CDリッピング用途の「筆頭候補」! パイオニア製外付けBDドライブ最新機「BDR-X12J-UHD」「BDR-X12JBK」の魅力

山之内 正

 

 

 

 

■CDリッピング用の“筆頭候補”。パイオニア製ドライブ新モデルを試す


パソコンで光ディスクドライブを使う機会は以前に比べて少なくなったが、DVDやブルーレイの再生、CDリッピング、データのバックアップなどの用途があり、まだ手放せないという人は少なくないはずだ。一方、最近のノートパソコンはディスクドライブレスの仕様が増えている。必要に応じて外付けのディスクドライブを組み合わせることになるわけだが、はたしてどんな製品を選べばよいのだろう。

主な用途がCDリッピングなら「PureRead」対応のパイオニア製ドライブが候補の筆頭に上がる。ディスクドライブの開発に豊富な経験を持つメーカーなので安心できるし、音楽ファンやPCオーディオのユーザーも意識して設計していることにも注目したい。


評論家の山之内正氏が製品をテスト


 


UHD BD再生にも対応する上位モデル「BDR-X12J-UHD」


UHD BD再生機能を省くなどで手頃な価格を実現したスタンダードモデル「BDR-X12JBK」


記録速度はBD-Rで最大16倍速に及び、CDも最大40倍速の記録と読み出しに対応するので、スリムドライブに比べると速度面でも優位に立つ。電源は付属の専用ACアダプターから供給し、パソコンとはUSB-Aで接続。従来どおり、別途ケーブルを用意すればAndroid端末とつないで音楽CDの取り込みができる(Wireless Hi-Res Player Stellanovaアプリを利用)。

■進化し続ける高精度データ読み取り技術「PureRead」

上位機種のBDR-X12J-UHDはUltra HD Blu-ray(UHD BD)の再生に対応し、BDR-X12JBKはドライブの基本性能はほぼ同等ながらUHD BD非対応という違いがある。今回はBDR-X12J-UHDをMacBookPro(MacOS Mojave 10.14.6)と組み合わせ、CDリッピングを中心に使い勝手と音質を検証した。

 

 

 

 

PureReadはディスクの状態に合わせて最適な読み取りアルゴリズムを選び、読み取り精度を高める技術で、BDR-X12J-UHDではその最新バージョン「PureRead 4+」が動作する。姉妹機BDR-X12JBKが積むPureRead3+との違いは、後者が複数のアルゴリズムを切り替えてリトライを繰り返すのに対し、前者は複数の読み取りアルゴリズムを同時かつ協調的に動作させ、読み取りエラーの発生を抑えることにあり、さらに読み取り精度を高める効果が期待できるという。また、従来のPureReadよりも処理の単位を細分化することによって、パラメーターをきめ細かく最適化できることにも注目したい。PureReadは世代を重ねるごとに着実な進化を遂げているのだ。

 

 

 


より高精度なデータ読み取りを行う独自機能「PureRead」。上位機BDR-X12J-UHDは「4+」、スタンダードモデルBDR-X12JBKは「3+」を搭載している


前述のとおり本機はPCレスでのCDリッピングも行えるわけだが、もちろんこの場合でもPureReadが適用される。高精度に読み取った楽曲データをスマホへ直接保存できるのだ。


Androidアプリ「Wireless Hi-Res Player Stellanova」を利用すればPCレスでのリッピングも可能。高精度に楽曲データをリッピングできることはもちろん、Gracenoteから作品名やアーティスト名も自動で入力される。アプリはリッピング以外にも音楽プレーヤー機能なども備えており、BEAT BLASTER(倍音を利用した低音増強機能)など、パイオニアならではのこだわりの機能が使用できる。なお、パイオニア製ドライブを持っていなくてもアプリはAndroidスマホユーザーなら誰でも無料でダウンロード可能。音楽プレーヤーアプリとして自由に利用できる


PureReadのモード切り替えなど設定変更用のユーティリティソフトはWindowsに加えてMacでも利用できる。訂正不可能なエラーが発生した場合にあえて補間を行わず、リッピングを中断する「パーフェクトモード」を用意しているのはPureRead対応ドライブならではのこだわりで、このモードを選んでおけばディスクに記録されたデータを正確に読み出していることが保証される。

もしも同モードで読み取りができなかった場合は「マスターモード」に切り替えることで補間が行われ、読み込みが完了する場合があるので、音源データの取得を優先する場合はそちらを選べば良い。データの完全性は担保されないが、読み込めなくなったCDからなんとかデータを読み込みたい場合には頼りになる。この2つのモードに加えて、BDR-X12J-UHDではCDを再生しながらリアルタイムでPureReadを動作させるReal Time PureReadも利用できる。

MacBookProの横に並べたときに気付いたのだが、BDR-X12J-UHDはPC周辺機器にしては珍しく外見にも気を配っている。側面にスリット加工を施したり、簡易的なものだが制振用のゴムを同梱するなど、ちょっとした工夫を凝らしているのだ。


側面のスリットはデザイン面だけでなく剛性を高めることも狙ったもの。振動抑制で音質面に配慮している


インシュレーターとしての役割を果たすゴムチップが付属。底面または側面に貼って使用する


本体は横置きだけでなく縦置きにも対応し、その場合に左右どちら向きでも設置できる。細かいことだが、その利用スタイルに対応しているドライブは多くはない。

 
縦置きの際には左右どちらを下にしても設置可能。設置の自由度が高いのも特長のひとつ


■CDプレーヤーで安定再生できない古いディスクもリッピング成功

MacBookProとBDR-X12J-UHDを組み合わせたリッピング環境は非常に快適で、準備はアッという間に終わる。専用ユーティリティでPureReadをオンにし、「パーフェクトモード」を選んでおくだけだ。ドライブ側で最適な読み取りパラメーターを選択してくれるので、iTunesを用いたリッピングでもエラー訂正の動作に気遣うことなく、完全なデータの読み込みができる

 

 

 

 

 

 

 

 

高度なエラーチェック機能を持つリッピングソフトを使う方法もあるが、WindowsだけでなくMac用のソフトでも設定がかなり複雑でハードルが高い。PureReadなら普段使っているリッピング環境そのままで読み取り精度を高め、データの忠実度を正確に管理できる。音質にこだわる音楽ファンにも幅広くお薦めできるのはそこに理由がある。


背面にはPC等との接続用のUSB Type-B端子と電源端子を装備。USB Type-B to Aケーブルが付属する


アンネ・ゾフィー・ムターの《アクロス・ザ・スターズ》をBDR-X12J-UHDを用いてリッピングし、Audirvanaで再生する。新しいディスクなので傷もなく、読み取りエラーも発生しなかった。

このアルバムの聴きどころは立体的な音場のなかで独奏とオーケストラが自在に交錯して深みのあるステージが展開すること。そしてジョン・ウィリアムズの編曲はとても繊細で、打楽器や弦楽器のピチカートを駆使して演奏効果を高めている。小さな音でトライアングルを鳴らす箇所など、他の楽器に埋もれてしまうような音もすべて鮮明に聴き取れるように再生するのは、ハイレゾ音源ならともかく、CDではかなり難度が高いのだが、今回聴いた条件ではアレンジの工夫を細部まで鮮明に聴き取ることができた。

アバド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団のシューベルト:交響曲第9番《ザ・グレイト》は購入後25年以上経っているCDで、CDプレーヤーでもパソコン+ドライブでも再生が安定しない。BDR-X12J-UHDでリッピングすると、エラーがかなりの頻度で発生し、状態の良いCDに比べて多少時間がかかるが、パーフェクトモードで無事に読み取ることができた。CD再生では音質がくもりがちだった第2楽章も本来の見通しの良い響きを取り戻し、木管楽器の豊かな表情が蘇った。


取材時のようす


■「できるだけ優れた音質でCDの音楽データを手元に確保しておくことは大きな意味がある」

PureReadのユーティリティ画面で読み取り状況をモニターしながらCDをリッピングしていると、CDの劣化はゆっくりだが着実に進んでいることを思い知らされる。以前のレポートで試した傷の多いCDを今回も再生してみたが、1年前よりもエラーの発生頻度が増えていた。マスターモードではまだ読み込める状態だが、パーフェクトモードでは最後のトラックで読み取りが中断してしまう。やはりそうなる前にできるだけ早くPureReadを活用し、正確なデータを取り込んでおくことが大切と痛感した。

いよいよ日本でも高音質ストリーミングが音楽ファンに浸透し始めたが、ライブラリのラインナップや使い勝手にまだ課題があり、短期間でCDを置き換えることはなさそうだ。そんな状況だからこそ、できるだけ優れた音質でCDの音楽データを手元に確保しておくことは大きな意味がある。

(協力:パイオニア株式会社)

 

https://www.phileweb.com/review/article/202003/12/3764_3.html