32歳の男がイーロン・マスクのおかげで億万長者に! テスラを信じ、支える人たちとは?
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電気自動車はないけれど……
PHOTO: Joe Raedle / Getty Images
米ミルウォーキーに暮らすブランドン・スミスは、テスラの電気自動車を所有している、わけではない。それどころか、彼の街にはテスラ社製の車が行き交う様子も見られない。 「僕は年に数千万円を稼ぎ出す男ではないし、プット・オプションについても知らないよ。ただ、テスラの株を買って、持ち続けただけさ。ただの1株も売り払ったことはない」 32歳の彼は、「ブルームバーグ・ウェルス」が行った電話取材でこう答えた。 彼が、人生最初の株式投資を始めたのは2017年の6月。1万ドル(当時約110万円)の貯金をテスラの株に注ぎ込んだ。 しかし、それだけでは終わらなかった。映像プロデューサーとして働くブランドンは、その後も給料が入るたびにテスラ株の「買い増し」を行った。 最終的に彼が投じた資金は、9万ドル(930万円ほど)にも及んだ。 テスラ社の株に投資する人たちの一部は、自らのことを「テスラネア」(テスラの株投資で財を成した“ミリオネア”)と呼ぶ。2020年の同社の株価高騰で、ブランドンもテスラネアの仲間入りを果たした。 彼によれば、持ち続けた株の含み益は100万ドル以上だという。 テスラ社の株価は今年に入り731%という大幅高を記録した。S&P500の構成銘柄に採用された時点の時価総額は史上最大の5000億ドル(約52兆円)超え。同社を、そして、創業者のイーロン・マスクを信じて株を持ち続けた個人投資家たちにとっては、大きく報われた1年になっただろう。
テスラ車でなく、「テスラ株」を買っていたら…
2018年の時点で、テスラ社初の大衆車「モデル3」を購入できる金額──5万3000ドル(550万円相当)を、投資に充てていたら? テスラ社の熱心なファンである友人のボブが新車のモデル3を購入して見せびらかしてきたとき、米メディア「CNBC」のコラムニストであるサム・ドーゲンはこう考えた。幼稚園の教師である31歳のボブにとって、5万ドルの買い物は控えめに言って安いものではない。 ドーゲンは、その代わりに5万5000ドルをテスラ株の購入に費やした。当時、一株当たり298ドルで購入した株は今では640ドル超えだ。 「車を買ってしまったら、どこにも投資はできないからね」と、「CNBC」の記事で、そうドーゲンは綴っている。 とはいえ、「テスラの株を今から買うべきか」という問いに答えるのは難しい。「結局、テスラとは何の会社なのか」という議論は、個人投資家や専門家のあいだで白熱しているからだ。そして、同社の評価額にも大きな相違がある。 ブルームバーグ・ウェルスでは、ゴールドマン・サックスが780ドルの評価を下しているのに対して、JPモルガンは90ドルほどの評価額だという例を挙げた。 しかし、多くのテスラ信者が、イーロン・マスクの野心に惹かれ、実際に同社のミッションや製品を愛していることは事実だ。新設された新しいスーパーチャージャー・ステーションについて情報交換を行う自主的なフォーラムは数知れず。テスラ社に関するポッドキャストもある。 また、テスラ社も個人投資家に対してオープンな姿勢を示し、四半期ごとの収支報告のなかでは一般の質問も受け付けている。 経済アナリストのロウラ・ゴールドマンは、「気候変動を憂う若い世代がテスラに向ける関心を見逃していた」と話す。 彼女自身は、金持ちな共和党の友人がテスラを買い始めた時に、株の購入を決意したそうだ。 「S&P500という指数の一部になってしまったのはあまり面白くないわ。テスラへの投資が面白いのはボラティリティや熱狂的な信者の存在もあるから。反体制派でいるのが良いの」 単なる電気自動車メーカーか、クリーンエネルギーの創造主か、それとも、テック企業なのか。 テスラが次に何をやるか、その予想は非常に難しい。テスラネアたちの今後の“出口戦略”が気になるところだ。
COURRiER Japon