地域施設トレンド 街のにぎわいを創出する屋根

旧小学校舎を増改築した研修所、木と鉄の混合折板屋根で施設一体化

ICIキャンプ 木のえんがわ[茨城県取手市] 設計:MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO、前田建設工業 施工:前田建設工業

原田 真宏
 

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO

 

 

 

「完成する・させる」。これを目的に、設計者もデベロッパーも施工者も日々努力している。ただ、国家的なプロジェクトから家族旅行の計画まで様々な現実を見るごとに、「完(まった)く、成る」などあり得るのだろうか。

 

 

 厳密に言えば、完全さや正しさは閉じた系を前提としている。開いた世界の中でまぼろしのような「完成」を標榜するよりも(あるいは「小さく閉じた世界での完成」よりも)、時間的にも空間的にも終わりのない「プロセス」として建築や都市を捉えたほうが、実り豊かなのではないか。私はそう考えてきた。

 

 

 そんなとき、前田建設工業から同社研修施設「ICIキャンプ」の共同設計を依頼された。

前田建設は創業100周年を機に、従来のゼネコンの閉鎖的な組織を開き、社会と協働する新しい建設業に向かおうとしている。

 

 

 

ゼネコン施設に外部設計者を起用

 社内に設計部門がありながら、私のような外部の設計者をプロジェクトに加える。それ自体が、次の時代への試金石と位置付けられた大胆なプロジェクトである。

 具体的には、廃校になった旧小学校校舎(取手市立白山西小学校)を増改築し、地域や社会に開いた施設として再生しようとする内容である。全国に1400件以上あるといわれる廃校舎の利活用モデルを提示しようとする狙いもある。

 まさに時間と空間の境界を取り払い、開いた世界を前提とした建築や都市に転換する試みだ。このテーマを両者で共有することから、研修所のデザインはスタートした。

 

 

 

V字形の長い屋根が際立つ木のえんがわ(写真:鈴木 研一)

V字形の長い屋根が際立つ木のえんがわ(写真:鈴木 研一)

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V字形の屋根が重なるように連なる(写真:鈴木 研一)

V字形の屋根が重なるように連なる(写真:鈴木 研一