三菱商事の平均年収1600万円!知られざる商社マンの給料・婚活・結婚生活

 
 

ダイヤモンド編集部 

 

山本興陽:記者

 

https://diamond.jp/articles/-/235095

 

 

五大商社の平均年収は、この10年間で200万円以上もアップした。中でも三菱商事の平均年収は1600万円を突破。高給取りの実態に迫るとともに、婚活や海外駐在など商社パーソンの結婚事情についても紹介する。特集『最後の旧来型エリート  商社』(全13回)の#8では、総合商社マンの給与・婚活・結婚のリアルを紹介する。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

就活人気ランキングでは上位を独占
女性の総合職も急増中

 年収は右肩上がり、婚活では引く手あまたで、夢の海外駐在。総合商社は勝ち組か―

 

 

就活生の間で総合商社の人気が止まらない。ダイヤモンド・ヒューマンリソース調べの2021年卒業の就職人気ランキングでは、伊藤忠商事、三菱商事がワンツーフィニッシュとなり、トップ10に総合商社6社がランクインした。

 商社が以前から人気業界の一つであることに疑いはない。ただ、今日の圧倒的な人気の背景には、ワケがある。

新卒就職人気ランキング

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「学生の二極化が進んでいる。内向的な学生は、地元で就職し、楽な仕事を好む。一方、外交的な学生は、グローバル企業で、多少ハードでも世界を相手にしたビジネスをしたがる。入社の数年後から海外で働くことができ、事業投資などビジネスの規模が大きく、外交的な学生の心をがっちりつかんでいる」(新卒採用支援関係者)

 総合商社との接点を広げるため、特設サイトを作成するなど、自らOB・OG訪問の機会をセッティングしていることも高評価の要因。「ダイバーシティーを進めるべく、OB・OGがいない大学からの採用を強化している。昨年も初めて採用する大学・学部の学生が一定数いた」(同)と採用戦線にも変化が生まれている。

 このダイバーシティーは女性総合職の増加にも表れる。「1990年代は、総合職として入社する女性は新卒で1~2人。いずれも仕事第一の“バリキャリ”だった。今や、総合職で入社する人のうち毎年20%ぐらいが、女性になっている。出産や育児といった女性としてのキャリアを両立したいという女性が増え、結婚による離職はほとんどない」と、三井物産社員のある社員は内情を明かす

 

 

 

 

 

 

 

新卒組は、帰国子女、体育会出身者が中心
中途採用では、メーカー出身者が多い

 そうはいっても、実際に採用の狭き門をくぐることができるのは東大・京大や早慶といった難関校が中心であることに変わりなく、入社のハードルが下がったということでは決してない。

「親が商社勤務もしくは帰国子女や体育会出身者で、だいたい7割を占める。残りの3割は一芸に秀でた人や、親の“コネ”入社など、強いインパクトの人ばかり」(丸紅社員)と学歴プラスアルファが求められる。

 新卒生え抜き文化が強いとされる総合商社だが、各社は中途採用にも注力し始めた。現在、中途入社で多い経歴がメーカー出身者である。

 特に電気や重工業、自動車などの業種は重宝される。例えば、「総合商社の自動車部門で、完成車メーカーの現地でのディーラー網構築など、現地法人の代表として、全てをマネージできる人を採用している」(中途採用支援関係者)。このような中途採用は、「毎年30~40人」(三井物産社員)と、一定の規模となっている。

三菱商事は10年間で300万円も年収アップ
入社4年目で手取り1000万円のチャンス

 総合商社の人気を支えるのが「高給」だ。新卒入社の場合、30歳前後で1000万円の大台に乗る。稼ぎ出す生涯年収は約5億円ともいわれ、2億円が目安とされる平均的なサラリーマンの2.5倍だ。

年収推移グラフ

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 近年は好調な業績を背景に、給与も右肩上がりだ。各社の有価証券報告書によれば、五大総合商社の平均年収は、18年には1467万円。09年時点で1260万円だったものが、10年間で約200万円アップした。中でも王者・三菱商事は、1301万円(09年)から1607万円(18年)と300万円超上昇した計算だ。

 こうした高給は、基本給やボーナスだけではない。海外赴任に伴う手当によってもつり上げられる。「基本給に駐在手当や地域手当が上乗せされて、毎月口座に入ってくる額は、東京勤務時と比較して約2倍」(丸紅社員)といい、海外駐在時にカネを貯める。

 海外駐在の手当の中でも、危険な新興国に駐在する場合は「ハードシップ手当」が上乗せされる。「ハードシップ手当が高額なエリアでは、新卒入社4~5年目でも手取りが1000万円を超える」と、ある総合商社の元社員は圧倒的な好待遇の裏側を明かす

 

 

 

 

 

 

婚活では圧倒的な人気
一方、総合職の女子からは悲鳴が…

 高給の商社マンは婚活市場でも“人気銘柄”だ。結婚相談所インフィニの佐竹悦子代表は、「医師や弁護士、外資系金融機関など人気の職業の中でも、総合商社マンは外に出る機会が多い職業のため、身だしなみがしっかりしている。体育会出身のスポーツマンタイプも多い」と説明する。

 新型コロナウイルスの感染拡大で総合商社の足元の業績は大打撃を受けているものの、婚活市場では“追い風”が吹いているという。「景気悪化を危惧して、財務的な体力がある大企業に女性からの人気が急速に集まっている。総合商社はその筆頭」と佐竹氏は明かす。

 合コンにおいては総合商社のカラーが出ると語るのは、婚活サービスを手掛けるインプレシャスの代表を務める松尾知枝氏。松尾氏は元日本航空国際線客室乗務員(CA)で、合コン開催数は約500回のつわものだ。

「商社マン好きな女子は周りにも多かった。会社によってカラーがよく出るため、好みが分かれていた。三菱商事は、正統派な好青年で金払いも良い。住友商事は、優しい人が多く、結婚向きだと感じた。伊藤忠商事は、お酒をよく飲み、アグレッシブだった」(松尾氏)。時価総額で、三菱商事を追い抜こうという伊藤忠商事の勢いは、“夜の社風”にも表れているといえそうだ。

 一方で、総合商社に勤める総合職の女性からは悲痛な叫びが。「総合商社の一般職は華やかで、特に丸紅の一般職は“ギャル紅”といわれ、チヤホヤされる。だが、総合職の女子はモテない。『なんか違うよね……』という目で見られてしまう」と、ある大手総合商社の総合職の女性は肩を落とす

 

 

 

 

 

 

駐在先で人気なのは、先進国
商社妻なりの苦労も多い…

 結婚後は、夫婦で花の海外駐在。妻帯者の駐在先で人気なのが、米国やフランスといった先進国だ。「セキュリティーがしっかりした高級マンションにただで住める。家賃相場で言えば、東京に住んでいたときの3~5倍」(総合商社社員)と夢のような生活である。

 その一方で、地域手当で稼げる新興国は家族連れに敬遠されるという。行動が制限され、移動するにもドライバーの手配が必要など、リスクが高いからだ

 

 

 

 

 

また、婚活中の女性にとって“勝ち組”ともいえる現役商社マンの妻に話を聞くと、思わぬ苦悩が垣間見えてきた。

「駐在先のヒエラルキーは、旦那のヒエラルキーと駐在歴の長さで構成される。職種で言えば、大使館→商社→金融→メーカーが基本。商社妻は英語が話せることが多いため、英語ができず日本人同士で固まるメーカー妻から嫌われることも多々あった。また現地の日本人会でパーティーが盛んに開催されるが、なじむことができず、耐えられなくなった夫人が帰国を希望するケースも多い」(夫が総合商社勤務の女性)といったように肩身の狭い思いをすることもあるそうだ。

高給・安定を捨て、総合商社を去る社員が急増中
キャリアスピードが遅いことが要因

 高給、海外駐在と輝かしい将来が待っている総合商社マン。それでも去る社員が増えており、人事担当の頭を悩ませているという。

「特に、30~35歳での転職が急増中。順調に出世しても、40歳前後で課長、40代後半で部長・本部長が原則。キャリアの進み方が非常に遅く、20~30代で経営に関与できないことに見切りをつけ、退社に至っている。意思決定が遅い大企業体質に、疲れたという声も多い」(転職支援関係者)

 かつては高給を求め、マッキンゼーやA.T.カーニーといったコンサルティングファーム、ゴールドマン・サックスをはじめとした外資系投資銀行への流出も多かった。現在は、ベンチャー企業への転職が大人気だ。

 自分の力をダイレクトに試せる、CFO(最高財務責任者)やCSO(最高戦略責任者)といったCxOポジションでの転職が増加している。

 キャリアスピードで解決策が見いだせなければ、高給や安定を捨てても人材流出は続くといえそうだ。

Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic by Kaoru Kurata