「特別警報」待つことなく避難行動を 時間的余裕持った発表は困難

西日本新聞

住宅地が水に漬かり、ボートで救助される住民たち=14日午後1時50分ごろ、佐賀県武雄市北方町(撮影・星野楽)

 

 

 

 九州で11日に降り始めた大雨は、福岡管区気象台が「17日ごろにかけて広範囲で梅雨末期並みの豪雨に」と警戒を呼び掛けた通りの事態となっている。「もはや手遅れかもしれない」状況で発表される大雨特別警報が各地に出されている。いったん解除されても、また出る可能性もある。この警報を待つことなく避難行動を、と訴えたい。

 

 

 

  【画像】避難行動の例示 

 

 

 

 大雨特別警報は「数十年に一度の降雨量となる大雨」が予想されるときに発表される。これを踏まえて自治体が住民に出すのは「緊急安全確保」。屋外に出て避難所などに向かうのはかえって危険な状況なので、その場で何らかの命を守る行動を-という趣旨だ。「避難指示」をはるかに超えた異常事態と言える。  特別警報が出た時点で、背後に山や崖がある場所や川沿いなどの低層住宅にとどまっている人にとっては「逃げ遅れた恐れが強い。せめて自力で何とかして」と、酷な言われ方をしたように響くかもしれない。その場合は、屋内でも斜面と反対側のスペースや、すぐ近くの頑丈な建物に移るなどしてほしい。  特別警報の発表は、科学的な基準を念頭に観測データを踏まえて判断している。十分な時間的余裕を持って早めに出すのは難しい面があり、私たちがまだ寝ている時間帯に発表されるケースもしばしばだ。今回も佐賀、長崎両県に出されたのは午前2時すぎ、福岡県は同5時すぎだった。  大雨は数日続く見込み。これまで無事だった地域も油断はできない。「特別警報が出るのを待ってからでは遅い」を合言葉に、昼間のうちに必要な対策を終えてほしい。

 

(特別編集委員・長谷川彰