湾岸主軸エリアの豊洲・有明で春開業を延期した巨大複合施設が緩やかに始動

「湾岸再起動2020」都心軸編

山本 恵久

 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

 

 

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00110/00191/?n_cid=nbpnxt_mled_km

 

 

 

 

東京臨海副都心の整備に関しては、1995年に世界都市博の中止を決定した後、様々な巻き返し策が図られてきた。近年目立つのは、都心との結節点である豊洲や、東京五輪の招致を機に会場施設が立ち並んだ有明北地区の動きだ。核となる巨大複合開発「豊洲ベイサイドクロス」「有明ガーデン」などを2020年7月時点の写真でリポートする。


 

 東京湾岸のうち東京都が特に目を向けてきたのが、都心と臨海副都心を結ぶ軸線上にある晴海、豊洲、有明といったエリアだ。2018年に「東京ベイエリアビジョン」の策定に着手した際には、市場跡地のある陸側の築地、海側の台場や青海と合わせ、エリアの特性に従った成長モデルを描き出そうと試みている。

 海側から望むと、やはり存在感を放つのは5632戸の分譲・賃貸集合住宅と商業施設、計24棟を建設する中央区晴海の「HARUIMI FLAG」(晴海フラッグ)だ。東京五輪延期に伴い、竣工前に大会選手村として使う計画に影響が生じた。20年6月には、契約者の入居開始が当初予定の23年3月から延期されることが明らかになった。

海側からHARUMI FLAG方向(写真中央)を見る。三方が海に面する約13haの土地に人口約1万2000人の街をつくる計画を掲げる。以下、特記以外は20年7月撮影(写真:日経クロステック)

海側からHARUMI FLAG方向(写真中央)を見る。三方が海に面する約13haの土地に人口約1万2000人の街をつくる計画を掲げる。以下、特記以外は20年7月撮影(写真:日経クロステック)

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晴海・豊洲・有明のエリアマップ。「東京大改造マップ2020-20XX」掲載、調査:2019年11月時点(地図製作:ユニオンマップ、資料:日経アーキテクチュア)

晴海・豊洲・有明のエリアマップ。「東京大改造マップ2020-20XX」掲載、調査:2019年11月時点(地図製作:ユニオンマップ、資料:日経アーキテクチュア)

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豊洲大橋からHARUMI FLAGを見る。現在、竣工予定時期および入居予定時期は「未定」と告知されている。20年2月撮影(写真:日経クロステック)

豊洲大橋からHARUMI FLAGを見る。現在、竣工予定時期および入居予定時期は「未定」と告知されている。20年2月撮影(写真:日経クロステック)

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HARUMI FLAGを北側から見る。共用部に明かりの灯っている棟もある(写真:日経クロステック)

HARUMI FLAGを北側から見る。共用部に明かりの灯っている棟もある(写真:日経クロステック)

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HARUMI FLAGの隣接地には、選手村ビレッジプラザが完成し、20年1月に報道陣に公開されている。東京五輪の開催時に選手団の交流拠点とする目的で建設された。現在は塀に閉ざされている。設計は日建設計、施工は熊谷組・住友林業JV。20年1月撮影(写真:日経クロステック)

HARUMI FLAGの隣接地には、選手村ビレッジプラザが完成し、20年1月に報道陣に公開されている。東京五輪の開催時に選手団の交流拠点とする目的で建設された。現在は塀に閉ざされている。設計は日建設計、施工は熊谷組・住友林業JV。20年1月撮影(写真:日経クロステック)

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 同様に影響を受けざるを得なかったのが、海から首都にアプローチする際の新たな顔として都が江東区青海の沖合に建設した「東京国際クルーズターミナル」だ。6月12日には、開業期日を当初予定の7月14日から延期すると発表。「9月を目途とし、新型コロナウイルスの収束状況を見て判断」としている。

東京国際クルーズターミナルを陸側から見る。海上に土木構造物の人工地盤を建造し、その上にターミナルを建設している。設計は安井建築設計事務所、施工は五洋建設・東亜建設工業JV(写真:日経クロステック)

東京国際クルーズターミナルを陸側から見る。海上に土木構造物の人工地盤を建造し、その上にターミナルを建設している。設計は安井建築設計事務所、施工は五洋建設・東亜建設工業JV(写真:日経クロステック)

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 以下に、規模の巨大さもあって開発時から注目されていた「豊洲ベイサイドクロス」および接続する「ららぽーと豊洲」(リニューアル)、「有明ガーデン」などの現在の様子を報告する。

 

 豊洲ベイサイドクロス 

海辺の公園や大規模商業施設と連結、ホテル開業も8月に決定

 

 臨海副都心の玄関口に当たる豊洲駅前の街区に、三井不動産が、オフィス、36店舗の商業施設、225室のホテル、エネルギーセンターなどから成る大規模複合施設を整備。地上36階のタワーの低層部は豊洲駅に直結し、さらに豊洲公園、隣接する「ららぽーと豊洲」との間にブリッジを架けて歩行者動線の回遊性を高めている。

以下、(1)は所在地、(2)は事業主体、(3)は設計者、(4)は施工者、(5)は構造/階数、(6)は延べ面積。一部数字は、当初発表時のものを含む

施設概要 (1)東京都江東区豊洲2-2-1 (2)三井不動産 (3)大成建設、デザイン監修:光井純アンドアソシエーツ建築設計 (4)大成建設 (5)鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造(免震構造)/豊洲ベイサイドクロスタワー:地下2階・地上36階、B棟:地下1階・地上24階 (6)豊洲ベイサイドクロスタワー:約18万4800m2、B棟:約7万2500m2

開発・開業経緯 12年8月豊洲2丁目駅前地区再開発事業施行認可(東京都)、16年12月同2-1街区タワー着工(~20年3月竣工)、18年1月同2-1街区B棟着工(~20年10月竣工予定)、19年11月街区名称発表、開業時期発表(20年4月24日、ホテル6月25日)、20年4月7日開業延期発表、同6月1日商業施設開業、同8月3日ホテル開業時期再発表、同8月10日ホテル開業(予定)

豊洲ベイサイドクロスタワーを北西側から見る(写真:日経クロステック)

豊洲ベイサイドクロスタワーを北西側から見る(写真:日経クロステック)

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左手が豊洲ベイサイドクロスタワー。2015年竣工の豊洲シビックセンター(右手)、および東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)豊洲駅の改札階と2階デッキで接続されている(写真:日経クロステック)

左手が豊洲ベイサイドクロスタワー。2015年竣工の豊洲シビックセンター(右手)、および東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)豊洲駅の改札階と2階デッキで接続されている(写真:日経クロステック)

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豊洲ベイサイドクロスタワーの施設案内図(資料:三井不動産)

豊洲ベイサイドクロスタワーの施設案内図(資料:三井不動産)

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既存のショッピングモール「ららぽーと豊洲1」側から豊洲ベイサイドクロスタワーの低層部を見る。タワーの1〜4階は「ららぽーと豊洲3」とし、1・2のリニューアルに合わせて増床した格好になっている(写真:日経クロステック)

既存のショッピングモール「ららぽーと豊洲1」側から豊洲ベイサイドクロスタワーの低層部を見る。タワーの1〜4階は「ららぽーと豊洲3」とし、1・2のリニューアルに合わせて増床した格好になっている(写真:日経クロステック)

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ららぽーと豊洲3の4階デッキ側から既存の同1を見る(写真:日経クロステック)

ららぽーと豊洲3の4階デッキ側から既存の同1を見る(写真:日経クロステック)

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 ららぽーと豊洲(リニューアル) 

外観デザイン含め大規模刷新、東京湾岸エリア最大級の商業施設に

 

 三井不動産は、豊洲ベイサイドクロスの街開きに合わせ、隣接する商業施設「三井ショッピングパーク アーバンドック ららぽーと豊洲1・2」のリニューアルを実施。2006年の開業以来、最大規模の刷新となる。新規62店舗、改装40店舗に、豊洲ベイサイドクロスタワー内の36店舗、既存店を合わせると全214店舗に達する。

 20年1月に開業期日を3月18日と発表したが、延期を決定した後、ららぽーと豊洲1・2は5月29日より、豊洲ベイサイドクロスタワー内のららぽーと豊洲3は6月1日より順次開業している。

海側のドック越しに、ららぽーと豊洲1を見る(写真:日経クロステック)

海側のドック越しに、ららぽーと豊洲1を見る(写真:日経クロステック)

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ららぽーと豊洲の施設案内図(資料:三井不動産)

ららぽーと豊洲の施設案内図(資料:三井不動産)

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ららぽーと豊洲1越しに、地上36階建ての豊洲ベイサイドクロスタワー(左手前)を見る。奥で建設中の建物は地上24階建ての同街区B棟(写真:日経クロステック)

ららぽーと豊洲1越しに、地上36階建ての豊洲ベイサイドクロスタワー(左手前)を見る。奥で建設中の建物は地上24階建ての同街区B棟(写真:日経クロステック)

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手前が、ららぽーと豊洲1。開業以来初めて外観デザインを一新した(写真:日経クロステック)

手前が、ららぽーと豊洲1。開業以来初めて外観デザインを一新した(写真:日経クロステック)

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海側のオープンスペースから、ららぽーと豊洲1、および豊洲ベイサイドクロスの2棟を見る(写真:日経クロステック)

海側のオープンスペースから、ららぽーと豊洲1、および豊洲ベイサイドクロスの2棟を見る(写真:日経クロステック)

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ららぽーと豊洲3の1階、レストランゾーン(写真:日経クロステック)

ららぽーと豊洲3の1階、レストランゾーン(写真:日経クロステック)

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ららぽーと豊洲3のエレベーター内(写真:日経クロステック)

ららぽーと豊洲3のエレベーター内(写真:日経クロステック)

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ららぽーと豊洲1、今回拡充されたフードコートの一角(写真:日経クロステック)

ららぽーと豊洲1、今回拡充されたフードコートの一角(写真:日経クロステック

 

 

 

 

 

 

 

 

豊洲6丁目4-2・3街区プロジェクト 

大規模オフィス、ホテルに併せて日本初の“都市型道の駅”を整備

 

 ゆりかもめ市場前駅に隣接する敷地に、清水建設が、国内最大級の1フロア面積(約2000坪)を有するオフィス棟と、エリア最大級の582室を有するホテル棟から成る複合開発を進めている。ホテル棟は、運河越しに都心を見渡せるアーバンリゾート型として計画。総投資額は約600億円に上る。

 ホテル棟とオフィス棟の間には、交通広場を設置。都心や羽田・成田空港と接続するバスターミナル機能を核とし、日本初の“都市型道の駅”「豊洲MiCHiの駅」として整備する。交通広場上部を約1700m2の大規模デッキで覆ってオープンスペースとし、駅と晴海運河の水辺空間をつなぐ歩行者デッキなども設ける。

施設概要 (1)東京都江東区豊洲6ー4 (2)清水建設 (3)清水建設 (4)清水建設 オフィス棟 (5)鉄骨造(免震構造)/地上12階 (6)約8万9100m2 ホテル棟 (5)鉄骨造/地上14階 (6) 3万2300m2

開発経緯 18年6月都市計画決定、計画始動発表、19年4月着工(〜21年8月竣工予定)、20年4月「豊洲MiCHiの駅」整備発表

建設中の豊洲6丁目4-2・3街区プロジェクトを南側から見る(写真:日経クロステック)

建設中の豊洲6丁目4-2・3街区プロジェクトを南側から見る(写真:日経クロステック)

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建設中の豊洲6丁目4-2・3街区プロジェクトを北西側から見る。同街区は、国土交通省が「スマートシティモデル事業」の先行モデルプロジェクトの1つに選定した「豊洲スマートシティ」の エリア内にある。エリアを対象に今後、フィジカル(現実)空間とサイバー(仮想)空間を融合させた「都市デジタルツイン」を構築する予定だ(写真:日経クロステック)

建設中の豊洲6丁目4-2・3街区プロジェクトを北西側から見る。同街区は、国土交通省が「スマートシティモデル事業」の先行モデルプロジェクトの1つに選定した「豊洲スマートシティ」の エリア内にある。エリアを対象に今後、フィジカル(現実)空間とサイバー(仮想)空間を融合させた「都市デジタルツイン」を構築する予定だ(写真:日経クロステック)

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 有明ガーデン 

総開発面積10.7haの都内最大級の商業・住宅複合開発事業も順次

 

 ゆりかもめ有明駅および、りんかい線(東京臨海高速鉄道)国際展示場駅の北側、総開発面積10.7haの土地に、住友不動産が、商業・住宅複合施設を開発した。計1500戸超のトリプルタワーマンション、最大 8000人を収容できるホール、749室のホテル、約200店舗が入る商業施設などから成る。

施設概要 (1)東京都江東区有明2-1 (2)住友不動産 住友不動産 ホテル ヴィラフォンテーヌ グランド 東京有明(B街区) (3)竹中工務店 (4)竹中工務店 (5)鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造/地下1階・地上16階 (6)8万3970.55m2 住友不動産 ショッピングシティ 有明ガーデン(B街区) (3)前田建設工業 (4)前田建設工業 (5)鉄骨造/地下1階・地上5階 (6)8万7625.44m2 ほかに住友不動産 東京ガーデンシアター、有明四季劇場、泉天空の湯 有明ガーデン、シティタワーズ東京ベイ(A街区、分譲マンション)などがある

開発・開業経緯 10年12月進出予定事業者決定、16年4月国家戦略民間都市再生事業計画認定、16年10月A街区着工(~19年10月竣工)、17年10月B街区着工(~20年3月一部竣工、26年3月全体竣工予定)、19年11月街区名称発表、20年2月14日商業施設等開業時期発表(4月24日)、同2月27日分譲マンション入居開始、同4月7日商業施設等開業延期発表、同6月4日開業時期再発表、同6月17日商業施設、シアター等開業、8月1日ホテル開業、21年劇場開業(予定)

ゆりかもめ有明テニスの森駅側から有明ガーデン(左奥)方向を見る(写真:日経クロステック)

ゆりかもめ有明テニスの森駅側から有明ガーデン(左奥)方向を見る(写真:日経クロステック)

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南側から有明ガーデンを見る。左手はホテル・ホール棟、右手前は分譲マンション棟(写真:日経クロステック)

南側から有明ガーデンを見る。左手はホテル・ホール棟、右手前は分譲マンション棟(写真:日経クロステック)

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街区の北西側に位置するショッピングシティ 有明ガーデンの外観を見る(写真:日経クロステック)

街区の北西側に位置するショッピングシティ 有明ガーデンの外観を見る(写真:日経クロステック)

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ショッピングシティ 有明ガーデンの屋上テラスから北側を見る。東京五輪の会場施設として建設された有明体操競技場と有明アリーナが左奥に見える(写真:日経クロステック)

ショッピングシティ 有明ガーデンの屋上テラスから北側を見る。東京五輪の会場施設として建設された有明体操競技場と有明アリーナが左奥に見える(写真:日経クロステック)

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ショッピングシティ 有明ガーデンの屋上部分(写真:日経クロステック)

ショッピングシティ 有明ガーデンの屋上部分(写真:日経クロステック)

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有明ガーデンの全体イメージ(資料:住友不動産)

有明ガーデンの全体イメージ(資料:住友不動産)

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有明ガーデンの施設配置図(資料:住友不動産)

有明ガーデンの施設配置図(資料:住友不動産)

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ショッピングシティ 有明ガーデン内(写真:日経クロステック)

ショッピングシティ 有明ガーデン内(写真:日経クロステック)

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ショッピングシティ 有明ガーデン内。各エントランスと吹き抜け広場でサーモグラフィーによる自動検温を実施している(写真:日経クロステック)

ショッピングシティ 有明ガーデン内。各エントランスと吹き抜け広場でサーモグラフィーによる自動検温を実施している(写真:日経クロステック)

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ホテル ヴィラフォンテーヌ グランド東京有明、アプローチ部分のサイネージ(写真:日経クロステック)

ホテル ヴィラフォンテーヌ グランド東京有明、アプローチ部分のサイネージ(写真:日経クロステック