評論家が「太鼓判でオススメできる」フラグシップDAP。Shanling「M8」


Shanling「M8」¥OPEN(予想実売価格:税込179,300円前後)


さらに、ヘッドホン出力端子が手軽に交換できるという、これまでのポータブルプレーヤーにはなかった画期的なシステムが採用されている。まさに、Shanlingらしい先進性を持ち合わせた製品となっているのだ。

ヘッドホン端子を交換! 画期的な新システム

ということで、ますばこの部分、ヘッドホン端子が交換可能な「ヘッドホンソケットモジュール」から紹介していこう。


ヘッドホン端子は上部に配置されている


既存モデルである「M6」では、本体下部に4.4mm/2.5mmバランス/3.5mmという3つのヘッドホン端子が並んでいた。しかしM8では、ヘッドホン端子の位置を本体上部に変更。さらに「ヘッドホンソケットモジュール」システムを採用することで、デザインも構成も、とてもシンプルなヘッドホン出力を実現している。

モジュールは3.5mmアンバランスに加え、4.4mm、2.5mm、3.5mm(3.5Proと呼ばれ中国でよく採用されている方式)という3つのバランス端子が付属。専用の工具で簡単に交換できるようになっている。


合計4つの端子が付属する


専用の工具を使って交換する


実はこれ、不要な端子を排除することでホコリなどから製品を保護するだけでなく、リレーなどのパーツを排除することで音質的なメリットも生み出している。便利さを犠牲にせず、最大限に良質な音質を求めるShanlingらしいシステムだといえる。


端子類と工具は、専用ケースに収納されている

 

 

 

 

 

 

音質だけでなく、使いやすさも追求

そういったShanlingらしいモノづくりは、ボディデザインにも反映されている。プッシュ・ダイヤル式操作ボタンや左右がラウンドした筐体など、基本的な部分は既存モデル「M6」から踏襲されているが、タッチパネルがフルHDの映像も存分に楽しめる5インチ液晶にアップグレードしていたりする。


ボタン類は最小限。「Less is More(少ないほうが豊かである)」をテーマにしたミニマルなデザインだ


プッシュ・ダイヤル式操作ボタンを踏襲する


また、ユーザビリティにもしっかり配慮した作り込みが行われている。本体は大柄化したものの、ボディの左右を巧みにすぼめて手に馴染みやすいデザインを追求。さらに音質とスムーズな操作のバランスを保つため、CPUにQualcomm製「Snapdragon430」を採用しつつ、オリジナルのカスタマイズが施されたAndroid OSを組み合わせている。


背面部


ボディの左右を巧みにすぼめて手に馴染みやすいデザインだ


バッテリーは大容量の7,000mAhを採用し、最大14時間の連続再生を確保。同時に、QC3.0に対応して短時間での充電も実現。Bluetoothコーデックも、LDACやHWA、aptX HDに対応し、さらには現在どのコーデックで接続しているのかがひと目でわかるように、表示にも配慮している。音の良さだけでなく、扱いやすさも良好なのが、Shanlingならではのアドバンテージといえる。


充電端子にはUSB Type-Cを採用。QC3.0による急速充電もサポートする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Shanlingの最新回路技術をとことん投入

音質に関しても、フラグシップならではのこだわり抜いたシステムが採用されている。まず音質の要となるDACには、AKM社製の最高峰モデル「AK4499EQ」をデュアルで搭載。768kHz/32bitまでのリニアPCM、22.4MHzまでのDSD音源のネイティブ再生に対応する。さらに、「AK4499EQ」ならではの高音質を活かすため、独自のI/V変換方式を採用している。

というのも、「AK4499EQ」は現在一般的なDACとは異なり電流出力型を採用しているため、DACから出力した後の回路にI/V変換のパートが必要となっている(その分オーディオメーカーの腕の見せ所ではあるのだが)。ShanlingではI/V変換のクオリティを重要視し、電圧回路設計の最適化やコンデンサ/抵抗などの構成パーツを繰り返し検討。「音のディティールを余すことなく描写し、連続性に優れたスムーズな音の表現」を実現したとアピールしている。


2基の「AK4499EQ」を搭載


さらに、特許を持つ第三世代のクロックサンプリングアルゴリズム「FPGAテクノロジー」やKDS低位相ノイズ水晶発振器、群遅延問題を解決するローパスフィルター「CPAF(Constant Phase in All Frequency)テクノロジー」、オペアンプのチョイスなど、回路や使用パーツを徹底的に吟味することで、フラグシップモデルに相応しい上質なサウンドが追求されている。

Android OSも独自の「AGLO(Android Global Loss-less Output)」技術を投入することで、SRCの制限や干渉を回避。さらに、Primeモードが用意されていて、こちらを利用すればシンプルなミュージックプレイヤーとして動作させることも可能となっている。


Android 7.1を採用。独自技術でSRCの制限や干渉を回避している


ヘッドホンも鳴らしきる駆動力の高さ。「M8」はShanling製DAPの完成形だ

肝心のサウンドをチェックしていこう。今回、final「A8000」、Shure「AONIC 5」という2つのイヤホンに加えて、密閉型ヘッドホンのオーディオテクニカ「ATH-WP900」でも試聴を行ってみた。

総じて、フォーカスのよいソリッドなイメージのサウンドキャラクターが特徴。特に低域のフォーカス感の高さは、近年の上級ポータブルプレーヤーのなかでも1、2を争う上質さを持ち合わせている。ドラムはとてもキレが良く、音階が明快に届いてくるベースの演奏と合わせて、とてもノリの良い、グルーブ感溢れる演奏を楽しませてくれる。

いっぽうで、歌声はハスキーにもウォーミーにもならず、ニュートラルな表現を持ち合わせていた。おかげで、ヴォーリストそれぞれの特徴が伝わりやすく、魅力的な歌声に聞こえる。音の自然さと聴き心地の良さが絶妙なバランスを保つ、見事なチューニングだ。


使用イメージ


イヤホン、ヘッドホンとの相性問題は、ほぼないといっていい。今回試聴に使った3製品はそれぞれにクセというか特徴的な部分を持っているが、どれもあっさりと、それぞれの良さがしっかりと感じられる音を奏でてくれた。

特にATH-WP900では、低域のフォーカス感に加えて量感もしっかりと確保され、メリハリ表現のよいパワフルなサウンドを楽しませてくれた。いっぽうで、女性ヴォーカルの高域にちょっとしたクセを感じるなど、ATH-WP900ならではの音色傾向があからさまになる部分もあったが、愛用のヘッドホンが特徴を最大限に発揮してくれるのは嬉しいかぎりだ。

こういった、ヘッドホンをしっかりと鳴らしきってくれる駆動力の高さは「M6」「M6 Pro」から変わらない、Shanling製ポータブルプレーヤーならではのアドバンテージだが、その完成形ともいえる良質さを「M8」は持ち合わせている。

今回試したATH-WP900はもちろんのこと、A8000もヘッドホン出力にそれなりの駆動力やバランスの良さを求める製品のため、Shanlingの最新フラグシップモデルとはいえ、その懐の深さに少々驚いたのは事実。ヘッドホンでのリスニングが多い人にも、太鼓判でオススメできる製品だ。

(提供:株式会社MUSIN)