ニューノーマル時代に企業成長を促すワークプレイスのカタチを考察──Engagement Labの取り組み内容に熱視線:NSFエンゲージメント(前編

 

 

 

ソニーコーポレートサービス(現ソニーピープルソリューションズ)とNTTファシリティーズが、2019年10月に設立したNSFエンゲージメント。「日本の総務を再定義する」をミッションに、仕事を支える幅広いサービスを提供する同社のオフィスは「Engagement Lab」と名付けられ、新たなオフィスの姿を模索し実践する場として活用されている。ここではそのコンセプトやユニークな取り組みの内容について、同社 ビジネス部門 クリエイティブセンター チーフプロデューサーの高野昌幸氏と「Engagement Lab」のプロジェクトリーダーを務めたビジネス部門 ワークプレイスソリューション部 オフィス企画課の三成厚志氏に話を聞いた

 

 

 

 

オフィス研究所×オフィス業界のショールーム=Engagement Lab

まずは「Engagement Lab(エンゲージメントラボ)」と名付けられた貴社のオフィスのコンセプトを教えていただけますか?

NSFエンゲージメント
ビジネス部門
ワークプレイスソリューション部
オフィス企画課
三成 厚志氏

三成氏「社員・顧客・バートナーをエンゲージメントする」×「働く場の新しいスタンダードを生み出す」──これが「Engagement Lab」のコンセプトです。当社の本社機能にショールーム機能を持たせており、パートナー企業と開発したソリューションやサービスを活用したオフィスや、そこで私たちが働く様子をお客様に見ていただけるようになっています。また、私たち自身が、ソリューションやサービスを使うことで、ユーザーの視点で評価や開発を行う実験場としての役割もあるのです。例えば、現在、次世代のセキュリティソリューションとして開発中の「顔認証空間セキュリティ」なども、実際のオフィスを使って試験を行っています。

オフィス内のデザインは、シンプルにまとまっている印象ですね。

三成氏デザインのキーワードは「ニュートラルデザイン」です。装飾を省き、什器などもシンプルで本質的に美しいもの、機能的なもの、必要なものを採用することで、このオフィスがめざしている本質をカタチにしています。

それは何か意図があるのですか?

三成氏私たちは、社会情勢やビジネス環境の変化に柔軟に対応できる「スーパーフレキシブル」という考え方が、これからのワークプレイスに求められていくと考えています。あえて色をつけない、トレンドに左右されないニュートラルなデザインは、そのような柔軟性を持たせるための工夫の一つでもあります。

色をつけないニュートラルなデザインの什器。収納していてもお洒落に見えるよう工夫が凝らされている

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NSFエンゲージメント
ビジネス部門
クリエイティブセンター
チーフプロデューサー
高野 昌幸氏

高野氏当社は「日本の総務を再定義する」ことをミッションに掲げていますが、それを実現するためにも、提供するソリューションやサービスは、一部の限られた企業が使えるものではいけません。そこで、ショールームとしての役割もある「Engagement Lab」作りにあたっては、一般的な日本企業が真似できるように予算を「坪40万円以下」に設定。天井や床、壁は入居時のままにするなど、コストを最小限にする工夫が至るところに施されています。例えばオフィス内に部屋をつくるにしても、大掛かりな工事を行わずにスチールラックやロッカーをそのまま仕切りに使うことで対応しています。

 

 

 

 

ニューノーマル時代のオフィスに求められる安全性、生産性向上の工夫

その他にも働きやすさや生産性を向上させるための工夫がたくさんありそうですね。

三成氏執務エリアは、基本的にフリーアドレスにして、働き方や組織が変わっても柔軟に対応できるようにしています。また、庭園に面した窓際のアクティビティスペースには、スツールやテーブル、ホワイトボードとしても使えるキャスター付きの仕切板など、軽量で自由に動かせる什器を用意。作業やミーティング、あるいはちょっとした息抜きなど、利用シーンに応じたスペースを自由に作れるようにしています。

柔軟性の高いアクティビティスペース。窓際のスペースは社員にも人気の場所だという

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「ニューノーマル」時代に対応するために工夫していることもあるのでしょうか?

高野氏コロナ禍のワークスペースで、まず課題として挙げられるのが感染症予防です。社員の安全を担保することはもちろん、それをきちんと行っているかどうかは会社と社員とのエンゲージメントを築く上でも非常に重要になりますから──。そこで「Engagement Lab」では、オフィス内のソーシャルディスタンスの確保を徹底したり、除菌効果に優れたクロラス酸水を噴霧する空間除菌システムを導入したりしています。また、クロラス酸水の携帯用スプレーを社員全員に配布するなどして、オフィスの外でも社員一人ひとりが安全に行動できる習慣づくりを促す工夫も行っています。また、コロナ禍でリモートワークが普及した結果、リモート会議を行っても議論が活性化しないなど、コミュニケーションに悩みをもつ企業が増えています。そこで、リモート会議の生産性を上げる取り組みも進めています。

「Engagement Lab」の新型コロナウイルス対策

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三成氏具体的には、モニターやWebカメラ、バッテリーなどをキャスター付きの台にまとめた「どこでもミーティング」キットというものを用意しています。これを執務スペースに置けば、リモートも、オフィスにいる人とリアルに近いコミュニケーションが取れるという訳です。都度コンセントの場所を気にしないで済むので好評ですね。また、これからは、リアルな会議にリモートで参加するというケースも増えると思います。そのような際に「どこでもミーティング」キットを使って、リモート参加者の顔を表示させれば、これまでと同じような雰囲気で会議を進めることが可能です。

キャスター付きのモニターを使用し、場所を問わず会議を行うことができる

 

 

 

 

 

 

 

パートナー企業とのオープンコラボレーションでイノベーションを起こす

リモートとリアルの垣根をなくして、創造性を高めるコミュニケーションを実現していくということですね。

高野氏私たちにとっての生産性向上とは、単に仕事をしやすくするということだけではなく、創造性を高めてイノベーションを生み出すことを指します。そのためには、社内だけではなく、社外とのコラボレーションも非常に重要です。先ほど話したクロラス酸水を使ったソリューションも、社外のパートナー企業とコラボレーションした結果生まれたものですが、コラボレーションによって噴霧器や携帯用スプレーと組み合わせ、現在多くの企業が抱えるコロナ禍の課題を解決するソリューションとして昇華させているのです。私たちとコラボレーションをしたいと思う企業の方は、ぜひ気軽に「Engagement Lab」に足を運んでほしいと思います。

この場所で実際に働いている社員の皆さんからは、どのような感想が届きますか?

三成氏目的やシーンに合わせて自由に可変できる窓際のアクティビティスペースは特に好評です。ミーティングや作業だけではなく、お昼時には窓の外に広がる庭園を眺めらながら食事をする人も少なくありません。

高野氏このオフィスがオープンしてから延べ2000名のお客様が見学に来ています。見学者が多いので、新しいビジネスが次から次へと回っていることが実感できている社員は多いと思います。また、本社機能がこの場所に移ってきた直後から「ずっと前からここで働いているような気がする」という声が多くの社員から聞けたのも印象的でした。実はこの場所はソニー創業の地でもあるので、DNAがそう感じさせるのかもしれませんね。

見学者に配布している、オフィスの見どころマップ

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それは働く人のことを第一にしたワークスペースづくりに取り組んできたからこその結果なのでしょうね。

三成氏はい。やはり、そこを一番大切にして取り組んできましたので──。私たちがこれまで培ってきた知見を総動員して、見学された方が「真似したい」と思ってくださるようなアイデアの詰まったオフィスに仕上がったと自負しています。

高野氏リモートワークが広がる中で、出社率に合ったスペースの見直し、生産性やリスクマネジメントの観点からオフィスを分散させるという話も出てくると思います。そういう流れの中でオフィスがコンパクトになっていくと、そこで何をするのかという目的が明確になってくる。ですから、今後はその企業ごとのニーズに沿うオフィスが作られていくと思います。あらゆる機能が詰め込まれている一方で、特別な使い方はしにくかったようなこれまでのオフィスに比べると、より働く人や企業ごとの固有の事情に寄り添ったものになっていくと思います。そのようなニーズに対しても「Engagement Lab」で得られるノウハウや知見は役立つと考えています。