三菱といい、

 

東芝といい、

 

日立といい、

 

「甘ったれているから、こんな重大な、事件/故障が、起きるわけです」

 

信じられないことです!

 

 

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日立車両の亀裂問題とイギリスの「国鉄復活」

配信

 

ニューズウィーク日本版

<日立製作所の最新車両に亀裂が見つかったのと時を同じくして、行き過ぎた民営化とコロナ禍で傷ついたイギリスの鉄道が再国有化へ>

2016年5月、日立製作所の鉄道車両整備施設をキャメロン英首相と視察した安倍首相(いずれも当時、英ウェストロンドン)Anthony Devlin-REUTERS

 

 

 

[ロンドン発]

 

今月8日、イギリスで複数の日立製鉄道車両から亀裂が見つかった問題に合わせたかのように1994年以来の国鉄分割・民営化路線に終止符が打たれた。英紙によると亀裂は93編成中86編成の台車や車両本体で見つかり、長さは最大28.5センチに及ぶという。全車両を修理するのに1年半かかる。安全優先の鉄道事業は市場主義と相容れなかったとしてジョンソン政権は事実上の“国鉄復活“とも言える改革案を発表したのだが...。

 

 

木村正人(国際ジャーナリスト)】

 

 

 

  【動画解説】太陽系外惑星からの電波放射を検知した

 

 

亀裂が見つかったのは日立製作所が笠戸事業所(山口県)と英ニュートン・エイクリフの工場で製造した都市間高速鉄道800系シリーズと近郊輸送用車両385系。4月に台車の安定増幅装置ヨー・ダンパーに深さ最大15ミリの亀裂が発見されたのに続き、5月には車両本体を持ち上げるジャッキングポイント溶接部に深刻な亀裂が見つかった。800系シリーズは世界市場に殴り込みをかけた「鉄道の日立」のまさにフラッグシップと言える最新車両だ。 <「あり得ない亀裂」> 「営業運転開始からわずか約3年半で車両に亀裂が入ること自体あり得ない」と鉄道関係者は筆者に打ち明ける。台車の亀裂は日本では「重大インシデント」に当たる。800系シリーズは最高時速200キロで走る。台車の異常は重大事故につながるため、ロンドンとウェールズ、スコットランド間の運行はしばらく見合わされた。日立と列車運行会社、英政府は5月13日に列車が車両基地を出る前に徹底点検を実施するなどの復旧計画で合意した。 問題のあった車両の数や原因はまだ発表されていない。亀裂が入ったヨー・ダンパーの写真を見た鉄道関係者は筆者に「溶接が安全性の高い方法で行われていれば、施工した機械か材料の問題、または構造計算など設計が間違っているかだ。材料の品質に問題があるような気がする」と指摘した。アルミによる軽量化に無理があったのだろうか。自動車の車両でも日本と海外で生産した場合では品質に差が出ることがあるという。 800系には神戸製鋼所がデータを改ざんしていたアルミが使われているが、原因は今のところ藪の中だ。与党・保守党寄りの英紙デーリー・テレグラフによると、6月中旬までに列車の約85%は運行されるものの、全車両の修理を終えるのは早くても1年半後。このため代替車両として旧型のインターシティー125、225を運行させている。同紙は「労働党が夢見た75億ポンド(約1兆1560億円)の都市間高速鉄道計画(IEP)の大災害」とこき下ろす

 

 

高くついた日立の高速車両「AZUMA」

同紙によると、労働党政権も保守党・自由民主党の連立政権も列車リース会社に貪られていると不満を抱いていた。IEPでは契約金額が大きいこともあり、新型車両を製造する日立が主導する特別目的会社アジリティ・トレインズが列車を保有し、各運行会社にリースする官民連携(PPP)スキームが導入された。日立にしてみれば車両製造にとどまらず、約30年にわたる車両リースと27年半にわたる保守事業も一括して受注するビジネスモデルだった。 日立のニュートン・エイクリフ工場が開設した時、保守党のデービッド・キャメロン首相は「日立の巨額投資はイギリスの経済成長の強さを示している。新しい施設は雇用を生み出すだけでなく、次世代の都市間高速鉄道の車両を製造し、通勤者や家族の移動を改善する」と胸を張った。クリス・グレイリング運輸相は800系がデビューした際、遅延や空調の水漏れにもかかわらず「わが国で最もスマートで史上最高の車両」と称賛を惜しまなかった。 しかしイギリスのある鉄道評論家は「インターシティー125、225は1車両当たりの1カ月コストは1万8320ポンド(約282万3740円)だったのに比べ、800系の“AZUMA(あずま)“は3万2890ポンド(約506万9480円)だ」との厳しい見方をデーリー・テレグラフ紙に示している。「AZUMA」はロンドンとスコットランドを4時間半で結ぶロンドン・ノース・イースタン鉄道(LNER)の800系の愛称だ。 英政府は今回の亀裂で生じた損失を納税者が負担することがないようアジリティ・トレインズに補償を求めた。利益より安全が優先される鉄道事業は車両の保守や保線にかける労力やコストを惜しんではならない。しかしコロナ危機で乗客が激減している列車運行会社も、コロナ対策や経済対策で財政支出が膨らむ政府もアップアップしている。自分で蒔いた種は自分で刈り取ってもらうしかないというわけだ。 <コロナ危機と分割・民営化路線の大転換> 5月20日、グラント・シャップス運輸相は国営企業グレート・ブリティッシュ・レールウェイズ(GBR)を新設し、国鉄民営化によって過度に分割され複雑化したシステムを一つにまとめる改革案を発表した。列車の運行は引き続き民間企業が担当するもののフランチャイズ方式ではなく、GBRが鉄道網や駅などのインフラのほか鉄道事業の契約、運行計画や運賃の設定、発券などのサービスを一元管理する。 イギリスの国鉄は1994年以降の改革で運行とインフラを二分する上下分離方式で運営されるようになり、「上(運行)」の旅客輸送は25の列車運行会社に分割・民営化された。「下(インフラ)」の鉄道網や駅を提供しているのがネットワーク・レール社。車両はリース会社が運行会社に貸し出す仕組みだ。上下分離で同じ路線で運行する複数社が競争することで運賃は下がり、サービスが向上するはずだったが、現実は理想通りには行かなかった。 事業を細分化し過ぎた結果、設備投資と保守管理が不十分となり、2000年には老朽化したレールが破断、4人が死亡し、70人以上が負傷するというハットフィールド脱線事故の大惨事が起きている

 

 

 

 

他人事ではないコロナ禍の損失

シャップス運輸相は昨年1月、イングランド北部の運行会社ノーザンを再国有化すると発表。ノーザン社はインフラ投資が滞り、ダイヤの乱れ、サービスの低下、ストの多発、週末の運休が相次ぎ、利用者の不満が膨らんでいた。鉄道再国有化は最大野党・労働党の強硬左派ジェレミー・コービン前党首が唱えていた目玉政策だっただけに、サッチャー革命以来続いてきた保守党の「民営化」「小さな政府」路線の大転換を印象付けた。 今回の改革案ではサービスの差別化を図れなくなると反発する運行会社もある一方で、コロナ危機による利用者激減で首が回らなくなっていた運行会社にとっては渡りに船だったようだ。ネットワーク・レール社は2023年にGBRに置き換えられる。切符のデジタル化や温暖化対策を進める意味でも一元化は必要だった。 これに対して日本の国鉄民営化は地域分割で運行とインフラは一体管理している。黒字路線や駅ナカ事業で儲けた資金を研究開発やインフラへの投資に充て、サービス向上に努めてきた。JR各社は民営化されたと言っても「国民の交通インフラを守る」という良い意味での“国鉄魂“が受け継がれている。しかしコロナ赤字でJR北海道とJR四国の経営はさらに苦しくなっており、日本の民営化もイギリス同様、再編を迫られるかもしれない