはその両方である場合で、多大な寄付金を贈与した人に与えられる枠)、そして、大学に在籍する「教職員の子供枠」だ。 要するに、日本で言うところの「コネ」や「裏口」入学だが、アメリカでは、特に違法行為としては認識されていない。ただ、“別の方法を使って入学したまで”である。 この枠で入学した生徒を人種別でみると、圧倒的に多いのが白人。対照的にアフリカ系、アジア系、ヒスパニック系の非白人は16%未満となっている。 もちろん、特別枠の学生のなかにも、“表門”から入ろうと思えば入れたであろう優秀な生徒がいないわけではないようだ。だが、75%は表門からの入学は無理だっただろうと同紙は指摘する。 特別枠の存在が当たり前になっているアメリカでは、もはや大学入試における「表門」の定義が曖昧になっている。 だが、仮に、大学進学のための学力試験「SAT」や「ACT」といった標準テストの得点や、課外活動での功績など、本人が持つ知性や学力で入学するのが「表門」だとすれば、ハーバード大学の全校生徒のうち、少なくても3分の1が、「突出した運動能力、もしくは親の力がなければ表門からは入学できなかった学生」である。 このことから、「ハーバード大学はそんなに賢い生徒ばかりの大学ではない」と述べているのだ。
競争は熾烈になっているが、特別枠なら合格率も7倍に?
2021年4月に発表されたハーバードの合格率はわずか3.43%。前年の4.5%から減少し、「歴代で最も狭き門だった」と、報じられていた。 しかし、前述の通り、この「狭き門」を知性や学力で突破した生徒は70%以下。白人に限って言えば、表門の通過者は57%しかいない。 米経済アナリストのスティーブン・ラトナーが2019年に発表したデータによれば、ハーバード大学の狭き門(表門)の合格率は約6%であるのに対し、レガシー枠になると志願者の合格率は34%に上昇。 学部長の推薦リスト枠(両親がお金持ちか有名人、またはその両方である場合)の志願者は42%、教職員の子供枠は47%、そして、同校のスポーツ推薦枠の合格率はダントツの86%となっており、表門と比較して、かなり入学しやすくなっている。 ラトナーによれば、この特別枠の存在が、表門から入学する(しかない)生徒の合格率を圧迫している節もあるという。 彼によれば、学部長の推薦リスト枠を使った入学者は全体の10%、スポーツ推薦枠は12%、そして、レガシー枠はさらに多い37%で構成されており、これだけで57%を占めている。 ただし、この合計数には「二重のカウントも含まれている(たとえば、多額の寄付金で学部長の推薦リスト枠に入っていながら、近親者に卒業生がいるためレガシー枠にも入っているケースなど)」ため、これらの枠で入学した生徒数自体は57%より少ないそうだ。 とはいえ、特別枠の中でもっとも割合の大きい「レガシー枠の志願者の約70%は白人だ」と、「ガーディアン」は強調している。 「白人で近親者がハーバード卒で寄付もしている場合、このいずれにも該当しない志願者と比べて合格率は7倍だ」 ハーバード大学をはじめ、エリート校に入学する“ゲーム”は、白人で裕福でコネのある人が有利という歪んだルールが存在する、不平等なゲームであるのは今に始まったことではない。 だが、その歪んだルールが存続し続けた結果、表向きの合格競争率がどんなに高くなっても、蓋を開けてみれば、3分の1程度は「たいして頭の良い人たちではない」。そのことを知っておいて損はないだろう。
COURRiER Japon