米ワシントン州で気温47度の異常気象 家に冷房がなく、図書館が「クーリングセンター」に…〈AERA〉

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シアトルでは6月28日、水に入って涼をとる人々が続出(写真:ハントシンガー典子)

 

 

 

 北米西海岸に、気温47度という酷暑が押し寄せ、死者も出ている。例年は涼しいシアトルでは、冷房がない家庭も多い。日本にもこんな酷暑がくるかもしれない。AERA2021年7月19日号の記事を紹介する。

 

 

  【写真】ポートランドでは、コンクリートの上に鉄板を置いただけで、目玉焼きができる

 

 

 

 

*  *  *  北米西海岸で記録的猛暑が続いている。ヒートドーム現象と呼ばれる熱波に襲われ、米オレゴン州の最大の都市ポートランドでは、6月28日に47度の最高気温を記録。同州では少なくとも63人が熱波の影響で死亡した。筆者が住む、カナダ国境に近いワシントン州シアトルは、普段は涼しい夏。だが、同日まさかの42度超え。州内の一部では47度以上に達したエリアもあり、1928年以来の最高気温記録塗り替えとなった。カナダのブリティッシュ・コロンビア地域などでは山火事も起きた。

 

 

 

 

 ■涼のため図書館を開放  シアトルでは冷房のない家が大半だ。この酷暑で警報も発令され、市内の図書館などは、冷房で涼をとるための「クーリングセンター」として開放された。日中に外に出ると、ドライヤーの熱風の中にいるような状態で、夜は夜で窓を開けても寝苦しく、汗だくで起きた朝もやはりうだるような暑さは変わらない。犬や猫も、ぐったり。植物は日焼けするか、しおれてしまうものも。まだまだコロナ禍の様子見や制限が続くシアトルで、店内飲食を提供する店は限られ、冷房の利いたカフェでまったり過ごすというワザも使えない状況だ。

 

 「簡易プールを出して、涼むくらいしかできません」と話すのは40代女性。

「地上ではとても寝付けないので、夜は地下の部屋に移動しました」。

 

60代女性は、「清掃の仕事中、依頼人が在宅でなかったので、せっかくエアコンのあるお宅だったのに、勝手に作動させるわけにもいかず、蛇の生殺し状態でした」。

 

20代女性は、母親の退職祝いのパーティーを開いた。

「扇風機を買って、人数分の扇子を用意しました。冷たい飲み物やアイスクリームもたくさん! キャンセルはご高齢のひとりだけで、皆さん汗をぬぐいながら祝ってくれて、ありがたかったです」と語る

 

 

避暑でホテル利用進む  週末はショッピングモールをうろうろするファミリーも続出。ただし、エアコンや扇風機はすでに品切れ状態。「エアコンを買っておいて本当に助かりました。猛暑日はエアコンのある部屋に缶詰めで乗り切りました」と、30代夫婦は話す。ただし、シアトルでエアコンと言えば、日本のような壁取り付け式ではなく、ガーガーと音のうるさい床置き式が一般的だ。それでもないよりはまし。  ホテルに避難する人も目立った。「森の中のホテルを予約し、ついでに近隣の旅行を楽しみました。街中にいるよりは若干涼しいし、久しぶりのひとり旅も満喫できてよかったです」と話す、40代女性も。シアトル中のホテルはエアコン難民による占拠でどこも満室。コロナ禍で長らく観光客を失い苦境にあえぐホテル業界にとっては、この酷暑が旅行やホテル利用を促進した面もあった。  筆者の息子は6月中旬から夏休みに入り、サマーキャンプと呼ばれる夏休み体験教室に通っている。しかし、警報が出ていた日は半日で終了に。いつも給食を近所の子どもに配っている学校からも休みの知らせが届いた。息子が通う空手教室は、急遽、通常クラスがキャンセルになり、夕方のビーチ空手教室に変更。サンセットの絶景で海につかりながら空手を練習する初体験ができ、息子は「水が冷たくてびっくりした。みんな、冷たい冷たいって声を上げていた」と話した。  実は例年のシアトルでは、夏でも海の水は冷たく、海に入って遊ぶのは子どもや学生くらいに限られている。それなのに今年は、一部のビーチには人が押し寄せていたようだ。  コロナ禍でほぼリモートワークのシアトルだが、出勤が必要な仕事であっても、今度は酷暑で休みになった人も少なくなかった。コロナに加え、異常気象でも、“非日常”が続いている。

 

(ライター・ハントシンガー典子)

 

 ※AERA 2021年7月19日