“抗体カクテル”承認でどう変わる?忽那医師に聞く

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テレビ朝日系(ANN)

 

 

 

 

厚生労働省は19日夜、新型コロナウイルスの軽症と中等症が対象の治療薬として、“抗体カクテル療法”を特例承認しました。軽症者用の治療薬の承認は国内では初めてです。 “抗体カクテル療法”は、ウイルスに作用する2つの中和抗体を組み合わせた点滴薬で、先月、中外製薬が承認申請を出していました。海外で行われた治験では、軽症や中等症の患者に投与したところ、入院や死亡するリスクがそれぞれ7割程度低下したということです。アメリカでは去年緊急使用許可が出ていて、トランプ前大統領が感染した際に投与されました。

 

 

 

 ◆去年の春から最前線で、新型コロナウイルス患者の治療にあたってきた大阪大学医学部・忽那賢志教授に聞きます。 

 

 

(Q.“抗体カクテル療法”が承認されたことについて、医療現場として、どのように受け止めていますか) これまで発症を予防するためのワクチン接種が進んでいますが、治療薬の選択肢は多くはありませんでした。だから、今回の承認で、良い選択肢が増えたというのは間違いないと思います。

 

 

 (Q.なぜ、2種類の中和抗体を使うのでしょうか) どちらも強い中和作用を持っていますが、今、世界中で、いろいろな変異ウイルスが出てきています。もし、片方の抗体が効かなくても、もう一つの抗体による効果が維持できると期待されています。

 

 

 (Q.どういう人に、どのタイミングで投与するのがいいのでしょうか) 早ければ早いほうが良いと考えられています。新型コロナの場合、発症してしばらくの間はウイルスが増殖していますが、1週間以降は、ウイルスの増殖よりも、過剰な炎症が起こることで病状が悪化します。抗体療法は、ウイルスの増殖を抑えることで重症化を防ぎます。できれば発症1週間以内に投与するのが望ましいと思います。特に、重症化するリスクの高い、高齢者や基礎疾患のある方に点滴をすることで、重症化を予防することが期待できます。 

 

 

(Q.この治療薬が承認されたことで、医療現場には、どのような変化があるとお考えでしょうか) いま、第5波で患者が増えてきていて、このまま重症者が増えてくると、病院のベッドが埋まり、また、医療機関がひっ迫する可能性があります。この治療薬を適切な人に、適切なタイミングで使用することができれば、多くの患者を軽症の段階で食い止めることができて、医療ひっ迫を回避できるかもしれません。

 

 

 (Q.この治療法が確立された場合、コロナは“怖い病気”ではなくなるということになるのでしょうか) まだ、いくつか課題があります。これは、なるべく早い時期に投与しないと効果が期待できません。だから、発症してから検査を受けるまで期間。そして、診断されてから治療までの期間をできるだけ短縮することが重要になってきます。また、もし、医療体制がひっ迫して、軽症者が入院できなくなった場合、この治療法は使えません。例えば、外来治療などでも点滴ができる体制を、今後は整備する必要があるのではないかと思います。

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