これは“一生モノ”のスピーカー、Amphion「Argon7LS」のサウンドは唯一無二だ

 

音楽再生・映像鑑賞の質を向上

 

折原一也

 

2021年09月24日

日本への上陸以来、確かなサウンドクオリティによって評価を高めているフィンランド発のスピーカーブランドAmphion。その中核をなすラインナップが「Argonシリーズ」だ。

ブックシェルフやセンタースピーカーも揃える同シリーズの最上位機種となるのが、フロアスタンディングスピーカー「Argon7LS」。約72万円(税込)という値付けはおいそれと手が出せるものではないが、だからこそ一生涯付き合っていくことを考えたい。そこで、アナログからハイレゾ、映像鑑賞やゲームプレイに至るまで、どのようなリスニングシーンでも素晴らしい体験を楽しませてくれるのか、その実力をチェックしよう。


■豊かなリスニング体験を提供する「Argon7LS」数々のこだわり

まずArgon7LSの構造だが、トゥイーター×1、ミッド・ウーファー×2の2ウェイ方式。ユニットは「SEAS」製をカスタマイズしたもので、トゥイーターを中心に上下をウーファーで挟み込むよう配置した仮想同軸構成を採っている。1インチのチタンドームトゥイーターには、Amphionの個性でもある独自形状のウェーブガイドを搭載。加えて6.5インチのアルミニウムウーファーと、背面部に備えられたパッシブラジエターによって、豊かで端切れの良い低音再生を実現する。


背面部に備えられたパッシブラジエーター


独自のウェーブガイドを搭載するチタンドームトゥイーター


トゥイーターとウーファーのボイスコイル配置を合わせることで位相を整合、クロスオーバー周波数は低めの1600Hzに設定されるなど、自然な音の繋がりを志向したモデルといえる。


6.5インチのアルミニウムウーファー


シングルワイヤリング接続に対応


北欧ブランドのスピーカーであること、そして生活空間を向上させてくれるような細身で上質なデザインからは、そのサウンドを「ナチュラルで自然派」と想像するかもしれない。だが、まず共有しておきたいのは、Amphionの類稀なるサウンドキャラクターだ。僕の評価はむしろ、情熱的かつ低音の量感もある肉感派。あえて例えるなら楽器に近いような、唯一無二の個性のあるサウンドなのだ。


スタンダードカラーは3色。左からフルホワイト、ホワイト、ブラック(719,400円/ペア・税込)


ウオールナットもラインナップ(767,800円/ペア・税込)


■音楽再生で際立つ声の存在感、空間表現力

実際に、様々な音源で聴いたサウンドの詳細をお伝えしよう。まずはハイレゾ音源で、宇多田ヒカルの「道」を再生する。印象的なのはボーカルの存在感で、ハスキーな歌声の深みが遺憾なく発揮される。ギターの音も生々しく迫る一方で、リズムの押し出しが強烈。宇多田ヒカルの日本人離れしたリズム感を、体で感じ取るような体験ができる。まさに音楽に体を委ねたくなるような、聴き惚れてしまうサウンドだ。

続いて、Amazon Music HDを用いたストリーミング再生。先ほどの「道」のリスニング体験からヒントを得て選んだ楽曲は、エド・シーラン「Shape of You」。現代的なリズム、その肉厚な響きの魅力的なこと。音のリアルさにハッとするようなエッジの立つアコギの、前後の空間すら感じるような立体的な響き、空間を漂うように浮かぶ歌声の生々しさと存在感。音数少ない楽曲だが、Argon7LSはその余裕ある表現で、まるで音の空間そのものを作り上げるような、オーディオとしての面白さを感じさせてくれる

 

 

 

 

 

最新楽曲としてYOASOBI「三原色」も試聴。豊富な音数をエネルギッシュで気持ち良く聴かせる鳴りっぷりだ。サウンドフィールドは広く鮮やか、一方でまるで目の前で歌っているかのような実存感も伴う。カジュアルな音楽リスニングでは、本機の持つパワフルさが良い効果を発揮してくれるようだ。


現代のライフスタイルに溶け込む様々なソースでサウンドをチェック


もちろん、オーディオ愛好家としてはターンテーブルによるアナログ再生も外せない。ダイアナ・クラールのアナログ盤「When I look in Your eyes」を聴いてみた。ウォームな音の再現で、その余韻も非常にふくよか。音の深みをじっくりと引き出してくれる。特にエレキギターの余韻、情感の深みが素晴らしい。Argon7LSの持ち味である歌声の朗々としたパワフルさ、空間を突き抜けるような実体感も味わえる。

■映像ソースにもマッチ! まさに「最強」の組み合わせ

続いてテレビとAVアンプ、UHD BDプレーヤーとの組み合わせで、映像ソースをチェック。クリストファー・ノーラン監督『テネット』を視聴した。

スピーカーはArgon7LSのみ、つまりステレオ構成だが、この組み合わせは、まさに最強。『テネット』は緊迫感を盛り上げる低音のBGMが用いられるが、その音圧感が強烈に空気を揺らし、試聴室を満たした。飛行機で滑走路に突入するシーンの爆音、そして轟音もサブウーファーいらずの大迫力。それでいて、音の高さ方向の表現にも優れる。映画鑑賞にもArgon7LSは抜群の対応力があると言って良いだろう。

映像ソースとして、今どきはストリーミングの動画配信も外せない。続いてNetflixで『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』を再生したが、こちらも極上の音響だ。プラハにエレメンタルズが現れ、スパイダーマンがミステリオと共闘するシーン。観覧車との距離感がわかるような繊細な音もしっかり出しつつ、バトルの爆音は画面サイズを遥かに超えるスケールで、余裕あるリッチな低音で満たしてくれる。音の移動感の繋がりも正確な点は、特に称賛したいポイントだ。

カジュアルな映像体験といえばYouTube。今や、YouTubeによる音楽MVの視聴は、映像のみならず音楽体験としても外せない。Official髭男dism「I LOVE...」のMVでは、まず強烈な楽器の存在感が濃密なサウンドフィールドを生み出す。ギター、ドラムの個々の音も、その存在を意識するほどにしっかりと響き渡る。そしてハイトーンな男性ボーカルは、そうした楽器の中でも質感を伴って聴こえつつ、その声色を固くすることなく、演奏として調和するトーンを保っている。Argon7LSには音楽再生のソースを選ばず、音楽で満たされた空間を生み出すパワーがある。

最後にリビングでの使用用途として、ゲーム機でも遊んでみた。タイトルには、ジャズを聴くゲームとも評されるNintendo Switchの『あつまれ どうぶつの森』をチョイスした。テーマ曲はまさにゆったりとしたジャズだが、トランペットの音の旋律もはっきりしていて、余韻も情緒的。特に中域から広がる音の繋がりがスムーズで、空間の再現性が非常に巧みだ。ゲームをプレイしていると操作音、効果音も付くが、それらを含め自然に聴かせてくれるのは大きな魅力だ。


以上が、様々な音楽・映像ソースでチェックしたArgon7LSの実力だ。ピュアオーディオスピーカーとして音楽リスニング用途での実力は相当なものだが、それに加え、事前に予想していた以上に映画など映像コンテンツとの相性の良さも確認できた。同一シリーズでマルチチャンネルを揃えられるのもArgon7LSの強み。AV環境の充実を、思い切って大型スピーカーの導入から始めてみるもの面白いだろう。


(協力:Wefieldウインテスト株式会社