トランプ大統領、WHOへ最後通告! 欧州も“反中国”加速 新型コロナ「独立した調査」122カ国が支持 中国は報復仕掛けたが…

5/21(木) 16:56配信

夕刊フジ

 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を受け、各国で「脱中国」が加速している。ドナルド・トランプ大統領は18日、世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長に、「(一連の対応は)中国寄りだ」「30日以内に改善できなければ資金拠出の恒久的停止や、WHO脱退を検討する」と最終通告した。ここまで直球ではないが、欧州諸国やオーストラリアも、「死のウイルス」の発生国ながら、覇権拡大に邁進(まいしん)する習近平国家主席率いる中国との距離を取り始めた。WHO総会は19日、新型コロナウイルスへの対応などについて独立した検証作業を実施することを求める決議案を採択して閉幕した。ノンフィクション作家、河添恵子氏による緊急寄稿14弾-。

 「公平で、独立的で、包括的であること。新型コロナウイルスに関する『独立した調査』の開始を求める動議草案で、われわれはこの3つを強調してきた」

 WHO年次総会初日の18日、オーストラリアのマリーズ・ペイン外相は、シドニーで記者団にこう語った。肝いりの動議を、欧州連合(EU)と英国、日本、ロシア、カナダに加え、アジアやアフリカ諸国など122カ国が支持したことに、歓迎の意を表した。

 オーストラリアは早い時期から、新型コロナウイルスの起源と初動対応、パンデミックに関する「独立した調査」の必要性について、声を上げてきた。中でも、ペイン氏は、中国政府に対して「政治的な操縦だ」とも主張してきた。

 EUが起草する動議とも内容の調整を続けてきたことから、ペイン氏は「決議は、われわれが開始した対話の重要な部分であり、EU加盟国とここ数週間の交渉に関わった多くの草稿者の努力に大変感謝している」と述べ、世界的な支持の高まりを、「国際社会の勝利」と表現した。

 この言葉(=国際社会の勝利)が意味するものは、何か。

 名指しこそしなかったが、WHO年次総会が「WHOとともに、ウイルスを『不透明に』取り扱って」きた超大国・中国の意のままには動かなかったことが分かる。

 アレックス・アザー米厚生長官も18日、「少なくとも1つのWHO加盟国が、新型コロナ発生の隠蔽を試みたことは明白で、透明性という義務をあざ笑った」と、年次総会で中国を批判した。

 これに対し、中国の馬暁偉国家衛生健康委員会主任は「透明性があり責任ある姿勢で、発生の通知やウイルスの遺伝子の情報を共有するなどして国際社会と協力してきた」と、米国などの主張に真っ向から反論した。

 そして、案の定、中国はオーストラリアに報復を仕掛けた。

 中国・商務省が「火曜日(19日)から、オーストラリアの大麦に80・5%の関税を課す」と発表したのだ。

 オーストラリアは恫喝(どうかつ)に引き下がる気はないようだ。

 デービッド・リトルプラウド農業・水資源大臣は同日、「(中国の対応に)判断を下す審判を求めて、世界貿易機関(WTO)に訴えることを検討する。われわれには、その権利がある」と述べた。

 新型コロナウイルスで、多くの感染者と死者を出し、混乱が続いているEUだが、外交術は実にしたたかだ。

 元欧州議会議長・欧州大学院の元総長で、欧州連合外務・安全保障政策上級代表のジョセップ・ボレル氏は16日、ドイツの日刊紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」に、「中国との関係における信頼と相互利益」という、以下の寄稿を発表した。

 「中国の病院が大変な負担を負っている最中、EUは大規模な支援を提供してきたが、この事実をあまり宣伝しようとはしなかった。中国はその後、欧州に医療機器を送ったが、それを世界に知らしめようとした。お互いを助け合い、団結しなくてはならないとき、援助から政治的何かを獲得することを避けるべきだ」

 中国の「誇大宣伝」への戒めであり、嘲笑ともいえる言葉といえる。

 習政権は、台湾を国際社会から徹底的に排除しつつ、台湾の「引き寄せ工作」にも余念がない。中国で台湾政策を担う国務院(政府)台湾事務弁公室と国家発展改革委員会などが15日、「誘台11条(=台湾を誘う11条)」の導入を発表した。

 「11条」には、「台湾企業を中国国内市場に拡大すること」「税制優遇措置を実施するよう指導すること」などが含まれる。

 台湾与党・民進党の王定宇議員は自身のSNSで、「『11条』は、台湾の資本、人材、技術を中国が奪う政策である。台湾を優遇するなどウソだ」と非難し、「台湾経済部(省)は、米中貿易戦争とコロナウイルス発生後、世界の多くの工場が中国から移転し、サプライチェーンのリスクを分散させるよう要求している。グローバル企業の『Anywhere But China(=中国ではなく、どこでも)』、ABCの流れが顕著なのだ!」と記した。

 新型コロナウイルス対策で成功した、台湾の自信が感じられた。

 これと合致するように、半導体受託生産の世界最大手・台湾積体電路製造(TSMC)が15日、米アリゾナ州に米国で2番目の工場をつくることを発表した。さらに、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)からの新規受注もストップすることが報じられた。

 世界が着々と「脱中国」に進みだした。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『米中新冷戦の正体-脱中国で日本再生』(ワニブックス)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)など

 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200521-00000012-ykf-int