電源ケーブル&NCF Boosterシリーズの効果を検証
アナログプレーヤーの音質向上にフルテックの電源アクセサリーが効く!
炭山アキラ
https://www.phileweb.com/review/article/202009/01/3942.html
音質向上の余地が大きくて実に驚いた
■アナログプレーヤーでも必須! 高品位電源ケーブルへの交換(Text by炭山アキラ)
昨今はIEC端子を備え、電源ケーブルが交換できるようになったアナログプレーヤーが増えてきた。そうはいっても、ただプラッターを定速回転させているだけの電源部に、ケーブル交換がどれほどの効果をもたらすのか、いささか眉に唾をつけておられる人もおいでであろう。そのお気持ちも分からぬではないが、実際のところアナログプレーヤーの電源ケーブル交換は、これはと驚くくらいに音質向上の余地が大きいものである。
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フルテックの電源ケーブル、「The Roxy」(25,000円、1.5m、税抜、写真中央上)、「The Empire」(35,200円、1.5m、税抜、写真左)、「The Astoria」(22,200円、1.5m、税抜、写真中央手前)、コネクター/ケーブルホルダー、「NCF Booster-Signal-L」(14,800円、税抜、1個、写真右)
一体なぜなのかといえば、あくまで推測でしかないが、昨今のプレーヤーはほぼ100%がサーボモーターを採用しており、非常に細かなタイムスパンで回転速度を検知して、プラッターを一定速度にするため微調整を行っている。つまり、微細に見ればプレーヤーの電源負担は刻々と変わっており、そのサーボ電流を流しやすくするのがいいケーブルだ、ということなのではないか。
ここでは、比較的入手しやすいランクの電源ケーブルのなかから、フルテックの3モデルを起用して音質傾向の変化を探っていきたい。また同時に、同社の「NCF Booster-Signal-L」も併用し、音質向上を図ってみよう。起用したプレーヤーは、テクニクスのSL-1000RにマイソニックのULTRA EMINENT Bcを装着という贅沢な布陣で臨んだ。
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テクニクスの最高峰アナログプレーヤーSL-1000Rと、フルテックのアナログ関連アクセサリー。電源ケーブル周りを交換すると、驚くほどにクオリティアップ
電源ケーブル「The Astoria」
■音楽を紡いでいく様子など、澄み渡る広大な音場を実感
まずはSL-1000Rをごく一般的な2ピンの電源ケーブル(それでも結構太い)で聴き、それからフルテックの「The Astoria」に交換する。PC-Triple C導体に、端子は無メッキである。
クラシックの盤へ針を落とし、音楽が流れ出した瞬間に「あぁ、やっぱり1000Rはこうでなくちゃ!」と強く感じた。音場が一気に澄み渡って広大に広がり、オケの楽員が指揮者に呼応して音楽を紡いでいくさまが、眼前に広がるようになるのだから、もう音楽体験としてまったく格の違いを聴かせることとなった。ジャズはソロ・トランペットの音像がギュッと締まり、弱奏からも物凄いエネルギーを感じる。「生の息吹がそこにある」というイメージだ。この差はとてつもなく大きい。ポップスは「あれ? この盤はこんなに澄んだ音だったかな」と、長年聴き慣れた盤を再認識することとなった。やっとSL-1000Rがその実力を存分に発揮し始めたのであろう
電源ケーブル「The Empire」
■輝かしく厚みのある音で、濃厚な力強い表現力を持つ
続いて「The Empire」に交換して聴いた。この製品も導体はPC-Triple Cだが、端子は上級品の金メッキモデルを採用する。
こちらはグッと音に厚みを出してくる。オケは音像が濃厚で、編成の大きさがしっかりと伝わってくる。導体の断面積は両者ほぼ共通だが、「The Astoria」は細い線を多く撚り、「The Empire」は太い線を少なく撚っている。この差は主に力感と輪郭線の力強さに効いてくると考えられる。また、端子の無メッキと金メッキの差は、素直な音と、輝かしく厚みのある音と総称してよいだろう。その違いも大きく音に出ていることがはっきりと分かる。プレーヤーの音質チューニングにも、これは大いに使える方法である。
電源ケーブル「The Roxy」
■しっとりとした潤いを備え、楽器の風合いや息遣いも爽快
次は「The Roxy」に交換した。この製品は、銀メッキOFCに独自のα処理を施した導体とし、両端子は金メッキだが、IEC側が特にスリムなFI-C15を採用するのが大きな特徴だ。機器の端子周りの形状によって、大きなIEC端子が挿さらない場合に大変重宝する。
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テクニクスSL-1000Rのコントロールユニットの電源ケーブルに、フルテックの「The Roxy」を使用し、端子部にコネクター/ケーブルホルダーの「NCF Booster-Signal-L」を挿入したとこ
こちらは音楽をややしっとりと潤いのある方向に躾けてくれる。弦楽器の風合い、トランペットの息遣いなどが、爽やかに吹き抜けるような質感で耳へ届くのだ。興味深いのは、例えばPC-Triple Cならばやや明るく華やいだ質感、銀メッキ銅線なら少々高域が強調された展開になることが多いのだが、この3本にはそういう強いキャラクターが存在せず、とても使いやすい。同社のチューニング技術のなせる業であろう。
コネクター/ケーブルホルダー「NCF Booster-Signal-L」
■振動や静電気から守る効果、澄み渡る音場と伸びが快感だ
最後に、「NCF Boosterシリーズ」から「NCF Booster-Signal-L」タイプを使ってみた。一番背の低い製品で、アナログプレーヤーにはとても使いやすいからだ。
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今回は電源系を環境整備したが、「NCF Booster-Signal-L」は微弱なフォノ信号伝送系ケーブルへの導入もたいへん効果的なので、ぜひ併せて導入して欲しい(写真はSL-1200Gプレーヤーへの使用例)
電源ケーブルのIEC端子部を支えると、音は一気にガチンと安定し、コンサートホールへ据えたマイクのスタンドが頑丈になったか、という表現になる。音場はさらに澄み、どこまでも伸びる。音楽にどこかしら付きまとっていた重いコートが外れ、伸び伸び、生き生きと鳴り渡るのも快感だ。やはり、これをもってアナログプレーヤーのクオリティアップは完成ということにしたい。
【The Astoriaの仕様】
●導体:PC-Triple C●構成:80本/0.18mmφ×3極●プラグ:FI-11M(Cu)●IECコネクター:FI-11(Cu)●絶縁材:特殊耐熱オーディオグレードPVC●インナーシース:RoHS指令適合オーディオグレードPVC●シールド:0.12mmOFC編組●長さ変更の特注対応可能
【The Empireの仕様】
●導体:PC-Triple C●構成:45本/0.32mmφ×3極●プラグ:FI-11M(G)●IECコネクター:FI-11(G)●絶縁材:特殊耐熱オーディオグレードPVC●インナーシース:RoHS指令適合オーディオグレードPVC●シールド:0.12mmOFC編組●長さ変更の特注対応可能
【The Roxyの仕様】●導体:銀コーティングα-OFC導体(構成→37本/0.26mmφ×2極)、α-OFC導体(構成→37本/0.26mmφ×1極)●絶縁体:オーディオグレードポリエチレン●プラグ:FI-11M-N1(G)●IECコネクター:FI-C15(G)(高伝導素材の純銅の上に24k金メッキ処理)●長さ変更の特注対応可能
【NCF Booster-Signal-Lの仕様】●クレイドル:フラットタイプ●高さ設定:基本(一番低い位置での高さ)23.8mm、延長81.4mm(オプションでさらに追加可能)●ベースユニット外部サイズ:89.8×66.0mm●外部サイズ:46W×106L×23.8Hmm●質量:基本約130.5g、延長約177.5g●付属品:エクステンションシャフトバー×2本、固定リング×2本、特殊PU滑り止め透明マット×4個