高級ブランド「シャネル」が採用! 山梨県の紙ストロー、一気に攻勢
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約30分間、飲料水に浸したままのフォレストロー。形状が崩れることはなかった(平尾孝撮影)
山梨県の特定非営利活動法人(NPO法人)が、
県有林の木材を使った紙ストロー事業を急拡大させようとしている。令和2年の実績に対し、今年は出荷と販売量を約4倍に拡大させる計画だ。森林の管理・保全の国際認証である「FSC」認証を得た唯一の国産紙ストローで、水に浸しても1時間以上耐えられるなど優位性を訴える。超高級ブランドの日本法人が採用したほか試験的な採用も増えてきたことから攻勢をかける。
■広がる採用 甲府市に拠点を置くNPO法人「マイプラ対策室」が手掛ける紙ストロー「フォレストロー」が大きな話題となったのは昨年8月。セブン&アイ・フードシステムズが運営するファミリーレストラン「デニーズ」が、県内店舗で採用したためだ。 全国のデニーズでは、ドリンクバーのストローを撤去し、要望のある来店客に生分解プラスチックを渡すようにしている。山梨県では、県の後押しもあり県内7店舗でフォレストローへ切り替えた。今年5月には、関東圏のデニーズでも試験的なフォレストローの使用が始まった。マイプラ対策室の藤原行雄理事長(68)は「関東で採用になり、さらにエリア拡大を期待する」という。 超高級ブランドでも採用されている。フランスを代表するブランド「シャネル」の日本法人だ。レストランなどではなく、同社の接客用で、飲み物を出す際にフォレストローを使用している。欧州企業では、地球温暖化対策や海洋プラスチック問題への取り組みを重視し、経営方針に位置づけている会社も少なくない。欧州系の自動車メーカーのディーラーでも同様の理由でフォレストローを採用した。 自治体や日本企業からの問い合わせも増えている。国連が掲げる「SDGs(持続可能な開発目標)」への対応を迫られているためだ。
■先行して拡大へ こうした追い風を受けてマイプラ対策室は、今年の出荷・販売量を、昨年の26万本の約4倍の100万本に引き上げることにした。生産能力には余裕があり、藤原氏は「採用先をさらに広げていきたい」と話す。 本来は展示会や産業展に出展して直接製品の良さを紹介したいところだが、新型コロナウイルス感染拡大でそういったイベントがほとんど中止になっている。藤原氏は「オンラインの活用が重要な課題」とみている。 マイプラ対策室は、山梨の木材を有効活用させるための団体「やまなし森の紙推進協議会」のメンバーが中心になって発足した。同協議会は、山梨県が平成15年に公有林としては全国初めて「FSC」を取得したことを受け事業化を図るための団体。FSC認証付きの印刷用紙、コピー用紙などを製品化してきた。 そうしたなか、27年にウミガメの鼻にプラストローが刺さっている映像が世界的に流れ、海洋プラ問題がクローズアップ。プラストローから紙ストローへのシフトが進むとみて、FSC認証がついた紙ストローをマイプラ対策室を立ち上げ事業化することにした。 紙ストローへのシフトは、外食産業などで進みつつあるが、すぐによれよれになってしまうなど試行錯誤が続いている。マイプラ対策室は、耐水性で優位なフォレストローを他社に先行して採用先を広げることで、山梨の木材による紙ストローを全国に広げたいとしている。(平尾孝