結局、もとをただして、調査していきますと、

 

家庭環境、両親関連、貧困、

 

に、

 

いきわたりますので、

 

それを改善するには、

 

経済的に十分な社会福祉 (安全ネット・保護/支援/教育施設など)

 

特に経済的支援を、一日も、早く達成できるような国の仕組みを作ることです。

 

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だからヤクザを辞められない…意外と身近に存在する「青少年半グレ」の素顔

配信

 

現代ビジネス

写真:現代ビジネス

 

 

 

 筆者は、犯罪学の学究、ノンフィクション作家、更生保護の就労支援、保護司という様々な視点から、半グレと称される人たちの実態を見てきた。実際に、反社といわれる人たちから半グレを紹介され、街角で取材を敢行した。

 

 

 

 

 

  【写真】子殺しの翌日、「鬼畜夫婦」は家族でディズニーランドへ行っていた 

 

 

 

 

 そうした諸活動で得られた情報に基づき、2月17日、『だからヤクザを辞められない――裏社会メルトダウン』を新潮新書から上梓するに至った。  犯罪学的常識では、人は加齢と共に犯罪・非行から足を洗うものだが、昨今では、こうした傾向に変化がみられる。すなわち、暴走族などの青少年不良団から卒業して、就職、結婚して遵法的な市民になる代わりに、正業を持ちつつ犯罪や非行をダラダラと継続する者が存在する。いわゆる「半グレ」である。

刑務所の中の方が楽だった

 前回の記事でも述べたが、半グレは、当局から準暴力団とカテゴライズされている。しかし、暴力団のように明確な組織ではなく、匿名性を武器に、一般人に紛れて活動するため、その実態を把握することが難しい。  何より、今回、新書を執筆するに至った最大の理由は、半グレに至るハードルの低さに筆者が脅威を感じたからである。  闇バイトや先輩後輩の繋がりから、半グレの一員として特殊詐欺などの犯罪に手を染めると、銀行口座が作れないなどの厳しい社会的制裁を受ける。日本社会は、ワンストライクでアウトになる世の中である。そうした実態を知らずに犯罪を行い、人生を棒に振った人たちを、筆者は仕事柄、数多く目にしてきた。  しかし、彼らを(とりわけ、顔の見えない犯罪者グループに使い捨てにされる青少年を)十把ひとからげにし、社会の敵として排除するだけが本当に正義なのか。彼ら彼女らの背景や、置かれている境遇を一顧だにせず、負のラベリングから社会権を制約し、望みのない隘路に追いやることが社会にとって正しいことなのか。法務省が掲げる「再犯を防止し、誰ひとり取り残さない社会」づくりと矛盾が生じるのではないかという疑問が生じる。  特殊詐欺で少年刑務所に服役していた20代前半の青年の口から出た言葉に、筆者はショックを覚えた。  「出所の日を待ちわびたが、実際にシャバに出てみると、昔ツルんでいた連中も構ってくれない。刑務所の中の方が楽かなって思えた……軽い犯罪をして戻ろうかと思った」と

 

 

 

 

 

 

 

半グレ少年の背景

 以下では、先述した疑問を考える材料として、半グレとして活動した後、矯正施設を経て、筆者が社会復帰支援した青少年の背景の一部を具体的に紹介する。  半グレ少年(甲)  身長180センチ程度でやせ型。慢性肝炎の疑いがあるが、比較的健康体、知的に問題は見られない少年である。  性格特性としては、気弱で自分の能力や発言、行動に自信が持てずにおり、他者からの評価に敏感で、自分の考えよりも、その場の雰囲気に流されがちであり、主体的な行動が苦手な傾向がある。  この少年は平成12年生まれで、面談時点で19歳。8歳の時に両親が別居し、12歳の時に離婚している。少年は、この頃から問題行動が増え、夜遊びや学校の遅刻が指摘されている。14歳の時にはスーパーでの万引きやバイクの無免許運転で道路交通法違反を起こして補導された。  15歳で中学校を卒業。私立高校に進学したものの高校1年の夏休みに高校を中退。その少し前から働き出した飲食店のアルバイトも辞めている。  高校中退とともに、ガテン系の仕事に就くが、1年間に3つの事業所を転々とし、とにかく仕事が続かない。16歳の夏、財布の置き引きで補導され、短期の保護観察処分を受けている。  17歳の時、実母が再婚し、処分から半年後には保護観察良好とされ、観察解除となる。同じ頃、テキ屋で働きはじめ、賭け事で数十万円の借金を背負い、家出に至り、暴力団の事務所に出入りを始めた。その2カ月後、暴力団員と共謀して、キャッシュカード詐欺で逮捕されている。前後1カ月以内に、8件の特殊詐欺と窃盗に関与。12月には、少年鑑別所に入所し、第一種少年院送致となった。  半グレ少年(乙)  身長は170センチほどで、中肉の体形。健康上は特に問題はなく、知能指数も一般的なレベルである。  性格特性としては、不快な状況から安易に逃避しようとする構えが強く、自分の行動がどのようになるかという見通し、行動を制御する力が不足している。また、法的措置を受けても、自らの問題点を振り返って内省を深めることはせず、非行を繰り返しており、少年の規範意識は乏しいといわざるを得す、その問題性は相当根深いものであると診断されている。  この少年は、平成13年生まれで、面談時点で17歳。実母と義父の家庭にて生育しているが、家族関係の詳細は不明。小学校の頃、近所にあるショッピング・センターを遊び場としていた。そこに遊びに行くと、校区外の小学生も遊びにきており、そこで交友関係を広げたとのこと。こうした交友が、後の不良交友につながっていると考えられる。  非行をするようになったのは、中学1年の頃からであり「周りもやっているから、自分もやらないとダサいと思い、万引きをするようになった」とのこと。  中学2年の時、先輩のバイクを運転させてもらい、中学3年からは暴走行為をするようになった。暴走の回数は「数え切れないほど」であるという。この少年は車が好きなようで、15歳の時に、先輩の名義でレクサスを購入。後述するマリファナの売買には、車が欠かせなかったと述べている。  中学を卒業後、「高校には進学せずに仕事をした方がカッコいいと思い」建築作業員として就労するが、最初の職場を皮切りに、職を転々と変えている。  自身は薬物をやったことはないものの、ツイッターで時給がいい仕事を探していて、先輩から紹介されてマリファナの密売に手を染める。この密売は、都市の飲み屋街や山中で行われていた。少年は、いわゆるマリファナの「出し子」のような役割を担っていたという。シノギとしては、1日で数万の稼ぎになったと筆者に述べた。もっとも、この薬物の供給元は暴力団であったとのこと。  その後、16歳の時に、窃盗、住居侵入、道路交通法違反で逮捕され、保護観察処分を受けている。保護観察期間中、無免許による道路交通法違反で逮捕され、少年院に送致された。少年院を仮退院後、両親が本人の引き受けについて判断を迷っていたものの、実母を引受人とした生活環境調整とし、解体業の住み込み就労を選択するに至っている。

 

 

 

 

 

 

非行を卒業しない子どもたち

〔PHOTO〕iStock

 半グレ甲、乙の話を聴きながら、筆者は自分の少年時代と比べ、非行内容の違いに驚いた。昭和45年(1970年)生まれの筆者の時代は、喧嘩や万引き、バイク窃盗が主な非行で、薬物といえば、ボンドやシンナー位のものだった。  しかし、彼らは、マリファナを商い、それも大人の犯罪者と組んでおり、犯罪色がより強い活動を行っている。なお、甲、乙両名とも10代にも関わらず、広範囲に刺青を入れている。  大人が、それも暴力団が、彼らのような少年を巻き込んでシノギをしなくてはならないということに、少なからずショックを受けた。少子化で組員確保が難いということもあるのだろうが、筆者の時代には考えられないことである。  なぜなら、筆者の時代には、暴走族にも「卒業」があり、いい年をして非行を繰り返していることが格好悪いという「不良の文化」が存在していた。不良を極めたい者は暴力団になって行ったが、それは一部の者に過ぎない。  しかし、現在の半グレの青少年は、成人後もズルズルと犯罪を繰り返しており、卒業という概念が無いように見受けられる。そのあたりは、アメリカのハリウッド映画に出てくるような、(加齢とともに犯罪を断念することなく継続する)ユース・クリミナル・ギャングに似てきた感がある。  さらにいうと、半グレとはいえないが、半グレまがいのことをして問題となった大学生も散見される。  早大における大麻取締法違反容疑で「04年以降、7人が逮捕」された件(朝日新聞2008年11月18日)、同志社大生3人らによる、女性に好意を抱かせ風俗店にあっせんした事件(朝日新聞デジタル2019年2月2日)、日本大学イベントサークル3名による、退会希望学生恐喝事件(朝日新聞2019年1月10日)、大学生100人超が加担した持続化給付金詐欺(中国新聞2020年11月5日)などなど、枚挙にいとまがない。彼らの犯罪は半グレに引けを取らない。  こうした「犯罪の低年齢化」「犯罪のボーダレス化」という現象は、少子化の影響、暴排条例による締め付けで暴力団のシノギが苦しくなったというような事情があるのかもしれないが、暴力団や暴力団離脱者のアングラ化も視野に入れて、闇バイトの実態や特殊詐欺実行犯の低年齢化の背景を解明し、早急に対策を講じる必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

半グレは普通の子を巻き込む

 筆者が支援に携わった、不遇な家庭に生まれたとはいえ目先のカネに惹かれることで大人顔負けの犯罪に従事に至った青少年は、いずれも矯正施設に収容され、青春の貴重な時間を奪われ、社会的信用を失うという事態に陥っている。  犯罪は許されることではない。しかし、彼らは「無知ゆえに」「脇が甘かったゆえに」プロの犯罪者から利用された被害者とも見ることができないだろうか。これが「つまようじ」と評される使い捨て要員に分類される半グレの実態だ。  筆者は、次のことを繰り返し強調したい。「どこにでもいる不良が半グレになる」「半グレは普通の子を巻き込む」。

自分さえよければいい社会が半グレを生んだ

写真:現代ビジネス

 ただ、共通するのは、大人の半グレにしても、少年の半グレにしても、その半数以上に家庭に何らかの事情(たとえば、両親の離婚に起因する暴力的な養父の存在や、家庭の貧困やネグレクト傾向による怠学など)がみられる。つまり、人生のスタート地点でハンデを負っている点が、筆者の聞き取りや彼らの調査票からも共通して指摘された。これは、拙著で紹介する半グレだけに限ったことではない。  かつて筆者が更生保護就労支援所長として携わった少年の過半数が、家庭に何らかの看過し難い問題を有していたし、裕福でもなかった。何より、最大の問題点として、家庭に彼らの居場所が無いことが指摘された。  犯罪は社会を映す鏡である。居場所のない子どもを生み出す社会、他者に無関心な社会の土壌に加えて、自分さえよければいい、稼いだ者勝ち、捕まらなければセーフという社会の価値観が半グレという存在を生んだのではないだろうか(NHKスペシャル取材班『半グレ――反社会勢力の実像』2020年)。  現在は、少年でも、うっかり銀行口座の売買やオレオレ詐欺に関与すると、自分の銀行口座が作れなくなる現実ある。加害者であっても、一方で被害者でもある少年を、日本社会はどのように更生させてゆくのか。  その更生支援は「官」任せでよいのだろうか。ボランティアの保護司任せでよいのか。社会は、彼らにどのようなやり直しの機会を与えられるのか――我々は人生行路で躓いた人でも「生きづらさを感じない」、「社会的に排除されない」健全な社会を後世に引き継ぐ責任がある。やり直しを可能とする社会の実現を、真剣に考える時期にきているのではないだろうか。

廣末 登(ノンフィクション作家