自分の体のことは自分で決める・抗体あるのに…NY市職員の接種義務化でデモ、混乱も

読売新聞オンライン

ニューヨーク市で、市の接種義務化に抗議する消防局や市の職員ら(28日)=ロイター

 

 

 

 【ニューヨーク=寺口亮一】

 

米ニューヨーク市が新型コロナウイルスワクチン接種を全職員に義務化し、

29日夕に接種期限を迎えた。

 

職員の一部が接種を拒否するなどしており、

来月1日から無給休暇扱いになる見込みだ。

 

消防や警察で人手が不足し、市民生活に影響する事態が懸念されている。 

 

 

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「強制するな」

 「自分の体のことは自分で決める!」。同市マンハッタンの市長公邸近くで28日、義務化に反対するデモが行われ、市職員らが気勢を上げた。米メディアによると、消防士ら数百人が参加した。

 

 ビル・デブラシオ市長が20日に全職員の接種義務化を発表後、ニューヨークでは抗議デモが続いている。25日の市役所前のデモには数千人が参加。消防局に19年間勤めるエイドリアン・ウィリアムズさん(43)は「長期的な副反応が心配だ。強制することではない」と憤った。

 約1年前にコロナに感染したという市の男性職員は「私には抗体がある。家族もいるのに、なぜ無給にされるのか」と主張した。

接種率アップ

 接種義務化は、伸び悩む接種率向上が狙いだ。9月下旬に接種が義務化された市の教職員らの接種率は9割を超えた。これに手応えを感じた市当局は、義務化の対象を警官や消防士を含む全職員に広げた。発表時点で3割近い約4万6000人が未接種で、市は健康や宗教上の理由がある場合を除き、少なくとも1回接種を受けるよう求め、接種しない場合は無給休暇とするという厳しい措置に踏み切った。定期的に陰性証明を提示しても、接種義務は免除しないという。

 これに対し、警官や消防の職員組合などは猛反発。接種はある程度進んだものの、米メディアによると、期限の29日夕時点の接種率は警察84%、救急を含む消防77%、ゴミ収集を担う衛生局76%にとどまった。来月1日以降、多くの職員が無給休暇になりそうだ。

 消防や警察は、人員の配置転換などで影響を最小限に抑える考えだ。それでも市は、消防署の最大2割を閉鎖せざるを得ず、救急車も2割が稼働しない事態を想定する。消防関係者は「火災などの現場到着が遅れる可能性もある」と話す

 

 

 

各地で反発も

 接種の義務化は全米の他の都市や各国でも行われているが、反発も招いている。米国では連邦政府やシカゴ市などで職員が対象で、シカゴでは警官組合が市を相手に訴訟を起こした。

 欧州では、フランスが飲食店の入店などで接種完了を示す「衛生パス」を、イタリアでは全ての職場で「ワクチン証明書」などの提示をそれぞれ義務付けたが、いずれも「自由の侵害」とする抗議デモが起きた