変異ウイルス フランスやレバノンでも確認 10カ国超、世界各地で警戒
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マスクを着用してロンドン中心部を歩く男性=2020年12月19日、AP
新型コロナウイルスの新たな変異ウイルスは25日にフランスやレバノンでも初の感染例が報告され、報道によると、感染が発表されたのは10カ国を超している。変異ウイルスは従来よりも感染力が強いとみられており、感染が確認された国との間で渡航制限が課されるなど、新年を控えた世界各地で警戒が強まっている。
変異ウイルスは9月に英国で確認された後、今月に入り感染事例が急増している。主に欧州域内で同国からの移動に伴い感染が拡大している模様だ。 フランス保健当局は25日、英国から入国した男性が変異ウイルスに感染していたと発表した。AFP通信によると、男性は英国在住でロンドンから19日に入国した。無症状で、中部トゥールの自宅で自主隔離しているという。 ドイツ南部バーデン・ビュルテンベルク州当局は24日、英国から入国した女性が変異ウイルスに感染していたことが分かったと発表した。ロイター通信によると、デンマークでも24日までに英国型の変異ウイルスが33例見つかった。当局は「変異ウイルスの市中感染があることを示している」としている。 感染は中東にも広がり、レバノン当局は25日、英国からの入国者が変異ウイルスに感染していたと明かしている。 変異ウイルスの感染事例の急増を受け、英政府は20日、ロンドンなどで事実上のロックダウン(都市封鎖)に踏み切った。米ジョンズ・ホプキンズ大によると、英国では23日、1日の新規感染者数としては過去最多の3万9387人を記録するなど、感染拡大が続く。 一方、南アフリカでは英国と異なる変異ウイルスが確認された。そのため世界各地で英国や南アフリカからの入国規制を強化する動きが広がる。米政府は24日、英国から航空便で入国する乗客にコロナの陰性証明の提出を義務づけると発表した。 このような動きに対し、南アフリカのムキゼ保健相は同日、「国際的な人の移動を続けながら、変異ウイルスを抑え込むことは可能だ」と批判した。また、同国で確認された新型コロナウイルスの変異ウイルスについて「英国の変異ウイルスより感染力が高いという証拠はない」とも主張。英国のハンコック保健相は南アの変異ウイルスは英国のものより感染力があるとの見方を示しており、これに反論した形だ。 欧州疾病予防管理センター(ECDC)によると、英国の変異ウイルスは従来に比べて最大で感染力が7割増していると推定される一方、重症化率や致死率が上昇するという証拠はない。ワクチンが効かないという証拠もなく、米モデルナなど複数の企業は、開発したワクチンが変異ウイルスにも効果を発揮するとの見方を示している。
【川上珠実、念佛明奈(ベルリン)、平野光芳(ヨハネスブルク)